第十一章:スフィンクスの問いかけ
カラン——
相談所のドアが開く音が響く。
「ここがモンスターのための転職相談所か?」
低く落ち着いた声。その主は、堂々たる風格を持つスフィンクスだった。
ライオンの体に、人間の顔、そして大きな翼。知性と威厳を兼ね備えたその姿は、ただ立っているだけで圧倒的な存在感を放っている。
「おぉ……これはまた知的そうなやつが来たな。」
誠が感心しながらスフィンクスを見上げる。
れなが冷静にノートを開く。
「お名前は?」
「ティオメネスだ。」
「ティオメネスさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
ティオメネスはゆっくりと頷いた後、静かに口を開く。
「……謎を問い続けることに、意味を見出せなくなった。」
誠とれなは顔を見合わせる。
「謎を問い続けることに……?」
「ああ。私はずっと、旅人たちに難解な謎を出し、それに答えられなければ通さないという役割を担ってきた。しかし、今の時代……」
ティオメネスはため息混じりに続ける。
「すぐにスマホで調べられてしまうのだ。」
誠は吹き出しそうになった。
「た、確かに……今の時代、ちょっと検索すれば答えが出てくるからな……」
「そうなのだ。もはや、私が問うことに意味はないのではないかと……。」
ティオメネスは寂しそうに目を伏せる。
「私は知識を持ち、問いを与えることが役目だった。しかし、問いの価値が薄れてしまった今、私は何をすべきなのか分からない。」
れなが頷く。
「つまり、知識を活かせる仕事を探しているってことですね?」
「そういうことになる。」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
「何?」
「クイズ番組の司会者になれ!」
ティオメネスが目を見開く。
「クイズ番組……?」
「そうだ! 今の時代、クイズはただの知識の問題じゃなくて、ひねりのある出題や、解答者を惑わせる駆け引きが重要なんだ。スフィンクスのお前が出す問題なら、視聴者もワクワクしながら楽しめるぞ!」
れなも補足する。
「それに、テレビ番組ならすぐに答えを検索できなくて、リアルタイムで楽しむ視聴者も多いはず。スフィンクスの知識を活かして、考えさせるクイズを出すのは面白いかもしれませんね。」
ティオメネスはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと頷く。
「……なるほど、試してみよう。」
結果:スフィンクスの新たな道
数ヶ月後——
ティオメネスは、人気クイズ番組「スフィンクスの挑戦」の司会者となっていた。
彼が出すトリッキーな難問と、その厳格ながらもユーモアのある進行は、多くの視聴者を惹きつけた。
「知識は問うだけでなく、考える楽しさを提供することにも意味があったのだな。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び開かれる——。