僕たちのこれから
「何をしているの」
そう声をかけたら、ハラハラと涙を流していた死神さんが顔を上げた。
随分と涙を流し続けていたのかもしれない。赤く腫れた目元が、痛々しく感じてしまった。
「悲しいことがあった?」
小首を傾げそう問えば、死神さんはこくりと頷いた。
「お花の蜜を頂いていたんです」
もう人の命を食べなくても生き長らえるようにはなったけれど、それでも何かは口にしないといけないのだと説明してくれた。
「綺麗な花を咲かせていたのに、それを手折ってしまうのがあまりにも申し訳なくて………」
「それを食べないとどうなるの?」
「………死んでしまうのです。折角あなたに譲って頂いた命なのに、無駄にしてしまうから」
「それで泣いていたの?」
そう問えば、はいと小さな声で返事があった。
「君は本当に優しいんだね」
「………いいえ、とても残酷だと思います」
しおしおと目に見えて落ち込む死神さんの手を取り、微笑みを向ける。
「それじゃあ、花の蜜を蜜蜂に集めてもらおうか、きっと上手くいくと思うよ」
「………蜜蜂に?」
「お願いして分けてもらおう。その代わり、僕らは花を植えよう?ここを花畑にして、蜜蜂に住んでもらおうよ」
「花畑?」
「君は、どんな花が好きかな?僕も名前は知らないけれど、好きな花があるよ」
「………わたしも、花の名前は詳しくないです」
「じゃあ、まずは好きな花を探してみようか。なんだか楽しくなってきたでしょう?」
手を引き、あっちだよと指し示せば、涙で濡れていた顔を笑顔にした死神さんが大きく頷いた。
「はい、とても楽しいです」
「それは良かった。たくさん花を植えて、一面の花畑を作ろうよ」
そうして綺麗に咲き誇る花畑に思いを馳せる。
きっと、噂で聞いた天国のような………そんな場所になるんじゃないかな。