第十三章:トロールの橋の下の憂鬱
カラン——
ドアが重々しく開き、巨大な影が差し込む。
「ここが、転職相談所か……?」
低く響く声の主は、全身を岩のような筋肉で覆われたトロールだった。どっしりとした体格と、険しい顔つき。しかし、その表情にはどこか寂しさが滲んでいた。
「おお、またデカいのが来たな。」
誠が驚きながら見上げる。
れなが淡々とノートを開く。
「お名前は?」
「ブルゴだ。」
「ブルゴさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
ブルゴは腕を組み、ため息をついた。
「……もう、橋の下で待つ仕事に意味がなくなってしまった。」
誠とれなは顔を見合わせる。
「橋の下……?」
「ああ。俺は昔から、橋の下に住み、そこを通る旅人に通行料を要求する役目を果たしてきた。しかし、最近の旅人は誰も橋を使わない。」
ブルゴは苦々しい表情で続ける。
「みんな馬車や車で別の道を通るか、高速道路を使ってしまう。俺はもう、橋の番人としての役目を果たせなくなった……。」
れなが頷く。
「つまり、今の時代に合った仕事を探したいってことですね?」
「そうだ。しかし、俺は力だけが取り柄だ。頭を使う仕事は向いていない。」
誠がニヤリと笑った。
「だったら、建設業で働け!」
ブルゴが目を見開く。
「建設業?」
「そうだ! お前の頑丈な体と怪力なら、建設現場でめちゃくちゃ活躍できるはずだ。 しかも、昔は橋を守ってたんだろ? だったら、今度は橋を作る側になればいい!」
れながさらに付け加える。
「最近、大規模なインフラ整備で頑丈な橋やビルを建てる職人が不足してるって話を聞いたわ。ブルゴさんみたいに力持ちで頑丈な人なら、間違いなく重宝されるはずよ。」
ブルゴはしばらく考えた後、ゆっくりと頷いた。
「……確かに、それなら俺の力を活かせるかもしれない。」
そして、力強く拳を握る。
「よし、俺は建設業に挑戦してみる!」
結果:トロールの新たな道
数ヶ月後——
ブルゴは、巨大建設会社のエース作業員として活躍していた。
特に、橋やダムなどのインフラ建設において、彼の怪力は不可欠なものとなっていた。仲間たちからも「鉄骨の王」と呼ばれ、尊敬されている。
「昔は橋を守っていたが、今は橋を作っている。これは、俺にとって新たな誇りだ。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び開かれる——。