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【完結】逆行した世界最強の魔術師は、力を隠して誰にも知られず静かに死にたい  作者: 夢見戸イル


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38.守るための魔法と呪い

「言えば国に殺される。言わなければ現状維持だけど、何も変わらない。私達の事だけ考えると、ラキ君に魔法を使わせないようにして暮らしてもらうことが一番、ですが……」

「クレアとマイタンの残した思いを考えると、真実を明らかにしては欲しいがのう。それに、無意識に魔法を使うときもあるのじゃろう? 根本的な解決にもならんからのう」

「俺としては、大声で叫んでやりたいがな! 真実はここだぞー! と!」

「流石にダイナンの声でも、国中には響きませんからねえ。まあ、確かに一斉にアナウンスでもできれば、混乱はするとしても、隠蔽のために何かをされるということは無いでしょうが。仲間を集めるとしても、真実が真実なだけに、受け入れられる権力者も少ないでしょうし……」


 流石に俺の魔法でも、国中に事実を伝える事はできない。事実なのに受け入れられない人達の考えは良くわからない。けれどもそのために人を殺すのだから、きっと事実を言うと殺されてしまうのだろう。

 皆が頭を悩ませていると、シュリがそうだと立ち上がった。


「それなら、もうお城に突撃しちゃえばいいわ! 事実を見に来いって脅すの! さもなくば、命は無いぞー、って!」

「シュリ、それは流石に……」


 呆れるエイルを気にも止めず、シュリは続ける。


「だって、向こうだって事実を伝えれば殺してくるのよ? なんで私達はやっちゃだめなの? それに、クレアとマイタンの魔法を使える私達は、きっと殺されないわ!」

「それ、良いかも……」


 俺も、思わず同意した。確かに、それならきっと皆来る。だってクレアとマイタンの伝説を皆本気で信じているのだから。


「俺、神様でしょ? 神様が言ったら、聞いてくれるんじゃない? 皆が魔法を最後に使っていいって言ってくれるなら。俺なんてそもそも殺されないし捕まらない」

「でも、危ない事しないで元気に生きてって言ったばっかりで……」

「でも、皆が死んだら意味ないでしょ?」


 ハイドさんは頭を抱えた。ダイナンさんも、目を閉じて腕を組んで、何かを考えていた。けど、これならハイドさんを、皆を守れる。ローグを生み出すこの魔法は使いたくない。でも、皆が殺されるなら、使っても良いと思えた。


「……その後どうする。おまえは神じゃねえ。だが、そんな事しちまって、普通には暮らせねえぞ。一生身を隠して暮らすのか?」

「……父上。神に操られていたというのはいかがでしょう。真実を伝えるために神がラキを操って、その後操る者と同じ魔法を使えるだけのラキが残る」

「確かに……。くそっ、それ以外にいい案が浮かばねえ……」


 ダイナンさんは、腑に落ちないように天井を見上げていた。


「ダイナンさん言ってたじゃん。あがいてみろって。クレアとマイタンに託された事も、これなら解決できるよ。それに、神様が言った事だから、誰も殺されないし責められない」

「ったく、結局ラキに頼るしかねえのかよ……」


 なんだか不満そうに、ダイナンさんは頭を掻いた。ずっと何かを考えていたハイドさんが、口を開く。


「……もうすぐ、ローグ・ボーアを倒したときに見つけた血土を再生しに行く予定があってね。実は、国王陛下も同行して視察する事になってるんだ。勿論、その分騎士も多く同行する。それに、ゾルオ先生を含めた学者達も行く予定でね。本当は、その前に血土をラキ君に再生してもらおうと思ってたけど……」


 風邪を引いて丁度再生できていなかった血土があった。そういえばハイドさんが、近々神様として登場にピッタリの場を用意できるかもしれないと言っていた気がする。


「……そこなら、色んな人に伝える事ができるよ。お城より、そっちの方がいい。お城は自然が少ないから、死にはしなくても、ラキ君が隠れて移動する術が少ないから危険だ」

「わかった」


 ハイドさんもダイナンさんも、何故か申し訳なさそうな顔をして俺を見ていた。俺が、ローグを生む魔法の真実に、ショックを受けていたからだろうか。けれども、俺を助けてくれた皆を守るための魔法であれば、使う事は嫌ではなかった。


『未来の人がどうなろうが、どうでも良かったのね』


 シュリの言った言葉が、クレアとマイタンの気持ちが、少しだけわかる。ローグを生む魔法でも、皆を救えるならそれで良かった。

 勿論、俺は未来がどうなってもいいとは思わない。けれとも、もし真実が真実として広がったら、根本的な解決策だって見つかるかもしれない。それは結局、未来のためにもなるのではないだろうか。


「いいかい? ラキ君。魔法は気にせず使うんだよ。ローグは、私達がちゃんと倒してあげるから」

「わかってる! 皆を守るための魔法なら、俺は使える!」

「そうか……。そういう風に思ってくれるんだね。ありがとう。ごめんね、色々背負わせて」


 ハイドさんが、俺の頭を撫でた。俺はハイドさんの言っている意味がわからなかった。ただ、皆を守れるなら嬉しい、それだけだった。


「上手く行くといいのう。いつか、クレアとマイタンの思いが、ディーレの思いが報われるのなら、私達の使命も、きっと終わるだろうのう」

「1000年も前から引き継いで来たのですものね」


 エイルがそう言えば、スティおばあさまはフッと笑う。


「ある意味、呪いのようなものじゃ。私達の家族は、必ず一人、生まれる子供か孫か、クレアとマイタンの伝説に異常に興味を持つ。私は勝手に、クレアあたりが私の祖先を作ったのではないかと考えていてのう」

「確かに、あの石に刻まれた文も最後の方はクレア目線に見えました。あの巨大な石も、クレアがメインで作ったと考えると、不思議ではない気がします。……クレアとシュリは、似ている気がするので」

「あら、なんだか誇らしいわ! それより、私はその作戦で何をすればいいのかしら!」


 シュリの言葉に、皆吹き出す。確かにエイルの言うとおり、クレアはシュリに似ている気がした。シュリが、俺達が見つけた大きな石を落として文字を掘ったと言われても、全然違和感が無い。


「あはは。シュリさんは、国王陛下に神様の話でもしておいてもらおうかな」

「もっと魔法を使いたいわ」

「神様の先入観を国王陛下に持ってもらうのは、後々大事だからね。……それに、国王陛下に堂々と話せるのは、シュリさんくらいだよ」

「あら、意外と話せば聞いてくれるわよ。でも、それなら仕方ないわね! 神様のカッコイイとこ沢山話すわ!」

「ラキの事まで話たら駄目だぞ」

「わ、わかってるわよ」


 エイルが本当に大丈夫かとシュリを見る。けれともシュリはやる気満々だ。エイルは大きくため息をつく。


「マイタンも、きっと苦労してたんだろな」


 その言葉に、シュリ以外は皆、思わず笑ってしまった。

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