第二十三章:ナーガの足のない焦燥
カラン——
ドアが開き、すっと何かが滑り込んできた。
「失礼する……」
低く落ち着いた声。しかし、その動きはまるで流れるように滑らかで、足音がまったくしない。
入ってきたのは、ナーガだった。
上半身は人間、下半身は長大な蛇の胴体。その鱗は美しく光沢を帯びているが、どこか疲れたような表情をしている。
「おお、ナーガか!」
誠が興味深そうに見つめる。
れながノートを開く。
「お名前は?」
「サフィールだ。」
「サフィールさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
サフィールは長い尾を静かに巻きながら、ため息をつく。
「……足がないせいで、できる仕事が限られるんだ。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「足がない?」
「ああ。俺は、俊敏に動くことはできる。でも、歩く必要のある仕事はどうしても向いていない。立ち仕事や走る仕事、登る仕事……どれも俺には難しい。」
サフィールは静かに天井を見上げる。
「それに、どこへ行っても、足がないことを理由に断られる。たしかに俺は足がないが、移動速度なら誰にも負けないはずなんだ。」
れなが頷く。
「つまり、足がなくても素早さを活かせる仕事を探しているってことですね?」
「そういうことだ。」
誠がニヤリと笑った。
「だったら、超速宅配便をやれ!」
サフィールが驚いたように顔を上げる。
「宅配便?」
れなが頷く。
「足がない分、地面との接地面が少ないから、地上を滑るように移動できるはずよね? それなら、都市部での配達業務に特化すれば、誰よりも早く荷物を届けられるんじゃない?」
誠がさらに補足する。
「特に、狭い路地とか階段のないエリアでは、お前の機動力は最強クラスだぞ! 自転車もバイクも入れない場所を、スルスルと通り抜けられるし、渋滞も気にする必要がねぇ!」
サフィールはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと笑みを浮かべた。
「……なるほど、確かにそれなら俺の速さを活かせるな。」
そして、力強く頷く。
「よし、俺は超速宅配便の仕事をやってみる!」
結果:ナーガの新たな道
数ヶ月後——
サフィールは、超速宅配便「ナーガエクスプレス」を立ち上げた。
その圧倒的なスピードと柔軟な機動力で、都市部での配達業務に革命をもたらし、多くの企業や個人から絶大な支持を受けている。
「足がなくても、誰よりも早く目的地にたどり着ける。俺は、自分の可能性を信じてよかった。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び開かれる——。★




