第二十七章:モルボルの臭いすぎる問題
カラン——
相談所のドアがギィィ……と開いた瞬間、異臭が室内を満たした。
「うっ……!? くっさ!!」
誠が思わず鼻を押さえる。
れなも顔をしかめながら、こっそりと窓を開けた。
「し、失礼……ここが転職相談所、でいいのか?」
低くこもった声とともに、モルボルがぬるぬると入ってきた。
全身を覆う粘液、うねる無数の触手、そして何よりも強烈な悪臭。
「お、おお……モルボルか……!」
誠は涙目になりながら、それでも笑顔を作る。
れなが鼻をすすりながらノートを開く。
「お名前は?」
「ボルバスだ。」
「ボルバスさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
ボルバスは触手をわずかに揺らしながら、沈んだ声で答えた。
「……俺、臭すぎて誰にも近づけないんだ。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「臭すぎる?」
「ああ。俺は昔から、ダンジョンの奥で敵を迎え撃つ役だった。でも、勇者たちは俺と戦う前に逃げる。 俺が出るだけで『うわ、くせぇ!!』って言って逃げるんだ。」
ボルバスはため息をつく。
「そのせいで、もう何年もまともに戦えていない。しかも、普通の街では俺の臭いが問題になって、どこへ行っても追い出される……。俺の人生、完全に詰んでる。」
れなが頷く。
「つまり、自分の臭いを活かせる仕事を探しているってことですね?」
「そんな仕事、あるのか……?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
ボルバスが驚いたように顔を上げる。
「……何だ?」
「香水の調合師になれ!」
ボルバスの触手がピクリと動く。
「香水……?」
れなが頷く。
「モルボルの臭いって、普通の人には強烈すぎるけど、成分を分解すれば、特殊な香りのエッセンスになる可能性があるのよ。例えば、天然の香料や薬草を混ぜることで、新しいフレグランスを作れるかもしれない。」
誠がさらに補足する。
「しかも、お前みたいに臭いのスペシャリストなら、どの成分が強いか、どれを組み合わせたら良い匂いになるかが分かるはずだ! つまり、世界にひとつしかないモルボル製の高級香水が作れるんじゃねぇか?」
ボルバスはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと触手を震わせた。
「……そんな使い方があるとは思わなかった。」
そして、力強く頷く。
「よし、俺は香水の調合師になる!」
結果:モルボルの新たな道
数ヶ月後——
ボルバスは、「モルボル・エッセンス」という香水ブランドを立ち上げた。
彼の作る香水は、「クセになる香り」「深みのある独特な調合」と話題になり、一部のコアなファンから絶大な支持を受けることになった。
「俺の臭いが、人を惹きつけるものになるなんてな。人生、何が起こるか分からない。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び開かれる——。★




