第三十一章:ギーグの持て余す力
カラン——
ドアが静かに開いた。
しかし、そこには誰もいなかった。
「……ん?」
誠が首をかしげると、部屋の空気が突然ビリビリと震え始める。
「……ここが転職相談所か?」
低く響く声が、どこからともなく聞こえてきた。
次の瞬間——空間がねじれ、人間の理解を超えた存在が姿を現した。
「うおっ!? なんかすげぇの来たぞ……!」
誠が思わず後ずさる。
れなも一瞬言葉を失ったが、冷静にノートを開く。
「お名前は?」
「ギーグだ。」
「ギーグさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
ギーグは宙に浮かびながら、淡々と答えた。
「……俺は、強すぎる。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「強すぎる?」
「ああ。俺はこの星のあらゆる存在を超越している。物理法則すら無視できる。 時空を操り、思考だけで現象を変えられる。しかし……そんな力を持て余している。」
ギーグの瞳が虚空を見つめる。
「戦えばすべてが終わる。誰も敵ではない。だから、俺にはもはや戦う理由もない。 だが、何もしないまま存在し続けるのも、虚しい。」
れなが静かに頷く。
「つまり、自分の圧倒的な力を活かせる仕事を探しているってことですね?」
「そういうことだ。だが、この星には俺に匹敵する仕事が存在しない。」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
ギーグが興味を示すように、わずかに傾く。
「……何だ?」
「宇宙開発のリーダーになれ!」
ギーグの瞳が、一瞬だけ光を帯びる。
「宇宙開発?」
れなが頷く。
「ギーグさんの力なら、この星にとどまる必要はないわ。新たな星を開拓し、宇宙文明を築くことも可能なんじゃない?」
誠がさらに補足する。
「地球でくすぶってるのはもったいねぇ! お前の力で、惑星間移動技術を発展させたり、新たな宇宙の可能性を広げたりできるんじゃねぇか?」
ギーグはしばらく沈黙した。
そして、ゆっくりと笑みを浮かべた。
「……なるほど。それは、面白いな。」
そして、力強く頷く。
「よし、俺は宇宙開発に乗り出す!」
結果:ギーグの新たな道
数ヶ月後——
ギーグは、宇宙開発企業「ギーグテック」を設立。
彼の技術によって、惑星間移動、ワームホール航法、新たなエネルギー開発が劇的に進化し、人類はついに地球を超えた文明を築き始めることとなった。
「俺は、この星に留まる存在ではなかった。これからは、宇宙全体を開拓する。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び静かに開かれる——。★