第三十四章:メタルスライムの逃げ足を活かす道
カラン——
ドアが開いた——というより、一瞬の銀色の閃光が駆け抜けた。
「ん? 何か入ってきたか?」
誠が目をこすりながら周囲を見回す。
「……ここにいる。」
声がしたかと思うと、部屋の片隅でキラリと光るものがあった。
「おお、メタルスライムか!」
誠が目を輝かせる。
部屋の床に、小さく、ぬるぬると動く銀色のスライムがいた。
れながノートを開く。
「お名前は?」
「シルバだ。」
「シルバさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
シルバは身体をわずかに震わせながら、控えめに答えた。
「……俺、すぐ逃げちゃうんだ。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「逃げちゃう?」
「ああ。俺は戦うのが苦手で、いつもすぐに逃げてしまう。 勇者が来ると、もう反射的に逃げてしまって、戦闘にならない。だから、全然経験値を貯められないし、成長できない……。」
シルバはしょんぼりと床に沈む。
「それに、この逃げ足の速さが原因で、普通の仕事もできない。すぐに『どこ行った?』って探されるし、面接を受けても、気づけば逃げてしまってる。」
れなが頷く。
「つまり、逃げ足の速さを活かせる仕事を探しているってことですね?」
「……そんな仕事、あるのか?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
シルバが驚いたようにピクピクと揺れる。
「……何だ?」
「短距離ランナーになれ!」
シルバが一瞬固まる。
「ランナー……?」
れなが頷く。
「シルバさんは、驚異的なスピードで逃げられるんですよね? だったら、そのスピードを競技として活かせばいいんじゃない?」
誠がさらに補足する。
「100m走や短距離ダッシュの世界なら、お前の逃げ足は最強だろ! そもそも、追われるのが本能みたいなもんだから、スタートの反応速度も圧倒的じゃねぇか?」
シルバはしばらく考え込んだ。そして、少しずつ光が強くなっていく。
「……たしかに、それなら俺に向いているかもしれない……!」
そして、力強く跳ねた。
「よし、俺は短距離ランナーになる!」
結果:メタルスライムの新たな道
数ヶ月後——
シルバは、「メタルフラッシュ」の異名を持つ短距離ランナーとして活躍することになった。
その驚異的なスタートダッシュと、一瞬でトップスピードに乗る能力は前代未聞の速さで、世界中の陸上界に衝撃を与えた。
「俺は、ただ逃げるだけの存在じゃなかった。今は、この足で世界を駆け抜けている。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び(高速で)開かれる——。★




