ダグラスの願い 2
僕は今日も弟のお世話をしている。
お掃除は完璧!
チリ一つないよ!
ポーションも満タン!
後はお歌を歌ってあげなきゃ。
僕はいつもの姿勢になると心を込めて歌い出す。
いつもはこのまま一心不乱に歌いあげるんだけど、最近はふとした瞬間に、外のことやソルトのこと、それに最近増えた居候のダグラスの話を思い返してしまう。
ダグラスはすっかり元気になったみたい。良くアサギと外に出掛けている。
僕はこの前のことで、すっかりアサギの怒りを買ってしまったので、シュガーに会いに行くことすら禁止されちゃった。
暇をもて余した僕を見かねたのか、たまにダグラスが遊んでくれる。
すんどめ厳守の打ち合いだけど、シロガネや、アサギ以外の人との打ち合いは初めてで凄い新鮮。
はじめのうちは、ダグラスも鉈の受け回しに慣れてなかったみたいだけど、すぐに格上感たっぷりの指導的な打ち合いになった。
もちろんダグラスが格上ね。
熟練の技ってああいうのを言うんだね。
僕たちはどうしてもステータス頼りになっちゃうから、ダグラスと打ち合うのは本当に面白い。
アサギも何故かダメとは言わないので、僕の今の唯一の息抜きとなっている。
今朝もダグラスとの打ち合いをした。
その後アサギとダグラスは外に出掛けている。
扉の開く音がする。
「あっ。アサギ達帰ってきた。」
ちょうど歌い終わった所なので、居間に向かう。
「お帰りなさーい」
「ただいま。問題はなかったか、リリス」
アサギがたずねてくる。
「もちろんー」
ダグラスは担いでいた大きな袋を下ろすと何やら準備をし始めている。
「あれ、なーに?」
「ああ、今日は大量だぞ。」
「取り分はどうする?」
ダグラスがアサギに尋ねている。
「3:7でいいよ。ダグラスのお手柄だしな。」
「もう、何が大量なの?」
僕がせっつくと袋の中を見せてくれる。
中には大量のキノコ肉が入っていた。
「これだけあれば、錬金術用に半分取っておいて、残りは村に持ってくかな。ダグラスはどうする?」
「ああ、俺も自分で食べる分以外は一緒に交換しに村についていく。こればかり食べる訳にもいかんし、保存食もそろそろ心もとないからな。」
二人の話し合いを尻目に僕はまじまじとキノコ肉を観察する。
「ねえねえ、これって一匹のキノコだったの?」
「ああ、そうだぞ。綺麗に巨大化していた。魔力抜きも済んでいるし、明日さっそく行くか。」
少しこちらを向いて答えてくれるアサギだが、すぐにダグラスとの相談に戻る。
「もう!」
僕はつまんなくなり、その場を離れる。
僕が拗ねていると何故かダグラスがやって来た。
「許してやってくれ。久しぶりの大物らしいから、浮かれているんだろう。」
「いきなりだね。ダグラス、モテないでしょ。」
「っぐ。ゲホゲホっ」
ダグラスは何故か噎せている。
「それでダグラスはアサギが言うように、レインホールドが好きなの?」
ついでに僕は気になっていたことを聞いてみる。
「はあー。やっぱり姉妹なんだな。まあ、ちょうどいいから俺の用件を話そう。それをきいて、俺が隊長のことをどう思っているか判断すればいい。」
そうしてダグラスは話し始めた。