表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/97

28:祟られると大変だもの

 一部の金貨だけをギルドで換金して、迷宮に挑むため早速――買い物に。 


「買い物? いったい何を」

「食料」

「あぁ、そうか」


 手持ちの非常食は、残り二日分ほどしかない。

 どのくらいの規模のダンジョンだか分からないが、日帰りできる――とは考えにくいよな。


「それと装備ね。レイジくん、あの洞窟では自分の装備を選んでなかったでしょ?」

「え……う、うん。まぁ……」


 運動音痴ではないが、正直、剣や弓、槍なんかも使える気がしない。

 使えないものを持っていても仕方がない――と思って自分の分は取らなかったんだけど。


「だからあなたの装備を見繕うのよ」

「俺の? いや、俺剣とか弓とか扱ったことないし」

「武器じゃなくって、防具よ」

「あ、そっちですか」


 やってきた武具店で心臓部分を守る程度の皮鎧を購入。。

 それから手袋だ。


「旅の途中にも思ってたんだけど、素手だといろいろ怪我しそうだし、ね」

「あぁ、うん。これなら気にせずいろいろ触れる」

「でしょ? それとブーツも」

「あ、それは俺も買おうと思ってたんだ」

「ふふ。だってその靴、長旅には向かなさそうだものね」


 そうなんだよ。

 ソディアが見繕ってくれたブーツに足を通すと、意外なほど履き心地が良い。


「手直しするかい?」


 そう言って店員の中年おばさんが言う。

 どうやらサイズ補正をその場でしてくれるようだな。


「大丈夫そうです。どうも」

「いえいえ。お嬢さんの見立てがよかったんだねぇ」

「俺もビックリするぐらい、ピッタリですよ。さんきゅー、ソディア」

「そ、そう? よ、よかった」


 照れ臭そうに顔を染めるソディア。

 ついでだ、彼女にも何か買ってやろう。


 武器は――アブソディラスから貰ったものがある。

 防具は――特に不足しているようには見えない。

 じゃあ……アクセサリーか?


 ゲームだとアクセサリーも重要な防具に含まれるんだけども、こっちの世界ではどうなんだろうか。

 さすがにイヤリングやネックレスに防御力があるとは思えない。

 けど、魔法が付与されているものなら?

 そう思って店内を物色すると――あった!

 男性店員がどんっと構えるカウンターの後ろが棚になっていて、そこにネックレスやイヤリングが飾られていた。


「見たいのかい、兄ちゃん?」


 察したのか、男性店員がにんまりした顔で尋ねてくる。

 せっかくだ、ソディアには内緒でこっそり買いたい。

 幸い彼女は店の奥にある、女性向け装備コーナーに夢中だ。

 よし、今のうちに――。


「付与されている効果はどんなものが?」

「へへ、そうこなくっちゃな。効果はな――」


 飾られてあるほとんどは、魔法を使う際に消費する精神力の代役となる、魔晶石がはめ込まれたアクセサリーだ。

 他にあるのは【ライフストーン】という、回復魔法の代用品として使える石が嵌った物。

 下級の火の魔法を撃てる【ファイアストーン】という石が嵌った物。眩しい光を発する物などがある。

魔晶石は洞窟で、巾着に入るだけ持ってきた。だから必要ない。

 回復――ソディアは使えると言っていた。必要ない。

 下級の火魔法――火球だな。もっと凄いのを彼女は唱えていた。必要ない。


 うぅん、手詰まりだ。

 こうなったらデザイン性だけで選ぶか?


「どれもいらないって顔だな。じゃあ――値段は張るが、こんなのもあるぜ?」


 そう言って店員がカウンターの下から取り出したのは、青と緑の宝石をそれぞれ嵌めたイヤリングだ。

 しずくのような形の宝石を、まるで果実に見立てたようなデザインのそれは、男の俺から見ても綺麗だと分かる。


「こっちは風の精霊石で、こっちは水の精霊石だ。精霊が好む石でよ、上手く精霊を住まわせることが出来れば、ダンジョン内でも風を吹かせるし、水の無い所でも飲み水に困ることもなくなるってもんだ」

「ってことは、今はそれぞれ住民は――」

「いねえよ」


 いない、か。

 でも関係ない。

 ソディアは精霊使いだ。彼女が自分で呼び出し、住まわせることができるだろう。

 そして精霊魔法は、俺の推測が正しければ――。


「買おう」






「嘘っ。こ、これを私に?」

「うん。装備、見繕って貰ったお礼に」

「レ、レイジくんに合いそうなものを探してきただけじゃない。お金だってレイジくんが自分で払ったのよ。それなのに……」

「いらない? うぅん、俺は男だし、アクセサリーなんて付ける趣味は無いからなぁ」


 さっきギルドで換金した金貨で、手持ちは五十枚ほどになっていたんだけど、イヤリングで四十八枚使った。

 尚、俺の装備では金貨一枚で済んでいる。

 イヤリングを買うと言った時の店員の顔は、そりゃあもう大喜びってもんじゃなかったな。

 かなり大口商品だったんだろう。

 それを考えると、今更返品てのもなぁ。


 チラりとソディアを見ると、イヤリングを見て目をキラキラさせている。


「着けてよ。似合うと思って買ったんだし。着けないっていうなら、祟られるんだぞ」

「え!? だ、誰に?」

「俺に」


 ……滑った!?

 ソディアってば無反応……。これは返品まったなしなのか。


「っぷ……ふふふ。レ、レイジくんが祟るの? やだ、もう。ふふふ」

「わ、笑うなよ。滑ったかと思って、すっげー恥ずかしかったじゃないか」

「あら。笑わなかったら、それはそれで滑ったってことじゃない?」

「そ、そうだった」


 私の勝ち――と言わんばかりに、彼女がくるりと舞って微笑む。

 それから徐にイヤリングを嵌め、それが見えるように髪を掻き上げた。


「祟られると大変だもの」


 そう言ってソディアはもう一度微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ