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24:カルネちゃんの出番のようですぅ

 アブソディラスの自宅どうくつを出て、山を下りる。


『ではコベリアさんのご実家は、西の……』

『ファモの国よ。まぁファモと言っても、西のディストレトと北西のゴンドローラムとの国境にある、ドが付く田舎だけれどね』

『そう、ですか……』


 アズ村からのアンデッド軍団の知識はいろいろと古い。しかも彼らの死後、地理事情もいろいろ変わっているだろう。

 それに引き換え元冒険者の情報は新鮮だ。なんせ数日前まで生きていたのだから、今現在の情報だからな。

 それでコベリアの話と、具体的なこれからの道順なんかをいろいろ確認することにしたのだが……。

 さすが司祭ってだけあって、受け答えが親切丁寧なタルタスが口ごもる。


「ファモはね、二百年前の大戦で滅んでるの」

「あ、そういえばそんなこと言ってたな」


 ソディアが俺だけに聞こえるよう、そっと囁く。

 それでタルタスは口ごもってしまったのか。

 あいつ、良い奴だな。


 そんなタルタスの優しさも、コベリアにはお見通しだったようだ。


『まぁ滅んで当然ね。建国王はいい人だったみたいだけど、私の時代じゃもう……』


 税金は高いし、各地から毎年のように女をかき集めて奴隷にし、一年後には娘たちは遺体で戻ってくる。

 気に入れば家臣の妻であろうが娘であろうがお構いなし。

 そのくせ部下の労を労うこともなかった。

 傍若無人な国王だったとコベリアが話す。


 それを聞いていた他の冒険者ゴーストが言う。


『噂だと内乱が起こって、その期に乗じて隣国に攻められたとか』

『ファモが滅亡する数代前の国王からずっと、コベリアさんがお話したような王様ばかりだったようですぅ』

『え、嘘! あのデブ国王の子孫も同じことやってたの? 信じらんないわ』


 ファモという国は二百年前この大陸全土で起こった戦争で敗戦し、今はドーラムという国に代わっているという。

 コベリアの故郷はその最北西に位置する村で、三つの国の国境線に近いのだとか。


『徒歩で三十日かそこいらってところでしょうかね』

「結構かかるな」

『まぁ真っすぐ進めればいいんでしょうが、そうもいきやせんから』


 ま、それは分かるけどね。

 でもそうなると……。


「お宝部屋でこれを集めておいてよかったなぁ」

「そうねぇ。長旅に路銀は必須ですものね。でもそのお金、普通のお店では使えないわよ」

「え!?」


 慌てて手持ちの金貨と、竜牙兵に拾わせた金貨を見比べると――模様が違う。大きさも違う。

 拾った物のほうが少し大きい。


『あぁ、それはかなり古い金貨ですな。硬貨なんてのは、一枚当たりの重量が決まってるんですよ。だからね、昔の金貨は今の金貨より少し価値が上がるって寸法で』

「なる、そういうことか」


 価値が違う――でも具体的に幾ら分ぐらい違うのか、さすがにその辺の店の店主にはわからないらしい。

 なので――。


「冒険者ギルドで鑑定してもらうのよ」

『ここからだと森を抜け、半日ほど西に行くとヴェルタの町がありやす。近くにダンジョンもあって、冒険者ギルドも賑わう大きな町ですよ』


 ダンジョンかぁ。ちょっと憧れたりはするよなぁ。

 でも……もれなくアンデッド軍団を引き連れた俺なんかが潜れるわけもなく。


「そうだ。お前ら、町では俺の影に入って貰うからな。あと人の気配を感じた時も、だ」

『『へい』』






 その日の夜。

 山を下りてすぐの所で野宿をすることに。

 明日は森の出口付近まで移動してそこでまた野宿し、明後日の朝から町に向かっての移動だ。 


 テントの設営を終え、夕飯の支度をする俺――とソディア。


「ソディアもヴェルタには行ったことがないのか」

「えぇ。私はもともと西のほうを拠点にしていた冒険者だから、こっちに来たのは……そ、そう、古代竜に実力を見てもらうためだったからっ」

「そっか。西の方って、じゃあドーラムとか?」

「そこも含めてもっと西……かしら」


 雑貨屋て買った地図を広げソディアと覗き込む。

 今俺たちがいる場所――そしてドーラムの位置。そこから西へ行くとディストレトという国がある。

 ソディアはこのディストレトや、その北のディストレト、そしてドーラムの比較的西側で活動していたという。


 話をしながらソディアはてきぱきと食事の用意をする。

 俺なんか水を汲んできただけだ。


 今調理しているのは、しょっぱいハムを厚切りにして軽く焼き、それを沸騰したお湯にぶちこむ。

 そこにソディアが持っていたじゃがいものような根菜を投入。

 更に彼女持参の調味料を加え、完成したのがハムじゃがスープ。

 硬いパンはスープに浸して食べる。

 あ、ハムはそのままで食べるより、スープにしたら幾分ましだな。

 たぶん塩分がスープに染み出て、その分薄味になるのだろう。


 でもやっぱり……日本で食べていた物が懐かしい。

 パンがある。肉もある。

 だったらハンバーガーぐらいは作れるんじゃないか?

 ただ問題は、それを非常食に出来ないってことだな。

 

 問題は食べ物だけじゃない。

 着替えは用意した。だけど一着だけだ。

 今朝、朝起きてテントを出る前にこっそり着替えてある。学生服は黒バージョンのままだが。

 今夜着替えたとしても、明日の分が無い。

 い、一日ぐらい、同じパンツでもいいよね……。

 次の町で着替えを補充しなきゃな。むしろ洗剤買って自分で洗う?


「はぁ、この世界に、生活魔法! なんてものがあったらなぁ」

「え? あるわよ」

「え」

「だから、あるわよ」


 あるのか!?


 はっ。な、なんか背後で凄い気配を感じる。


『くふふふふふ。カルネちゃんの出番のようですぅ。ついにこの稀代の大魔術師、カルネちゃんの出番なのです!!』


 なんか出たぁーっ!



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