第三十六章:フランケンシュタインの怪物の恐れられる優しさ
カラン——
ドアが静かに開いた。
——ギィ……ギギギ……
重々しい足音とともに、巨大な影が相談所に入ってくる。
「……ここが、仕事を探してくれる場所か?」
低く響く声。
誠が見上げると、そこには全身に縫い目が走った巨大な男が立っていた。
「おお、フランケンシュタインの怪物か!」
れながノートを開く。
「お名前は?」
「ヴィクターだ。」
「ヴィクターさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
ヴィクターは少し申し訳なさそうに頭をかく。
「……俺、見た目が怖すぎて、どこへ行っても避けられるんだ。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「怖すぎる?」
「ああ。俺はそんなつもりはないんだが、大きな体と、この顔のせいで、みんな怯えてしまう。」
ヴィクターは肩を落とす。
「本当は……誰かの役に立ちたい。 でも、どこへ行っても『怖い』『危険』と言われて、仕事を断られる。俺は……ただ、人を助けたいだけなのに。」
れなが頷く。
「つまり、人を助ける仕事をしながらも、見た目の影響を受けにくい職場を探しているってことですね?」
「ああ……でも、そんな仕事があるのか?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
ヴィクターが興味を示すように顔を上げる。
「……何だ?」
「介護士になれ!」
ヴィクターの目が驚きで見開かれる。
「介護士……?」
れなが頷く。
「介護の仕事は、力が必要な場面も多いの。例えば、高齢者の方を支えたり、ベッドから移動させたりするのは大変だけど、ヴィクターさんなら簡単にできるわ。」
誠がさらに補足する。
「しかも、お前みたいなガタイのいい奴がそばにいたら、利用者の家族も安心するだろうしな! それに、介護の現場では、見た目より優しさや思いやりが大事だ!」
ヴィクターはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと微笑んだ。
「……それは、確かに俺にしかできない仕事かもしれないな。」
そして、力強く頷く。
「よし、俺は介護士になる!」
結果:フランケンシュタインの怪物の新たな道
数ヶ月後——
ヴィクターは、高齢者介護施設のスタッフとして働くことになった。
その圧倒的な力と、誰よりも優しい気配りが評判となり、利用者からは「本当は優しい怪物さん」と親しまれるようになった。
「俺は、ただ恐れられる存在じゃなかった。今は、この手で人を支えている。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び開かれる——。★




