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事件(1)

 ――モブからきみを救う。


 シリアン様の言葉が頭から離れない。


 モブから救出されるって、どういう意味だろうか。

 別に「モブ」という呪いにかかっているわけではない。


 いや、もしかすると「モブ」に囚われすぎているのかしら。


 シリアン様は随分とマイペースで強引な人ではあるけれど、性格はむしろ純真で真っすぐだ。

 その人が、冴えないモブのわたしのことを好きだと言ってくれている。

 自分も喜んでモブになるとも言ってくれている。

 といっても、なれっこないだろうけど。


 子供四人に関してはまあ置いといて、あんなに丁寧な人生設計やお金のことに関しても提示して見せてくれた。

 お金の心配はしなくていいんだよと安心させてくれた。

 そこまでしてもらっているのに、それを袖にしている時点でわたしはすでにモブを逸脱しているのではないだろうか!?


 どうしよう…と思い悩みすぎて、母に顔を覗き込まれていることにすら気づいていなかったらしい。


「どうしたの?最近何か悩みでもあるんじゃないの?」


 そう言われてハッと顔を上げると、すぐ目の前で微笑む母がいた。


「ねえ、お母様はどうしてお父様と結婚したの?もっといい条件の男の人もいたんじゃないの?」


 母は没落貴族の三女で、王城勤めのメイドとして働いていた時に父と知り合って結婚したと聞いている。

 本人曰く、若い頃はモテたらしい。


 確かに母は、そこそこ美人だし、よく働くし、性格も快活だから、若い頃はたくさんの男の人に言い寄られたんじゃないかと思う。

 その中には、かっこいい騎士様やお金持ちの貴族もいたはずだ。


「だって、お父様のことが好きになっちゃったんだもの。仕方ないじゃない」

 母はそう言って、うふふっと笑った。


 そして、真面目な顔でこう続けた。

「もしも結婚したいと思う人がいるんなら、家族のことは考えずに自分の幸せだけ考えてその人の胸に飛び込めばいいのよ?」


 口を開いたら泣いてしまいそうな気がして、頷くことしかできなかった。


 そっか。

 好きだから――それだけでよかったんだ。


 シリアン様は最初からそういう態度だったのに、わたしときたら……。


 まだ愛想を尽かされていないのなら…間に合うのならば、明日返事をしよう。


 そう決めたのに――。



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