第二十二章:メデューサの視線の先に
カラン——
相談所のドアが静かに開いた。
「……入っても、いいかしら?」
慎重に周囲をうかがうような、少し怯えた声が響く。
入ってきたのは、メデューサだった。
フードを深くかぶり、顔を隠すようにしているが、蛇がうねるような微かな動きがフードの奥から見え隠れする。
「おお、メデューサか!」
誠が興味津々に声を上げるが、れなが素早く肘で制する。
「静かに。彼女、慎重になってるの分かるでしょ?」
「あっ、悪ぃ。」
れなが落ち着いた口調でノートを開く。
「お名前は?」
「エウリナよ。」
「エウリナさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
エウリナは少し沈黙した後、ゆっくりと口を開いた。
「……私、人とまともに関われないの。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「関われないって?」
「私の視線に触れた相手は、石になってしまう。だから、誰かと目を合わせることもできないし、常に顔を隠して生きてきた。」
エウリナは静かに肩をすくめる。
「人と話したくても、結局怖がられて避けられる。それなら、最初から距離を置いた方がいいって思うようになった。でも……本当は、誰かと一緒に働いてみたいの。」
れながゆっくりと頷く。
「つまり、誰かと関わりながらも、視線の影響を気にしなくて済む仕事を探しているってことですね?」
「……そうね。」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
エウリナが驚いたように顔を上げる。
「……何かしら?」
「石像修復の専門家になれ!」
エウリナが一瞬きょとんとする。
「石像修復?」
れなが頷く。
「エウリナさんの能力は『石化させる』ことよね? でも、それを逆に利用すれば、石の状態を精密にコントロールできるはず。」
誠がさらに補足する。
「例えば、欠けた彫像の部分を石化能力で滑らかに補修したり、微妙な造形を作ることもできるかもしれねぇ。普通の職人じゃできない超絶技巧を、お前なら可能にできるんじゃねぇか?」
エウリナはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと笑みを浮かべた。
「……そんな使い方、考えたこともなかったわ。」
そして、力強く頷く。
「やってみる価値はありそうね。」
結果:メデューサの新たな道
数ヶ月後——
エウリナは、美術館の修復職人として活躍することになった。
彼女の驚異的な技術は評価され、世界中の美術館から「石像修復のスペシャリスト」として依頼が殺到している。
「私は、人と関わることを恐れなくなった。今の私は、創造のために目を開いている。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び開かれる——。★




