第三十五章:キングスライムの大きすぎる悩み
カラン——
ドアがミシミシ……ギギギ……バゴォン!!
見事に崩壊した。
「うわあああ!? またドアが壊れた!!」
誠が叫びながら後ずさる。
れなは、もう慣れた様子でノートを開きつつ、静かにため息をついた。
「……すまない。入るだけで壊してしまった。」
相談所の入り口を完全に塞ぐほどの巨大なスライムが、申し訳なさそうにぷるぷると震えていた。
誠が唖然としながら呟く。
「お、おお……キングスライムか……!」
れなが淡々と質問を始める。
「お名前は?」
「グランだ。」
「グランさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
グランは、どっしりとした身体を揺らしながら答えた。
「……俺、大きすぎてまともな仕事ができないんだ。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「大きすぎる?」
「ああ。普通のスライムなら、どこにでも入り込めるし、小回りが利く。でも、俺は違う。ちょっと動くだけで建物にめり込むし、道をふさいでしまうし、公共交通機関にも乗れない。」
グランは少し萎れたように身体を沈ませる。
「スライムとしてはトップクラスの耐久力と質量を誇っているが……この大きさが邪魔すぎて、どこに行っても雇ってもらえない。」
れなが頷く。
「つまり、大きさを活かせる仕事を探しているってことですね?」
「そうだ……でも、あるのか? 俺に合う仕事なんて。」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
グランが興味を示すように、少し上体を持ち上げる。
「……何だ?」
「スライムスパの看板になれ!」
グランの体がピクッと揺れる。
「スパ……?」
れなが頷く。
「グランさんのぷにぷにした柔らかさと、包み込むような温もりを活かせば、極上のリラクゼーション体験を提供できるんじゃない?」
誠がさらに補足する。
「お前の身体の上に寝転んだら、最高のリラックスができるだろ!? ふわふわで、適度な弾力があって……まるで極上のマットレスじゃねぇか!」
グランはしばらく考え込んだ。そして、じわじわと身体が光沢を帯びていく。
「……なるほど、それは確かに俺にしかできない仕事かもしれないな。」
そして、力強く揺れる。
「よし、俺はスライムスパのオーナーになる!」
結果:キングスライムの新たな道
数ヶ月後——
グランは、「キングスライム・スパ」を開業した。
その極上のぷにぷに感は、「世界一リラックスできるスパ」として話題になり、セレブや冒険者たちがこぞって訪れる人気施設となった。
「俺の大きさは、邪魔じゃなかった。今は、この身体でみんなを癒している。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所の(また新しくなった)ドアが、再び開かれる——。★




