第三十八章:ミイラ男の現代適応計画
カラン——
相談所のドアがゆっくりと開き、カサカサ……という布の擦れる音が聞こえた。
「……ここが、仕事を探せる場所か?」
低く落ち着いた声が響き、全身を包帯で巻かれた男が静かに入ってきた。
誠が目を丸くする。
「おお、ミイラ男か!」
れなが冷静にノートを開く。
「お名前は?」
「セクメトだ。」
「セクメトさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
セクメトは少し周囲を見回してから、ため息をついた。
「……俺、現代社会にまったく適応できていない。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「適応できていない?」
「ああ。俺は長年棺の中で眠っていた……。でも、目覚めたらすべてが変わっていたんだ。電車? スマートフォン? インターネット? 何一つ分からない。」
セクメトは包帯に覆われた頭を抱える。
「仕事を探そうにも、そもそも現代の常識が分からないから、応募すらできない。 俺は……どうすればこの世界で生きていけるんだ?」
れなが頷く。
「つまり、過去の知識を活かしつつ、現代に適応できる仕事を探しているってことですね?」
「そうだ……。だが、何ができるのか見当もつかない。」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
セクメトが興味を示すように顔を上げる。
「……何だ?」
「博物館の案内人になれ!」
セクメトの目がわずかに光る。
「……博物館?」
れなが頷く。
「ミイラのあなたなら、古代の歴史を直接語れる唯一の存在よ。教科書の知識じゃなく、実際にその時代を生きた人間の視点から歴史を説明できる。」
誠がさらに補足する。
「最近の博物館は、ただ展示するだけじゃなくて、体験型やガイドツアーが人気らしいぞ! お前がガイドをやれば、『本物のミイラが語るエジプトの歴史』って話題になって、大人気間違いなしだ!」
セクメトはしばらく考え込んだ。そして、静かに頷いた。
「……なるほど。それなら、俺にもできるかもしれない。」
そして、力強く握りこぶしを作る。
「よし、俺は博物館の案内人になる!」
結果:ミイラ男の新たな道
数ヶ月後——
セクメトは、歴史博物館の名物ガイドとして活躍することになった。
「本物のミイラが語る古代文明ツアー」は大人気となり、歴史マニアや観光客が殺到。 子どもたちからも「リアルな歴史授業」として大好評だった。
「俺は……現代に馴染めない存在じゃなかった。今は、この時代に歴史を伝えている。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び静かに開かれる——。★




