第三十章:ミミックの開かれない未来
カラン——
ドアが開いた……のではなく、相談所の真ん中に突然宝箱が現れた。
「……え?」
誠が眉をひそめる。
「これ、誰かが置いてったのか?」
れながノートを開きながら、慎重にその宝箱を観察する。
「いや……違うわ。たぶん……あなたが相談者?」
すると、宝箱がガクッ……ガクガク……と揺れ始めた。
「……そ、そうだ。俺が相談者だ……。」
宝箱のフタがゆっくり開き、中から鋭い歯と怯えた目が覗いた。
「おお、ミミックか!」
誠が驚きながらも納得する。
れなが冷静にペンを走らせる。
「お名前は?」
「チェスタだ。」
「チェスタさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
チェスタはフタをカタカタ鳴らしながら、しょんぼりと答えた。
「……俺、もう誰にも開けてもらえなくなったんだ。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「開けてもらえない?」
「ああ。昔は、冒険者たちが無警戒に俺を開けてくれた。でも最近は、みんな警戒しすぎて、まず開けてもらえない……!」
チェスタはフタをガタガタと揺らす。
「最近の冒険者たちは慎重になりすぎて、『これはミミックだな、開けないでおこう』ってすぐバレる。俺、ずっとこのまま……ただの宝箱のフリをして、開けられないまま朽ち果てるのか……?」
れなが頷く。
「つまり、擬態能力を活かせる仕事を探しているってことですね?」
「そうだ……。俺のこの擬態能力を、何かに活かせないか……?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
チェスタが驚いたようにフタを開く。
「……何だ?」
「潜入調査員になれ!」
チェスタの目が大きく見開かれる。
「潜入調査?」
れなが頷く。
「ミミックの擬態能力は、普通の人間には絶対に真似できない。だったら、そのスキルを活かして、スパイや特殊調査員として働くのはどう?」
誠がさらに補足する。
「例えば、重要な施設に忍び込んで情報を集める時、宝箱や家具に擬態できるのは最強の隠密スキルだろ? 誰も気づかないうちに潜入して、情報を持ち帰る……完璧じゃねぇか!」
チェスタはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりとフタを閉じたり開いたりして、考えを巡らせる。
「……それは、俺にしかできない仕事かもしれないな。」
そして、力強く頷く。
「よし、俺は潜入調査員になる!」
結果:ミミックの新たな道
数ヶ月後——
チェスタは、政府機関の極秘潜入調査員として活躍することになった。
彼の完璧な擬態能力は、どんな監視もかいくぐると話題になり、極秘任務に引っ張りだことなった。
「俺はもう、ただの開かれない宝箱じゃない。今は、世界を動かすために開く存在だ。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び開かれる——。




