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33:さすが勇者様です

 安全地帯にいたパーティーと、駆け込んできたパーティー。そして俺とソディア。

 何故か全員でアンデッド軍団を見た、という現場に向かうことに。

 全員で協力して殲滅しよう――なんて流れにならないよな?


「俺たちが力を合わせればなんとかなるだろう。違うか?」

「あぁ。敵の数は百という噂もあるが、なぁに。ひとりノルマ五体と考えれば、大したことは無いさ」


 なんて流れになってるぅぅ!

 まずい。どうする?


「お、俺の正体を――」

「ダメよ。あなたまで討伐対象にされてしまうわ」

「マジかよ……でもだからってあいつらを――」


 見捨てることは出来ない。

 なんだかんだと俺をここまで守ってきてくれたんだし、いろいろ教えても貰った。

 知らない異世界に連れてこられて、困惑してた俺をある意味救ってくれた連中だ。

 何よりこれからの旅でも、あいつらの力は必要なんだ。

 あいつらを失うのは……困る。


「アブソディラス」

『なんじゃ?』


 道中、俺は他の冒険者に聞こえないよう、小声でアブソディラスに伝える。

 更にソディアにも。

 そして現場へと到着すると、そこには――。


「お、おい。アンデッドがモンスターと戦っているぞ!?」

「や、やっぱり冒険者の成れの果てって噂は本当だったのか」


 楽しそうにモンスターと対峙しているアンデッド軍団がいた。

 そして彼らも冒険者に気づき、焦ったようにあたふたしはじめる。

 で、俺の姿を気づいて飛んでこようとするチェルシーを、コウが必死に引き留め後ろに下がらせていたりする。


「お、思ったよりは多くないようだな」

「あ、あぁ。けど俺らよりは確実に多いだろ」


 百ではないが、六十だもんな。

 生身の冒険者は俺たちを含めても二十人ぐらい。単純に三倍だ。

 一掃するぞと息巻いてやってきた冒険者も、さすがに躊躇するってもんだ。

 そのうえ――。


「ところであのアンデッド。何故俺たちを襲ってこないんだ?」

「もしかして、まだ生きてると思っているんじゃねえか? ほら、モンスターと戦ってるし」


 などと彼らが言うと、アンデッド軍団はお互い顔を見合わせ――。


『俺たちは冒険者だ〜』

『モンスターはいねぇか〜』


 と、ヘタな演技をし始める。

 冒険者はそのヘタな演技を見抜けず、様子を伺っているようだ。


 その間にアブソディラスが霊体を伸ばし、ヘタな演技を続けるアンデッドの元へと飛んでいく。

 アンデッドは他人の目からも見えてしまうが、霊体であるアブソディラスが見える者はいない。

 彼がアンデッド軍団の下へ飛んでいき、これから行われる俺の『一掃作戦』をみんなに伝えてまわる。


『伝えたぞい。タイミングを外すと大ごとじゃぞ。よいな?』

「あぁ。分かってる」


 アンデッド軍団が牙を剥いたのはその時だ。


『生者の匂いがするぞ』

『仲間だ……仲間に加えるんだ』

『うふふふ。さぁ、アタシたちと最下層を目指しましょうよぉ〜』

『あぁ、サナド。サナドオォォォ』

『カラカラカラ』


 突如として生者に向かって手を伸ばし、恐ろしい形相でこちらを見つめるアンデッド軍団。

 その姿に冒険者たちが短く悲鳴を上げ、同時にそれぞれの武器を構える。


 逃げる選択ではなく戦う選択をするあたり、三十階層まで下りてくるだけのことはある、か。

 だからこそ俺も!


「ここは俺に任せてくれっ!」


 マントを翻し、他の冒険者の前に立つ。

 そんな俺の姿にアンデッド軍団は怯む。


「とっておきの魔法があるんだ。ちょっと爆風が激しいから、目を閉じていたほうがいいぞ」


 と念を押して俺は駆け出す。


『生者あぁぁぁぁ』

『死・死・死ぃぃぃぃぃぃ』


 一斉に襲い掛かるアンデッド軍団。

 うわぁ、普通に怖いから。


「"風の精霊シルフ――"」

「"爆炎フレイム"はぁい!」



 俺の魔法が完成するよりも早く、ソディアの精霊が風を吹かせ土埃を巻き上げる。

 "爆炎フレイム"の完成はそのほんの少しあと。

 炎が爆ぜ、爆風が辺りを襲う。


 さすがに俺も目を開けてはいられず、手を顔を覆いながらもぎゅっと閉じじっと待つ。

 爆風が落ち着くと、ようやく冒険者らが待つ後ろを振り返った。


 固唾を飲んで待つ中、ひとりの冒険者が手を叩く。


「おい、すっげーな! なんだあの魔法。お前、見たことあるか?」


 仲間の魔術師らしき男に声を掛けるが、その男は首を傾げて俺を見ている。

 バレたか?


「おかしいですね。無詠唱の"爆炎フレイム"の威力が尋常ではありません。詠唱があったとて、あの魔法にあそこまでの威力は――」

「いいじゃねえか細かいことは気にすんな。いやぁ、久々に派手なのを見せてもらったぜ」

「清々しいほど、一撃だったな。アンデッド軍団の肉片一つ残ってやしないぞ」


 そりゃそうだ。何も吹っ飛んでいないんだからな。


 うまく誤魔化せたようでよかった。


 その場で解散となり、冒険者の姿が見えなくなってから――。


『危なかったっすぅ』

『アタシの髪、焦げてない?』

『カラカラッ』

『あ、はい。ラッカさんの骨ですね、どなたか拾っていませんですか?』

『あっしが拾っておいたでやんすよ』


 "爆炎フレイム"の炎が爆ぜる直前、俺と冒険者との間の空間にソディアが風の精霊を召喚。

 砂を巻き上げ視界を遮断すると、アンデッドたちが急いで俺の影へと避難する。

 直後に炎が爆ぜ、爆風で今度は本当に視界が奪われる。

 

 魔法完成のタイミングが早ければアンデッド軍団は、正真正銘、成仏することに。

 遅ければ精霊によって巻き上げられた砂埃と爆風とのタイムラグが長すぎて怪しまれるし……。


「なんとか誤魔化せたな」

『『さすが勇者様です!』』

「おだてても何もでないからな!」


 こうして無事に最下層を目指す俺たちだったが……この後地上に戻ると、俺のことが尾びれ背びれ胸びれまでついて噂になっていた。

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