プロローグ
デジャヴを感じることが多かった。ふとしたときに、目の前の友人たちの会話の内容をまるでつい昨日耳にしたかのような、テレビの内容を最近聞いたような、新聞で同じ記事を読んだような、そんな気がすることが多かった。多い、と感じ始めたのはいつだっただろう。小学生の頃、中学生の頃、はたまた高校生の頃だったか、さだかではないが、十代の頃であったはずだ。思い返してみるとあの出来事はデジャブだったとか、この経験はやたら多くした気がする、そんな気もするし、ただの夢やテレビ、新聞などで見聞きしたことをたまたま記憶していて、それを自信の体験に被せるようにして無意識のうちに補正をかけていたのかもしれない。とにかく、感じるのはなぜか午前中が多かった。午後に感じることも少なくはなかったが、やはり午前中が多かったと思う。
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火を見るのが好きだった。小さいころはひもじく、冬は寒さに対して恨みを吐いたこともある。そんなときに、いつも明るく暖かい火を見て思わず心が惹かれていた。
善悪の判断が付き始めた頃であっただろうか、多少は成長をし始めた頃、生活が苦しくなくなった。当時はなぜか分からなかったが、遠い親戚の家が火事で全焼し、その遺産の一部を父親が相続したり、それを資本に仕事の基盤を整え、生活の安定までこぎつけたりだとかいろいろあったらしい。
震災によって火事が発生したときは、自分のことではないのに悲しくなった。強盗の末の放火のニュースを聞いた時は憤りを感じた。いつしか火に感情を移入することが増えていた。暖かい火は好きだ。冷たい意思を持った火はあまり好きじゃない。
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人より力が強かったらしい。らしいというのは、昔のことすぎてよく覚えてないからだ。力自慢、なんてはしたないことはさすがにしたことはなかった、と思う。
力が有り余ってるせいなのか、朝起きるとかけていた布団がベッドから落ちていることが多かった。今となってはちゃんと寝た時とほぼ同じ状態で起きてはいるが。
別にガサツということでもない。男子に混じってドッヂボールくらいはことは両手で数えられない程度にはあるが、他の女子も何人か一緒だった。運動神経のいい女子、ということで誘われていたと思う。運動するのは確かに好きだったが、体育会系というわけでなく、どちらかというと本を読んだり、友達とおしゃべりすることのほうが好きだった。
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空を飛ぶことが夢だった。スズメのように、ハトのように、渡り鳥のように。でも、同じ空を飛ぶとは言っても、飛行機や宇宙船には興味が湧かなかった。気ままに気持ちよく動き回りたい、そんな思いが根底にあったのだろう。
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テレビが好きだった。テレビはいつも到底自分では知りえない知識や情報をもたらしてくれる。それが正しいことばかりでないことはわかっていても、やはり未知に触れるというのはわくわくするものだ。色のついた絵、動画であることも一因にあるだろう。新聞や本よりも、映像で見るほうが面白かった。
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歌手になりたかった。自分の想いを音に乗せてやることができる。ただ話すより、気持ちを伝えることができる。みんなに自分を見てもらえる。気持ちを共有することで一つになれる気がする。みんなと一緒なら、寂しくない。
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ビデオゲームに熱中していた。こんな発想があるのかと子供ながらに感動していた。
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TRPGというものを知った。自分じゃない自分。役割を明確に持った自分。その世界に魅入られた。
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動物が好きだった。
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高いところは怖かった。
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人に指示されるままに動くのは気が乗らなかった。
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色白だった。
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影は不思議だった。
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…。
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……、世界は理不尽だと確信した。