22:似合い過ぎだろ
失敗のたびに解除魔法も使わされ、さすがに疲れたぜ。
最初は何故か聖属性だったが、憑りつく死霊め成仏しやがれって考えていたから、俺の必殺成仏してくださいが炸裂したみたいだな。
その後は嫌な記憶を別の、幽霊関係から遠ざけると……ただの呪いに。
試行すること数十回。
その甲斐あって、ようやく魔法の武具に闇属性を付与することができた。
『ぃやったっすぅーっ! 俺、これ貰いっすっ』
『カラカラ! カラーンっ』
コウはかなり大振りの両手剣を、ラッカは銀色に輝く弓を手にしている。
『あ、オラこれにするでさ』
『じゃあ、アタシはこれ。んふふ。これを使う日がくるのが楽しみだわぁ』
木こりだったというアンデッドは戦斧を。そしてコベリアは……。
「鞭……似合い過ぎだろ」
『んふ。あ・り・が・と』
女アンデッドたちは特に持ちたいという奴だけが、男アンデッドたちは全員が何かしらの武器を手にしている。
防具も装備している連中もいるけど、よくもまぁ、これだけの数を揃えたもんだ。
武具合わせて四十ぐらいは付与したぞ。
それでもまだ残っている武具がある。
「ソディアも貰っとけば?」
「え!? い、いいのかなぁ。成り行きで一緒に行動するようになったようなものだし」
彼女が俺の頭上を伺うように見る。
実際に見えていないもんだから、アブソディラスとはまったく視線が合っていない。
そういえば、彼女の目的とか聞いてなかったな。
アブソディラスを探していたっぽくはあるけど。
「もしかしてソディア……アブソディラスを……倒しにきた、とか?」
「え!? な、なにを突然」
「いや、あの通路にいたってことは、そういうことなのかなと思って」
そういうと、キョトンとした顔になったソディアは、しかし直ぐに顔を真っ赤にして慌てだす。
「馬鹿なこと言わないで! 曲がりなりにも伝説の古代竜よ? そんじょそこらの冒険者が太刀打ち出来る訳ないじゃないっ。自殺行為よ!」
「いや、でもあっさり死んでるんだぜ、こいつ」
「……そうね。信じられないけど、死んでるわね。見えないけど」
『凹むのぉ』
で、改めて彼女があそこにいたのか尋ねてみた。
「え、えぇっと……」
『腕試しかのぉ』
「腕試し? でも倒しに来た訳じゃないって――」
そこまで言うと、ソディアは突然手を叩く。
「そう! 腕試しよっ。わ、私の魔法が彼にどのくらい通用するのか、それを見て欲しかったの」
「見て?」
「えぇ。神々に直接創造された古代竜。その中でも神々の大戦初期から存在し、唯一の生き残りが彼なの」
……そこだけ聞くと物凄いドラゴンだとは思うんだけれども。
今そのドラゴンは俺の上で腕を組み、鼻息を荒げてふんぞり返っている。
とてもそんな凄いドラゴンとは思えない。
「じゃあ古代竜って、アブソディラスが死んだから絶滅したのか?」
「いいえ。大戦の末期にも数頭は創造されてるわ。でもこの古代竜たちは、戦場から逃げ出すために、下位の神や邪心とされる神が最後のなけなしの力で創造したから……」
『実力で言えばハイ・ドラゴン並みじゃの。儂の足元にも及ばぬわ。かーっかっかっか』
だからお前は死んでるだろ。
凄くは見えないが、とにかくアブソディラスに自分の実力を見て欲しくて、ここにやってきたとソディアは話す。
アブソディラスの方でも、そういう冒険者や騎士が以前の住処には訪れていたそうだ。
倒すのが目的ではなく、ルールの上で挑んでくる者が。
『儂の鱗一枚でも傷つけられれば、その者の実力を認めてやった。その証拠に傷ついた鱗を持たせてな』
傷ついた鱗を持ち帰った者は英雄扱いされ、騎士であれば出世街道まっしぐら。冒険者であってもどこぞの貴族が大金を叩いて召し抱えたがる、そんなことになるのだとか。
「じゃあ実際にお前を倒したこの冒険者たちは?」
と、足元を指差す。
心なしか、影の中の元冒険者たちは怯えているように感じた。
『そうさのぉ。実力で言えばまぁまぁじゃろう。中堅以上、一流未満といったことろじゃな』
「腕は立つでしょうね。だってそうじゃなかったら、いくら人数がいたって挑もうとは思わないわよ」
二人の話からすると、それなりの冒険者のようだな。
ただ怨霊化しているときの言葉――俺らを騙しやがって――。
帝国に雇われてアブソディラスの討伐に来たのだろうか?
落ち着いたら彼らから話を聞かなきゃな。
文字数が今回はだいぶん少ないので、後程もう一話更新いたします。