第二十一章:ゴーレムの自立への一歩
カラン——
ドアがギギギ……と軋む音を立てながら開いた。
「……相談に、来た。」
低く鈍い声が室内に響く。
入ってきたのは、ゴーレムだった。
巨大な石の体、どっしりとした足取り。その存在感は圧倒的だが、どこかぎこちない動きが目立つ。
「おお、ゴーレムか!」
誠が腕を組みながら見上げる。
れながノートを開く。
「お名前は?」
「……ラピス。」
「ラピスさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
ラピスはゆっくりと頭を傾げた。
「……命令されることしか、できない。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「命令されることしか?」
「ああ。俺は、誰かの指示がなければ動くことができない。ずっと、ダンジョンの守護者として働いてきたが……最近、冒険者が来なくなった。命令もなくなった。だから、俺は……何をすればいいのか分からない。」
ゴーレム特有の自発性の欠如。それが、ラピスの抱える悩みだった。
れなが頷く。
「つまり、自分で考えて行動できる仕事を探しているってことですね?」
「……そうだ。」
誠がニヤリと笑った。
「だったら、プログラミングを学べ!」
ラピスがわずかに顔を上げる。
「……プログラミング?」
れなが頷く。
「ゴーレムは、命令されたことを実行するのが得意。それなら、コンピューターに指示を出す仕事に向いてるんじゃない?」
誠がさらに補足する。
「つまり、プログラムされた通りに動くゴーレムが、今度はプログラムを書く側になるんだよ!」
ラピスはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと口を開く。
「……それは、面白いかもしれない。」
そして、力強く頷く。
「俺が、命令する側に……なってみたい。」
結果:ゴーレムの新たな道
数ヶ月後——
ラピスは、AI開発のエンジニアとして活躍することになった。
「自己学習型ゴーレム」の開発に携わり、自らの経験を活かして、新たな人工知能を生み出す仕事に邁進している。
「俺は、命令を待つだけの存在ではない。これからは、俺が命令を作る側になる。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び開かれる——。