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リリスの旅立ち

 今日は、旅立ちの日。


 僕は、弟に向かって、最後の歌を歌ってあげていた。


「お姉ちゃん、お出かけしてくるからね。絶対戻ってくるからね。」


 白い表面をゆっくりと撫で、最後の別れを済ます。

 玄関に着くと、すっかり旅立ちの支度を終えたダグラスと、こちらを潤んだ瞳で睨むように見てくるアサギの姿が。


「リリス、お別れは済んだの?」


「うん、大丈夫。アサギ、ごめんね。」


「もう、謝るぐらいなら、行くのやめなさいっ。……もう、これ、はい。道具一式。シロガネ姉様の予備よ。大事に使いなさい。使い方は全て教えたからね。ちゃんと覚えているわね?」


「うん。」


「いい、ダグラスの言うことをよく聞くのよ。それと、ダグラスはホムンクルスじゃないから、ちゃんと気遣ってあげないとダメよ。彼らは、暴走魔力の浄化は特にこまめに必要だからね。」


「うん。」


「あと、最低限のマナポーションは濃縮してあるけど、ちゃんと補給作成して、毎日飲むのよ。リリスはめんどくさいとたまにサボるんだから。」


「うん。」


「あと……」


「アサギ」とダグラス。


「……気をつけて、リリス。大事な妹なんだからね。ダグラスも、リリスに何かあったら……」


 とアサギは僕に近づくと、ぎゅっと抱き締めてくる。僕もアサギをぎゅっと抱き締め返す。


「ああ、肝に命じる。さあ、リリス、行こうか。」


 そして僕たちは玄関から外に踏み出す。ゆっくりと洞窟を外に向かって歩き出した。

 その様子をアサギはずっと玄関口から見送っていた。


 ◇◆◇


 洞窟の出口を抜ける。

 そこは僕にとっての二度目の外の世界。相変わらず空気が白く光って見える。

 美しくも、残酷な世界。


 銀糸を織り込まれたような輝くフード付きのマントを取り戻し、身にまとうダグラス。同じような布で、顔をぐるぐるにまくと、目深にフードを被る。


「ダグラス、それも暴走魔力よけなの?」


「ああ、いくら浄化出来るからって浴びる量は少ない方がいいからな。これは特別製の布で出来ていて、暴走魔力を弾くんだ。前に使っていたのはぼろぼろになってしまってな。アサギから、特別に餞別として渡された。」


 最後に薄い包帯みたいなものを目に巻き付けながら答えるダグラス。


「ふーん。特製のマントを贈られたんだ。しかも刺繍入りの。」


「い、いや。特別なことなんてないぞ。必要だからアサギが作ってくれたんだ。それだけだ。」


「世界崩壊前の世界だと、ハンカチとか、布に刺繍をして贈るのって何とも思ってない相手にしないんでしょ?」


「……生き物の気配はない。出発しよう」


 ダグラスにスルーされてしまった。そのまま歩き出すダグラス。


「もう、待ってよ!」と僕もその後ろ姿を追いかけ、再び世界に足を踏み出した。





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