異世界転生? 幼女から老婆に!
よろしくお願いします。
気がついたら、ぜんぜん知らない世界に来ていた。
学校で流行りの、トイレを何回かノックするとおばけが出てくると言うウワサ話を実行して、トイレの戸を開いたら、知らない人の家の中だった。
なぜここが知らない世界だとわかったかというと、部屋の中が意味のわからないもモノであふれていたから。
陽気に歌を歌う花。自転車をこぐ目が1つしかないスライム。機を織る毛むくじゃらの何か。エトセトラ。
これはアニメで見たことある! 異世界転生と言うやつだ!
そう思った。それから、異世界転生すると若返ったり、可愛い女の子になっていたりすることも思い出した。
これは夢かもしれないと思いながらも、ワクワクとしてカガミを探す。
ゴチャゴチャした部屋の中をウロウロして探しているのだけれど、なんとなくひざが痛い。それに、長い袖の先からちょっとだけ見えている手先はけっこうカサカサしている。
きっとこの子は魔法使いか何かで、一生懸命働いた手なのね! そう思うことにした。働き者の手はきれいだと誰かが言っていたから、気にしない!
そんなことを考えながら、ようやくホコリまみれな黒い布の下から、鏡を見つけた。
そこに映る姿に絶望する。
「おばあちゃんじゃん!!!! 」
※※※※※
自分の姿に絶望してしばらく泣いた。泣いたあと、帰り道を探した。見つからなかった。
「魔法使いならきっと姿も元に戻せるし、帰り道も作れるよね! 」
『あなたはあまり深く考えないわよね』とよく言われている。今回もあまり考えないようにした。だって考えてもあまり意味がないから。
それよりも今できることをしようと思った。
部屋に色々あるから、何か変身のヒントとか、帰り道のヒントがあるかもしれない。でも部屋があまりにも汚いので、探索も一苦労。とりあえず、掃除をすることにした。
しばらく部屋を掃除していると、誰かが戸をノックした。
ちょっと前に、家に帰るヒントはないかと戸を開いたけれど、一面岩ばかりで外に出る気が失せた。そんな外から誰か来ればいいのになと思っていたけれど、いざ来られると、ちょっと怖い。
そろそろと戸を開けると、そこにはきれいなお兄さんが立っていた。でも悲しいことに、今の私は可愛い女の子ではなく、普通の女の子でもなく、小汚いおばあさん。ホント、ホコリもたくさんかぶって髪もボサボサな小汚いおばあさん。
そんなおばあさんを見る男の人の目は、『死んだ魚』のような目をしていた。
「お願いします。ハナコ様。世界を救うのにあなたの力が必要なのです」
お兄さんの話がわけわからない。
とりあえず部屋に招き入れて、ゆっくりと話を聞くことにした。
お兄さんは一瞬躊躇したが、話をする方が大事だと思ったのか、意を決したようにして部屋に入った。
※※※※※
きれいなお兄さんは、ここに何度も来ていること、そして世界を救ってほしいとお願いに来続けているということを説明した。
なんでも私が転生した? 乗り移った? ハナコさんは世界一の魔法使いらしい。そしてナントカというダークマターバランスが崩れて、世界が崩壊している最中なので、それを止められるハナコさんに依頼に来ているのだと言う。
でも、年寄なハナコさんは面倒臭がってちっとも動いてくれないのだそうだ。
部屋に上げたのも今回で初めてだと言う。
ちなみにハナコさんは花子さんではなく、ちょっと発音が違うけれど似ている。
そんなハナコさんは度々『違う世界で私を呼ぶ声がするんだよ』と言っていたそうだ。私達はハナコさんを呼んでいたわけでもなかったが、もしそのせいでこの世界を救うのの邪魔をしていたのならごめんなさい。そう思った。
とりあえず、今のハナコさんは中身が違うことも説明した。もしかしたら王子様のキスでもとに戻るかも! とダメ元で言ってみたけれど、嫌そうな顔をされた後、『私は王子ではないので…』と断られた。悲しい。
※※※※※
元の世界に戻る方法も、元の姿に戻る方法もわからなかった。けれど、世界のナントカというダークマターバランスを戻す方法はなぜか分かった。
暇だし、お兄さんが可哀想だったので、世界を救ってあげることにした。部屋の真ん中にある水晶に手をかざして、いろんな呪文を順番に唱える。
そうすると、水晶の中のモヤモヤが徐々に消えていく。
お兄さんもきれいな瞳を輝かせて、『おお…』と言っている。
「これで全て解決したかどうかは、本国に戻らなければわかりません。しかし、解決の糸口は確かに見えました。ありがとうございます! 」
ときれいに90度頭を下げてお兄さんが言った。
そして、去り際に、
「アドバイスになるかわかりませんが…。来た時と同じ方法を試してみてはいかがでしょうか? 」
と言われた。
なんでそんな単純な方法を今まで思いつかなかったのか! そう思いながら、試してみることにした。この方法なら帰れそうと言う予感がした。せっかくなので毛むくじゃらの織った布の切れ端を記念にもらっておいた。
そうして、はじめに立っていた所付近の戸を、来たときと同じ方法でノックしてみる。そうしてとを開くと、いつもの学校のトイレがあった。
「やっぱり若い子は行動力があっていいね」どこかからそんな声が聞こえた気がした。
異世界のおばあちゃんは他力本願な方法で世界を救ったらしい。
もう異世界はまっぴらだと思いながら、トイレから出て家路につく。
「膝が痛くないって最高! 」
布きれを握りしめながら家まで駆けて行った。
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