第三十三章:デスウィングの壊す以外の道
カラン——
ドアがギィ……ギシギシ……バァンッ!!
ものすごい衝撃音とともに粉々に吹き飛んだ。
「うわあああ!? 相談所がぶっ壊れた!!」
誠が慌てて机の下に飛び込み、れなは呆然とドアの残骸を見つめる。
そこに立っていたのは、漆黒のドラゴンだった。
「……すまない。どうしても力を抑えられなかった。」
デスウィング。
その名の通り、破壊の象徴とされるドラゴン。巨大な翼、鋭い爪、そして何よりもその圧倒的な威圧感が空間を支配していた。
誠がビクビクしながら椅子を勧める。
「お、お名前は?」
「ラグナスだ。」
「ラグナスさんですね……それで、本日はどんなご相談でしょう?」
ラグナスは、どっしりと床に座り込み、重く低い声で語り始めた。
「……俺は、何もかも壊してしまう。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「壊してしまう?」
「ああ。俺が力を使えば、山が砕け、街が崩れ、大地が割れる。 どんな仕事に就こうとしても、『危険すぎる』と言われ、すぐに追い出される。」
ラグナスは深いため息をつく。
「壊すことしかできない俺は……この世界に必要とされないのか?」
れなが頷く。
「つまり、破壊の力を活かせる仕事を探しているってことですね?」
「ああ。しかし、何かを作る仕事は向いていないし……俺にはどうすればいいのか分からない。」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
ラグナスが興味を示すように顔を上げる。
「……何だ?」
「解体業者になれ!」
ラグナスの目が一瞬光る。
「解体業?」
れなが頷く。
「建物を壊す仕事って、人間にとっては大変なの。でも、ラグナスさんなら一撃で取り壊しができるでしょ?」
誠がさらに補足する。
「それに、解体工事って単なる破壊じゃなくて、新しい建物を建てるための大事な仕事なんだ。つまり、お前の破壊は、新たな創造につながる!」
ラグナスはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと笑みを浮かべた。
「……なるほど、それは確かに俺にしかできない仕事かもしれないな。」
そして、力強く頷く。
「よし、俺は解体業者として生きる!」
結果:デスウィングの新たな道
数ヶ月後——
ラグナスは、「デスウィング解体事業」を立ち上げた。
彼の圧倒的な破壊力を活かした解体作業は、「世界最速の建物解体」と評判になり、多くの都市から依頼が殺到するようになった。
「俺の力は、ただの破壊ではなくなった。今は、新しい未来を生み出すための破壊だ。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所の(新しい)ドアが、再び開かれる——。★