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駐在さんだよ、石川さん!  作者: エンタープライズ窪
8/10

三輪車爺だよ、石川さん!

 チャリで巡回中の出来事だった。


「おお、駐在。巡回か?」


 三輪車に乗ったムキムキ老人、佐々岡さんが現れた。


 正直無視したかったが、人目も多かったので仕方なく返事をする。


「こんにちは佐々岡さん。あと、その三輪車まだ乗ってんの?」


「おう。儂の相棒や」


 自慢げに笑う佐々岡さん。


 うん。ダサい。怖い。


「前も言ったけど、事情を知らない人が見たら完全に不審者だぞ? 佐々岡さんよことでこれまでに観光客が8人駐在所に駆け込んできた」


「ハッハッハ。儂も人気やな」


「違えよ!」


 駐在所に来る相談や通報で、1番多いのは佐々岡さんと鈴村に関することだ。

 正直、この2人が村1番の問題児である。


 うんざりしながら、俺は立ち去ろうとするが。


「なあ、駐在。儂は今ものすごく暇なんやけど……」


「……何にも付き合わんからな」


「儂とレースせんけ?」


「……は?」


 俺の脳は、このジジイが何を言っているのか理解できなかった。


「三輪車とチャリ、どっちが速いか勝負や」


「はぁ⁉︎ やらねえよ!」


 すると、佐々岡さんは……。


「儂に勝ったら小宮のとこのラーメン奢ってやろう」


「よしやろう」


 その瞬間、俺のチャリはロケットスタート。

 落ちていた葉っぱやゴミが空高く舞い上がるほどの速さであった。


 だが、佐々岡さんも負けてはいなかった。


「フライングとは卑怯じゃぞ!」


 気づけば、すぐ横に三輪車に乗った老人がいた。


「ば、馬鹿速い……!」


「ジジイを舐めんな、だら! ほらほら、もっと飛ばすぞ! それぇい!」


 さらに加速する佐々岡さん。


 俺のチャリと三輪車はどんどん離されていく。


「……完敗だ」


 猛スピードで走り去っていく老人の背中を見つめながら、俺は素直に負けを認めたのだった。




 翌日。


 何気なくニュースを見ていた俺だったが、あるニュースの見出しを見て、思わず飲んでいたお茶を吹き出してしまった。


 アナウンサーは、淡々と告げる。


「昨夜、高速道路に侵入し、トラックや自動車を次々に追い越していった三輪車でしたが、今朝、警察が三輪車に乗っていた老人を、道路交通法違反で逮捕しました」




 その後、前科持ちになって帰ってきた佐々岡さんだったが、尚もレースを挑んでくるため、懲りてはいないようであった。

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