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14:好きよ

「待ってたわよぉ〜」


 朝食を食べて昨日の洋服店へ。

 預けた制服一式を受け取りに来た訳だが――尻を守らないと。


「んふふ〜♪ 預かった服を元に、ワタシなりにアレンジしたものを縫ってみたのぉ」」


 おネエは言って、ハンガーにかけられた俺の学生服を持ってくる。


 何故か三着。


 一着は見慣れた紺色ブレザーに、それよりやや薄いチェック柄のズボン。

 もう一着は黒に白縁のブレザーで、ズボンは薄いグレー。

 もう一着は赤に黒縁のブレザーで、ズボンは黒。、

 しかも黒と真っ青なネクタイまで二本用意されている。


「んふふ。どう? 上手く縫えたのよぉ」

「たった一日で……凄いな」


 裁縫のことはよくわからないが、こういうのって一日やそこらで縫えるものなのだろうか。

 しかもこの世界には学生服なんて無いんだろ?

 それを見ただけで作ってしまうとは……恐るべしオネエ職人。


「ものは相談なんだけど。こっちのオリジナルを譲ってくれないかしら? 型紙も何も無いから、これを見ながら、もしくは分解して型紙を起こさなきゃいけないのよ」

「んで……こっちの二着を?」

「タダであげるわ! だからお・ね・が・い」


 長身男のウィンクは、かなりの破壊力があった。






「あら、レイジくん。元の服はどうしたの?」

「譲った」

「代わりにそれを?」

「あぁ。あと赤いのもあるんだ」


 洋服店から出てきた俺の学生服は、黒とグレーの組み合わせだ。

 赤はちょっと……勇気がいる。


「デザインは変わらないのね。でもその色のほうが落ち着いた雰囲気で好きよ」

「そ、そう? 店員はちょっとアレだったけど、センスは良かったようだ」


 好きなんて言われたら、その気が無いのをわかってても嬉しくなるじゃん。

 お尻に触られたのは無駄ではなかった!


 先に買っておいた外套――ようはマントなんだが、偶然なのか必然なのか、これまら真っ黒だ。

 買うときには気にしていなかったけど、裏地が赤という、なんとも吸血鬼じみたカラーリングだな。

 それを羽織っていざ出陣!


「さて、行くか」

『おほーっ。どこに行くんじゃのぉ』


 ……わざとらしい。

 お前が行きたいから付き合ってやるんだろ、俺たちが!

 っと、そういえば――。


「ソディア。旅先なんだけどさ――」

「えぇ。ドーラムとニライナの国境線にある村、でしょ? 私も元々西のほうにいたから、少しは道案内できるわよ」

「マジで! すっげー助かる」


 行商人をしていたというスケルトンのモンドは、その知識が生前で止まっているのでドーラムだのニライナのことは知らない。

 地図を見せても、彼の記憶にあるものと国境線がまったく違っていると。

 ほんと、彼女が一緒に来てくれてよかったぜ。


「とりあえず西だな?」

「そうね。森を通ることになるけど、たぶん私たちはそのほうがいいと思うわ」


 森を行けば人目を避けられる。

 避けなければならない理由は……。


『早く森に行くっす』

『退屈だわぁ』

「五月蠅い黙れ」

『『はい』』


 ――このアンデッドどもだ。

 隙あらば影から出てこようとする。

 人の多い街道なんかで出てこようものなら……そこかしこで悲鳴があがるだろうな。


『うむ。儂は別にのんびりでもいいのじゃぞ?』


 といいつつ、その体は伸びまくって町の外へと向かおうとしている。

 器用だな。尾の部分だけ俺の肩にくっつけて、びろーんっとなってんだから。

 一刻も早く、リアラさんが住んでいたであろう村に行きたくて仕方ないのがバレバレだぞ。


 町を出て森を歩くこと小一時間。

 小腹が空いたので小休止にと、森を流れる小川までやってきた。

 ここで俺は――。


「はい。お前ら種類ごとに並んでくれ」

『『は〜い』』


 ゾンビスケルトンゴーストでそれぞれ並んでもらう。

 人数の把握にだ。


 各アンデッドの内訳は――。

 ゾンビが九人。

 スケルトンが十人。

 ゴーストも十人。

 ん?


「コベリア、ゴーストの列に並ばないのか?」

『え? だってアタシ、ゴーストじゃないわよ?』

「ゴーストじゃない?」


 半透明だし、足は無いし、宙に浮いてるし。

 ゴーストじゃなかったらなんなんだ?


「レイジくん。彼女きっと、レイスなのよ」

「レイス?」


 レイスも幽霊タイプのアンデッドモンスターだろ?

 ゴーストと何がどう違うのか。


『主にはアンデッドのランクというのも教える必要があるようじゃの』

「レイジくんにはアンデッドモンスターのランクを教えてあげなきゃね」

「え……」


 二人して同じこと言ってら。

 ソディアとアブソディラスが交互にほぼ同じ内容を話す。


 アンデッドの最下層にゾンビスケルトン、そしてゴーストがいる。

 その上位にグール、ウォースケルトン、レイス。

 更に上位となると、吸血鬼なんてのも出てくる。 


「吸血鬼もアンデッドだったのか……」

「その辺りのクラスになると、強さが段違いになるわ。出会ってしまったら逃げろ。普通の冒険者ならそう考えるわ」

『吸血鬼なんぞ、まだまだ小童じゃわい。かーっかっかっか』


 二人の強さの基準だけは、かなりずれているようだ。

 ソディアの言葉を信じておこう。


 しかし、コベリアだけレイスって、どういうことだろう?


『主の死霊術で進化させたからじゃろうな』

『じゃあ俺らも進化して貰ったら、レイスになれるっすか!?』

『さぁのう。偶然じゃったかもしれんし』

『『そんなぁ』』

「さぁて、休憩終わり。今日中に森は抜けたいなぁ」


 荷物は一体の竜牙兵に背負って貰う。

 地図を見ながら方角を確認していると、慌てた様子のヨサク爺さんが駆け寄って――いや飛んでくる。


『勇者様、チェルシーが見当たりませんのじゃ』

「え?」


 まさか……迷子になって彷徨ってる!?


 あ、ゴーストだからある意味最初から彷徨ってるのか。

お読みいただきありがとうございます。

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