輝く大地
「いいか、リリス。大地の上では普通の生き物は長く生きられないんだ」
ダグラスが周囲を警戒しながら話し始める。
僕はふわふわと漂うキラキラした暴走魔力に目を奪われながら答える。
「うん、暴走魔力を取り込んでで変わってしまうんでしょ?」
「そうだ。そして変質した生命も、大多数は短命になる。生き物として歪だからな。逆に、長く生き残っているのは、それだけ暴走魔力に適応した個体だ。スポットの主を除けば、そいつらが一番危険だ。」
今歩いている草むらには、所々、まるでバラのような花が咲いている。ふわふわと暴走魔力がその花弁に吸い込まれては、根本からフワフワと立ち上って来る。それはまるでバラが暴走魔力を呼吸しているようだ。
その様子に目を奪われている僕を呆れたように見ながらダグラスは話し続ける。
「……植物も、暴走魔力に適応した存在だ。何故か大きな変容を見せている物は少ないがな。それでもまるで意思を持ったかのように襲いかかってくる植物もあるから気を付けろよ。後は、ホムンクルスのリリスには関係ないが、地上にある植物は基本的に食べられなくなっているからな」
「そうなんだ。でも、キレイだね……」
僕は目を話せないながらも、足はちゃんと動かしダグラスに追随する。
「それで、主ってなに?」
追い付いた所で先程のダグラスの話で疑問に思った事をきく。
「スポットの主は、そのまま、暴走魔力のたまり場の元凶と言われている存在だ。他のは、基本的には生き物が暴走魔力を取り込んで変質した存在だ。しかし、主は違う。既存の生き物とは似ても似つかない姿をしている、らしい。」
「らしいって?」
「主を見たことある奴なんて、ほんとに極々少数しかいないからな。大体はスポットの奥深くに潜んでいるらしい。」
「ふーん。適応した個体だけ気を付ければいいんだね」
僕がそういった瞬間だった。ダグラスの殺気が一気に膨れ上がる。
つられて僕もダグラスの目線の先を追う。
土が盛り上がって来ている。
「もうひとつ、ある。それは変異の瞬間に立ち会ってしまう場合だ。」
そのダグラスの言葉が終わるのと同時だった。土のなかから、巨大化したミミズが一気に飛び出してきた。