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mission8 女を見せろ!あれ、男?

 初夜。のっけから攻撃力の高い言葉を使ってしまい恐縮だが、この話を読んでいる人の中に全く何も知識のない少年少女がいないことを願おう。少なくとも俺の口から彼彼女らの性知識を深めさせる結果にはなりたくない。

 ただ安心してくれ。全年齢だ。


「しょ、初夜、か……」

 夫婦で初めて迎える夜、である。まあ結婚式をしたのだから当然そういう行為、つまりは子作りを望まれるのも当然であると言えばそうなのだが。俺もこんな体であるしレオン様も嫌に男臭さというのがないので全く意識していなかった。

 全くもって。結婚の話を聞いて「え、子供とかどうするの」って思った時もこちらの国でレオン様になんかかっこいい動作をされた時もメイさんに「押し倒されました?というか押し倒せれるご予定は?」という恋バナを振られた時も。全く意識していなかった。

 え、意識してなさすぎ……?

「では、こちらでお待ちください」

 メイさんに通された部屋は嫌に大きなベッドのある寝室で、シンプルながらその……雰囲気のあるって感じの部屋だった。え、ここで待つの??

 落ち着かなくてついうろうろしていると、リネンを準備していたメイさんに「落ち着いてください!」と叱られる。

「こ、これが落ち着けるか!レ、レオン様と……ってことでしょう⁈男同士だが⁈」

「大丈夫ですよ。男の人同士でもやりようはあります」

「そ、そんな優しく微笑まないで!」

 多分この笑みは俺のことを思ったものではなくメイさんの大好物である男性同士の恋愛を見れることへのドキドキだ。多分彼女の中では数々のそういう本が頭の中を駆け巡っていることだろう。

「そうは言いましても。ここからではどうしようもありませんよ」

「え、な、何が?」

「アナ様は最悪レオン様に何か適当なことを言って口裏を合わせてとか考えていらっしゃるでしょうが、それは不可能です。この国では昔に仲の悪い王子夫婦が口裏を合わせ何年も子供を産もうとしなかったとかで、初夜の時だけでもその証を提出しなければいけないんです」

「え、あ、証?」

「殿方の放った精に破瓜の証の血液ですね。別にわざわざ何かに取ったりする必要はないのでシーツにあるのを掃除係が見つける程度で済みますが逆に何もなかったら大問題ですよ。時には姫側の純潔が守られていなかったのではなんて言いがかりもつけられかねません」

「そ、それは……シビアだな。なんでそんな重要なこと教えてくれなかったんだ!」

「まあ、準備ができればいくらでも誤魔化す方法はありますからね。でもそうしたら初夜えっちに持ち込めないって私の聖書たちが言っていたので」

「お前の聖書欲まみれだな」

 彼女のいう聖書とは男性同士の恋愛模様を書いた小説各種である。刺激は強め。

「……で、でも俺たちこそ破瓜も何もないのでは?」

「多分お二人とも初めてですし、お尻切れるくらいは想定しておいていいかと」

「嫌な想定だな」

 俺のお尻が絶望することが決定した。

「まあ落ち着いてください。紅茶を淹れましたので、殿下が来るまで待ちましょう」

 そう言って差し出されたのはこちらの紅茶なのか祖国では嗅いだことのない特徴的な香りがする。

「それでは、殿下と鉢合わせると悪いですから私はこれで」

 そう言ってメイさんは楽しそうに出て行った。


「はぁ……」

 思わずため息をひとつ。顔を覆って項垂れる。呑気に紅茶に手をつける気にもなれず下を向くと、つい一緒に持ち歩いていたリリーお姉さまからの手紙があることに気がついた。聡明で博識なお姉様からの手紙だ。きっと心を安らぐようなお言葉を心温まるように書いてあるに違いない。俺はそう思いつくと、砂漠の水とでもいうように飛びついた。


『愛しのアナへ

 結婚おめでとう。こちらからは色々と言いたいことがあるけど、まず、この手紙が一人で読んでください。メイさんにも見せないでくださいね。あとメイさんから出された飲み物食べ物は口にしないで』

 え、なんだろう。現状一人であるから問題はないけど、どうも不穏な始まりかただ。


『いいかしら。では次のページをめくってください』

 言われた通りめくる。絶句する。

『世紀の天才、リリー様による、今からでもできる初夜の回避講座!!』

 お姉様、天才すぎます……。


『さて。多分今現在メイさんからの情報遮断により困窮しているであろう、妹よ。見てるー?』

 確かにメイさんだけでなく他の侍女からも何も言われなかったな……後でシバこうあの欲望の塊め。

『多分これから初夜を行うわけだから、緊張していると思うけど大丈夫。張り切って偽装していこう。まず最初に注意していきたいのは、メイさんが準備したと思われるもの、メイさんに進められた紅茶だけでなく部屋に置いてあった果物なんかも全部、口にしないこと。多分媚薬入り』

 俺は勢いよく机の上にあった紅茶を遠ざけた。ちょっとこぼれたしその先の葡萄を盛った皿にかかった。

『多分メイさんはこっちの国にあるようなアナの耐性のついた薬ではなくってそちらの国の飲んだことのなさそうな薬をこれまたアナが飲んだことのなさそうな紅茶に入れて出してくるはず。十分に注意してね』

 そ、そうだ。私たち王族は媚薬など種類を問わずある程度の薬物には耐性をつけているが、それは自国にある分の話。隣の国でのとか最近できたものというのは耐性がない。

『逆に、私からは睡眠作用のある薬を送ります。アナも一緒に飲むと思ってアナの耐性がついていてかつ王子様が飲んだことのなさそうなものを選びました。軽くアルコールのように前後の記憶を飛ばす作用もあるので、これで王子様を眠らして明日の朝に「すごかったですわね、テレッ」ってやってください』

 なんかいくつもの法律を破りそうな気がするが言ってられないのか。まあベッドの上のことはとりあえず「そういうプレイです」といえばなんでも許されるとメイさんが言っていたので大丈夫だろうか。


『そして後は証づくりですね。必要になるのは血液とそれっぽい白濁液です』

 そ、なんか色々取り除くとそんな表現の仕方になるんだ……。

『まずは血液ですが、血というのはただ赤い絵の具かをぶちまければ良いというわけではありません。最初は赤でもだんだんと黒っぽくなっていきます。その全てを絵の具で表現というのはなかなか難しく、かといって獣の血を送るにも古くなりすぎてしまいますので、頑張って自分のをお使いください。ナイフは同封しておきます』

 本当だ、小型のナイフがある。どこを切ろうか。

『ナイフを入れる場所ですが、封筒に包帯まで入らなかったので、すぐに血が止まるか血が出ていてもそんなに問題にならない所をおすすめします。というか正直指先にちょっととかでもいいですね。まあすごく痛いと思いますけど』

 まあ一番何処かに引っ掛けましたで済む場所か。この王城では着替えから何までやってくれるので(性別がバレない程度だが)下手に不自然な怪我などしてはまずい。

『後は白濁液の方ですが、こちらは準備期間さえあれば片栗粉でも絵の具でもなんでもできたのですが、どれも間に合わなそうなので諦めました。頑張ってご自分のをお使いください』

 …………。

『と、いうわけなんで私からできるのはこれくらいですね。がんば!』

 最後雑じゃないか?

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