褒められると妙な気持ちになる事ってあるよね
第二話です!まずはこの作品を開いていただき、ありがとうございます!まだまだ拙い文章かもしれませんが、最後まで読んでいただけると幸いです。
今、俺は駅前にあるよくわからない銅像の前で近くのコンビニで買ったコーヒーを飲みながら周囲を観察していた。いつも外に出るときはジャージを着ることが多いのだが、今回はカーディガンにシャツ、スラックスにカジュアルなスニーカーと、趣味であるネトゲのオフ会で着ていくような恰好にしている。流石にジャージで行くのはまずいと感じたためである。また、今日は土曜日だからなのか、同じように待ち合わせを行う人が数多く見られる。その中でひときわ洒落た格好でそわそわしている男女の二人組を見つけ、デートか?なんて邪推していると、ぞろぞろと俺の近くに人が集まってきた。制服を着てない上に連絡先を交換していないため確証はないが、クラスメイト達ではないか、と考える。自分から声をかけるのもどうかと悩んでいると
「あ、白宮君!来てくれたんだね!」
「まあ、今日は空いていたからな…ところで結構な大所帯だな、部屋割りとかどうするんだ?」
なんて考えていたら声をかけられた。おそらくは先日声をかけてくれた内海という女子だろう。確認する手間が省けた、なんて考えつつも俺は返事を返し、質問を投げかける。
やはり、新入生同士の交流会ということもあるのか、俺を含めて20人程の大所帯となっていたが、事前に部屋割りはしていたと主催者らしき男子生徒が俺に言ってきた。
カラオケ店に移動する最中、俺は人数が少ない部屋に振り分けられることになった。まあそうなるか、なんて考えているとカラオケ店の看板が見えてきた。
「それじゃあ事前に決めた通りに部屋を取ってくれ、それと…みんな楽しもうぜ!」
カラオケ店に入り、主催者の男子生徒が店員と話をし、部屋に入る直前にこのようなことを言った。正直気乗りはしないが、たとえ予定がなくても時間を潰してきた以上は楽しまないと損か、なんて考えながら先導していた男子生徒につられてカラオケルームへと入室した。
カラオケルームに入るとすぐに先導していた男子生徒がマイクを用意しており、もう一人の女子生徒が採点機能をオンにしていた。その様子を俺と内海さんが見ており、二人の様子はかなり手馴れているな、なんて考えていたが、ちらりと横目で隣にいる内海さんを見る。その様子は凄くうれしそうに見えた。視線を戻して何を歌うか、なんて考えていると、男子生徒の歌声がルーム内に響いていた。俺は最近のポップス曲には疎いため、歌詞からでは何の曲かわからなかったが、二人の女子は非常に盛り上がっていた。
「白宮君は何を歌うの?もうみんな歌う曲入れたよ」
テンションが上がった様子の内海さんから声をかけられてふと我に返って曲を入れた。入れた曲としてはある動画サイトで昔流行っていた、世間的にも比較的有名なアニメの曲だ。
「あ、この曲知ってる!あのアニメのオープニングテーマだよね!白宮君ってアニメ好きなの?」
質問も含めて、先ほどから内海さんの距離がかなり近い気がする。元々かなりの美少女であることに加え、今日は学校内での制服姿と違って私服であり、茶色のオーバーコートにTシャツを組み合わせ白のスカートを穿いており、元々の容姿と相まって雑誌に載っているモデルみたい(服装については近くにいたクラスメイト女子が言っていた)な人物が目の前に迫っており、俺は男子生徒から何か言われないかと不安だったが、歌うのに夢中で気づいていないことにほっとしていた。
「まあそうだけど…ところで内海さん、なんか距離近くないか?」
とりあえずこのまま距離が近い状態はまずいと考え、それとなく離れてもらうように言いつつ、彼女からの質問に答える。もうすぐ男子生徒の歌が終わり、次は内海さんが歌う番だったのか、渋々といった様子で離れてくれた。正直に言うと少しだけドキッとしてしまった己を恥じつつ、入室する前にドリンクバーで入れたお茶を飲み、試行を落ち着かせる。
内海さんの歌も終わり、自分の番になった。正直自信はないが、まあ楽しむか、といった心構えで歌うことにした。
「え、白宮って歌うまくね?」
「確かに、すごい上手だよね」
「なんというか、結構様になってるよね」
「学校ではあんな感じだったけど、意外と面白いな、白宮って」
「確かに!声もかっこいいし!」
元からいたクラスメイトの男子と女子、いつの間にか来ていたクラスメイト達、そして内海さんが何かを言っているように見えるが、歌うことに集中しており、気にも留めず、音程を合わせて歌詞のレールをなぞり、歌を紡いでいく。
歌い終わると我ながら良い集中だった。なんてことを振り返っていると拍手とクラスメイト達の声が聞こえてきた。
「かっこよかったぜ、白宮!」
「歌うまいな、今度カラオケ行くときは一緒に歌おうぜ!」
「後でデュエットしようよ!きっと楽しいよ!」
この言葉はお世辞なのかもしれないが、自分を褒められるのは自然と悪い気は起らず、むしろいい気分になった。そんな気分にあてられたのか
「まあ、気が向いたらな」
いつもは気怠い感じと共に出ていたこの言葉だったが、今回は照れた自分を隠すような感じでこの言葉が出てきたのだった。
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