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13:ドラゴンの湯

 夕飯の席に着いたのは、かなり遅い時間になってから。

 俺はソディアの全裸が頭から離れず、ご飯の間も彼女を直視できなかった。

 彼女もきっと、間違って男湯に入ったこと、俺に見られてしまったことが恥ずかしかったのだろう。

 お互い言葉を発しないまま、黙々と食事を口に運ぶだけ。


「さぁ、よく冷えた果汁をどうぞ。温泉は気持ちよかったかい?」


 食堂のおばちゃん。そんな呼び方が似合いそうな女性やってきて、木製のコップを二つ運んできた。

 確かによく冷えたジュースだ。こんな世界でどうやって冷やしているんだろう。


「ここの温泉はねぇ、とぉっても珍しい経緯があるんだよ」


 と、おばさんは聞いてもいないことを話し始める。


「だいたい三百年前ぐらいかねぇ。ある日この村に、南の山から伝説の古代竜がやってきたんだよ」

「南の……それって、まさか」

『儂かのぉ? 確かにここには数度来ておるが……』

「そのドラゴン様がね、当時村だったこのアズの前で足踏みをしてねぇ」


 アブソディラスは何かを思いだそうと腕を組んでいるが、おばさんの話は尚を続く。

 足踏みを繰り返したドラゴンは、次に尻尾で地面を何度も叩いた。

 叩いた地面が割れ――。


「何日かしてね、その割れ目から温泉が湧いたんだよ」

「は?」

「え?」

『なんと!?』


 故にここの温泉は――ドラゴンの湯――と名付けられている。

 そうおばさんは話して厨房へと戻っていった。

 

「ドラゴンの湯……」

「尻尾で温泉を湧かせたの?」

『おほー。儂ってば村の発展に貢献したのかのー』


 あまりのバカバカしさに、脱衣所での一件もすっかりどこへやら。

 それからアブソディラスの馬鹿さ加減について、彼女と盛り上がるのだった。






 その夜、俺は夢を見た。

 その夢のなんと卑猥なことか。


 ソディアの全裸が頭から離れないからだろうか。

 それとも――。


 ――おほーっ。今夜はいい夢を見れそうじゃわい。


 そう言ったアブソディラスの影響なのか、とにかく未経験者にはいろいろときつい夢だった。


 夢の中で秘め事を重ねた相手は、艶のある黒髪がとても綺麗な女の人。

 どこか面影がソディアに似たその女性を、何故か夢の中のは「リアラ」と呼んでいた。


 いや待て。

 なんでリアラさんが俺の夢に出てくる!?

 それとも散々アブソディラスがリアラリアラというから、そのことが頭に残ってて?


「ぁ……」


 リアラさんの吐息が俺の首筋に掛かる。


「ぁ……アブソ……ディラ、ス……」


 ……はぁー!?

 ど、どういうことだよっ。

 アブソディラス!?

 え? じゃあ今の俺、アブソディラスーッ!?


 いやいや、見えている自分の体だって、人間のものだぞ。

 鱗もないし、巨大でもないし……どういうことだ!?


 俺の意思に反して体は常に動く。


 そのまま……俺の意思ではどうにも出来ない不埒な夢は朝まで続いた。


 目を覚まして真っ先に俺はパンツを確認した。

 ……パンツ五枚……買っておいてよかったぜ。

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