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共通②
「娘よ、いるか?」
おそらく貴族様――たしか牛舎を動かしていた男はナタカリという名で呼んでいた。
「はい!」
きっちりと正座して、頭を下げる。
「顔を上げよ」
「しつれいします」
いわれるがまま、恐る恐る頭を上に持っていく。やっぱり貴族様は苦手。
「麿は屶鳫咲菊矢<なたかりのさくや>――この屋敷の主ということは知っているな」
「はい」
―――農民が貴族様に答えるのは是<はい>しかないのだ。
「なぜお前をこの屋敷につれていったか、話してやろう」
「……はい」
「お前の手に持つ短刀、それはかつてこの国の帝が命を絶ったときにもちいた物だろう」
彼は確証はないのか、曖昧なことをいう。
だけど、なぜそんなものがあの道に落ちていたんだろう。そして、私の手から離れないのはなぜ?