第百章:アルラウネの根付く未来
カラン——
相談所のドアが開いた。
……が、誰も入ってこない。
「……ここが仕事を探せる場所か?」
誠が顔を上げたが、視界には誰の姿もない。
れながノートを開く。
「……誰もいない?」
その時——足元から緑のツタが静かに伸びてきた。
誠が驚いて後ずさると、ツタが絡み合い、ゆっくりと女性の姿を形作った。
「……アルラウネですね?」
れなが落ち着いた声で確認すると、その植物の女性——鮮やかな花を頭に持つアルラウネは、小さく頷いた。
「私はリリシア。」
「リリシアさんですね。それで、本日はどんなご相談でしょう?」
リリシアは、静かに自らの根を撫でながら言った。
「……私は、植物と一体化している。だから、動くことができない。」
誠とれなが顔を見合わせる。
「動けない?」
「ああ……森の中で根を張り、ただ育つだけの存在。他のモンスターのように移動したり、自由に何かをすることができない。」
リリシアの表情はどこか寂しげだった。
「私はこのまま、ただ森の一部として朽ちていくのか? それとも、私にもできることがあるのか?」
れなが頷く。
「つまり、移動できなくても、自分の特性を活かせる仕事を探しているってことですね?」
「ああ。しかし、そんなものがあるのか?」
誠がニヤリと笑った。
「あるじゃねぇか、ぴったりの仕事が!」
リリシアが興味を示すように、葉をゆっくりと揺らした。
「……何だ?」
「薬草研究者になれ!」
リリシアの目がわずかに見開かれる。
「薬草研究?」
れなが頷く。
「リリシアさんの植物の知識や生命力を活かせば、薬草の栽培や研究ができるわ! 動けなくても、根を張ったまま成長し、貴重な薬草を生み出せるの!」
誠がさらに補足する。
「最近は、天然由来の薬やハーブ療法が注目されてるしな。お前がやれば、『生きた薬草の女王』として、医療や美容の分野でめちゃくちゃ重宝されるぞ!」
リリシアはしばらく考え込んだ。そして、ゆっくりと満開の花を咲かせ、静かに微笑んだ。
「……なるほど、それは確かに私にしかできない仕事かもしれないな。」
そして、根を大地に深く張り直し、新たな芽を生やした。
「よし、私は薬草研究者になる!」
結果:アルラウネの新たな道
数ヶ月後——
リリシアは、「ハーバル・ガーデンズ」という薬草栽培施設を立ち上げ、医療用の薬草や高品質のハーブを生産する研究者となった。
彼女の植物は「魔法のように効く自然の恵み」と評され、多くの医師や研究者が彼女の協力を求めるようになった。
「私の根は、ただの足枷じゃなかった。今は、世界に新しい命を育むためにある。」
届いた手紙には、そんな言葉が書かれていた。
「さて、次はどんなモンスターが来るかな?」
相談所のドアが、再び静かに開かれる——。★




