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とある薬師の受難  作者: 散歩道
9/43

月夜明るい真夜中に起こる事とは・・・。

前回の続き、ジンタがまたもやらかすようです・・・。

人外認定されてしまえばいっそ楽かもしれませんね・・・。

「あー眠い・・・。」


寝ぼけつつ辺りを見渡す。

そうだ、キース達と宴会の後里にある空き家を借りて仮眠を取っていたのだ・・・。


「まだ暗いが、良い頃合だな・・・。」


時間にして4時前だろうか、宴会で皆騒ぎすぎたせいか村人は全員寝ているようだ。


「世界樹の場所はたしかここだったはずだな・・・。」


俺の記憶が正しければ里の奥少し小高い丘になっている場所に世界樹があったはずだ・・・。


「うん。あるにはあったが・・・。」


俺の記憶の中にあった世界樹とはかけ離れた姿がそこにあった・・・。


緑の葉が生い茂り、根元からはその全貌の全く見えない巨木があったはずのその場所にあったものは・・・。


「なんとも無残な姿だが、朽ち果てて無いだけまだましか・・・。」


そう、世界樹が根元から少しを残し見るも無残な姿になっていた・・・。

枯れているとしきりに言っていた気がするが、枯れたのには明らかな原因がある。


そう、何者かによって世界樹が切り倒されてしまっていたのだ・・・・。


しかし、それは世界樹ただの人間などには到底出来ない所業・・・。

正に魔王もしくは勇者の力でもなければ無理な話だ・・・。


どちらにせよ、俺の力でなんとかなるかな・・・。


召喚サモン光大精霊アークエンジェル


下位精霊では力が足りないのは目に見えていた為上位精霊を呼び出す事にした。

メイン職業が錬金術師の俺には少し辛いが、そこは数々の装備品の恩恵により失敗する事も無く目の前には天使の姿をした精霊が現れる。


『人の子よ・・・・。我に何用じゃ・・・。』


「あー、突然呼び出してすまないが、少し光を抑えてくれないか?

まだ里の者達も寝ているんで少し眩しいわ。」


『なっ!?突然呼び出しておいてなんたる物の言い様だ!』


「だから、悪かったって言ってるじゃないか・・・。

呼び出し続けるのも結構しんどいんで他の精霊に変わってもらおうか・・・?

なんなら闇とか・・?」


『まっまて!』


そう言うが早いか、光り輝く姿から光が薄れてゆく・・・。


『なんとも精霊を脅す人族とは、世も末じゃ・・・・。』


「別に脅したつもりは毛頭無いぞ?

それを言うなら人間如きに呼び出される大精霊もどうかと思うぞ?」


『なっ!?我を愚弄する気か!!』


「あー、めんどくせぇな。

何でも良いから自分の足元見てみろよ・・・。

俺が魔力の供給を止めると消えるのはお前だぜ?」


『はっ!?世界樹が・・・・。』


「お前ら精霊は普段精霊界に存在してるから現世なんてどうでもいいのかと思う位興味がねぇんだよなぁ・・・。」


『そんな・・・・。

だって、最近誰も我らを呼んでくれないんじゃよ?

昔はしょっちゅう呼ばれて、ありがたがられていたのに・・・・。

最近はたまーに下位の精霊達が呼ばれる位でわれわれなんて・・・。』


あー、しまった地雷踏んだか・・・。

いじけちまったわコレ・・・・。


「だから、気にするなって。今だって俺が呼び出してやってんだよ。

これからだって、またちょくちょく呼んでやるから・・・。」


『本当か!?本当だな!!絶対だぞ???』


「しつこい奴は嫌いだ。」


『うぅぅ。悪かった・・・。』


いかん、本気で泣きそうになってる・・・。


「とりあえず、さっさと済ませるぞ・・・。」


『我は何をすればいい?』


「俺から魔力を吸って世界樹に供給してやってくれ。

この有様じゃロクに魔力の転換すら出来て無いだろうし・・・。」


『そうじゃのぉ。

もう少し遅かったら本当に死んでしまってたかもしれないのぉ。』


マジか!?こんなアホ精霊とじゃれあってっる場合じゃなったか。

急いで鞄から世界樹の枝、エリクサー、植物栄養剤(効果があるかは不明)

等々を取り出す。

そして、自分自身には魔力回復薬を大量に用意する。

何故かと言えばアホ天使が物凄い勢いで俺から魔力を吸い出しているからだ。


「もう少し手加減してくれないと魔力が枯渇するんだが・・・?」


そう言いつつ、世界樹の根元に枝を突き刺す。

そこに栄養剤をかけ、拳大の魔石を次々に並べていく・・・。


『そうは言ってものぉ。お主は結構平気そうじゃが?』


現実問題なんとかなってはいるが、問題がある。

魔力回復薬が死ぬほどマズイのだ・・・。

ゲーム時代は味が無いため湯水の様に飲んではいたが

飲む事すら躊躇しそうな位に不味いんだよコレが・・・。


青汁の苦さを10倍にして青臭さを10倍にそこにニガリを加えたような味といえば解るだろうか。


俺の精神力がガリガリと削られていく音が聞こえてくるようだ。


「なんでも良いから、続けてくれ・・・。」


そう言いながら、永遠とポーションの類をかけていくと刺した世界樹の枝がみるみるうちに大きく太くなっていく。


『人の子よ、世界樹はもう大丈夫だろう・・・。』


「おいおい、まだまだ元の大きさには程遠いぞ?」


『世界樹本人がそう言っておるのじゃ。』


「じゃぁ、なんで魔力の減少が止まらないんだよ!」


『むぅ。ばれてしもうたか・・・・。

こんなに旨い魔力は久々じゃったからのぉ・・・。』


「てめぇ、つまみ食いか!!」


『な、何故それを・・・・。』


「再生を促す位ならあんなに大量に吸わなくても良かったはずだからな・・・。」


『我の役目も終わったようじゃし、さらばじゃ~~~。』


「あ、逃げた!」


作業を始めて2時間程だろうか、日の光が差し始め辺りが明るくなってきた頃

世界樹の大きさも以前までとはいかないもののかなりの大きさまで戻った気がする。


「さて、みんなが起きる前に行くとするか・・・。」


プライベートハウスのルーンはコイツだな・・・・。


「   空間転移《彼の地へと》!! 」


無事にルーンが起動し、吸う瞬の後視界がゆがみ始める。

と、その時だかすかな声が耳に響く。


ア・リ・ガ・・・・ト・・・・・ウ・・・


俺の気のせいかも知れないが、聞いた事の無い優しげな声だった。


そして、視界が元の色を取り戻すとゲーム時代に毎日の様に見ていた我が家が・・・・・。


「なんじゃこりゃーーーーーーー!!!」


そう、目の前にあったのは我が家では無くとてつもなくデカイ城壁だった。

その城壁の置くにはお城の様な物と少しはなれて巨大な教会の様なものが見える。


「おいおい、座標がずれて見当違いの場所にとばされたか・・・・?」


そう思うも一瞬の事、城壁の奥に見覚えのある山があった。

そうだ、サブキャラの育成の為に鉱石の取れる山のすぐ近くに建てた筈だ。

って事は、俺の家は潰されて街の下敷きか・・・・?

そして、財産は消滅で俺は文無しか・・・。


不幸中の幸いか、装備品以外に付いては失ってもいくらでも取り返せるが

アーティファクトやら伝説級の装備に付いてはかなりの痛手だ。



「おう、兄ちゃんゴメンよ!」


おっと、考え事に夢中で往来の邪魔になっていたようだ。

町から流れ出る川沿いに街道になっていて色々な商人らしき物から冒険者風の人々まで様々な人種(エルフやドワーフに獣人種)が入り混じって出入りしている。


キースの里を出たのは朝方だったが座標の関係で此処は少し時間が違い、多分昼頃だろう。


何故だと言うと、門へと続く順番待ちの列に弁当屋が昼飯を売り歩いているからだ。


こういった列はトイレとかの多少の間なら問題ないが、昼飯を食いに行く等長時間になると当然並び直しになる為だ。


「あんちゃん?昼飯はどうだい?」


などと考えていると、足元から声がする。


「ん?弁当屋か?」


そう言いながら下を向くと身なりを言えばお世辞にも綺麗とは言えない男の子とその妹だろうか?

年は10歳弱の少年が声をかけてきた。


「今日の弁当は何かな?」


買って貰えるとは思っていなかったのか、男の子は目を輝かせながら

説明を始めた。


「黒パンにオークの肉と野菜を挟んだものが一つ銅貨3枚です。

水が銅貨5枚にエールは銅貨3枚です。」


ふむ。やはり水は腐りやすい為エールより高めだな。


「よし、じゃぁ三つ貰おうか?水は手持ちがあるから、後ついでにエールを一つ。」


「毎度ありがとうございます。」


さん、ろく、きゅー、指を折りながら枚数を数えている。


「ほら、銀貨一枚と銅貨二枚な。」


「ありがとー。お兄ちゃん!」


男の子にお金を渡そうとすると女の子が代わりに受け取る。

そして、男の子が商品を渡してくる。


「おっと、忘れていたな。今日は一人で来ていたんだった。」


それを聞いた途端二人の顔が曇る。


「いや、金を返せと言う訳じゃないんだ。

このまま持って言っても腐っちまうから余った分を食べてくれないか?」


そう言い、女の子に弁当を二つ手渡す。


「い、いいの?」


弁当と俺を交互に見ながら聞いてくる。


「あぁ、構わないさ。後はコレは水の代金だ。」


そう言って、銀貨を一枚女子に握らせる。


「あんちゃん、太っ腹じゃねぇか。おじさんにも奢ってくれよ。」


「近くに居た、冒険者風の男が声をかけてくる。」


「そうかそうか、てめぇら見たいな傭兵崩れの冒険者は

俺達みたいなスラム出身の冒険者には優しく教育してくれたもんなぁ・・・。」


そう言いながら、俺は手に持っていた杖の先に火球を作り出す。


「ま、魔道師だと!?」


「あ、兄貴不味いですよ・・・。」


「ウチのモンがすまない・・・。

どうか今日の所は俺の顔に免じて許しちゃくれないか?」


「あんたの顔って言われても、俺は今日初めて子の街に来たんだ。

それに、謝るなら後ろの二人に謝るのが筋だろう。

なんだ?今時の冒険者は相手が子供だと下げる頭も持ち合わせてねぇのか?」


少し声を荒げながら睨みつけると、兄貴分らしい奴が口を開く。


「あぁ、そうだな。今回の件は俺の教育が悪かった。

坊主達も悪かったな。

コイツ等もクエスト帰りで腹減らして苛立ってただけなんだ。

弁当の残りを売ってくれるかい?」


いかつい顔をするくせに女の子の前にかがんでお金を手渡す。


「釣りは迷惑料だと思って取っておいてくれ。」


「なんだ、あんたは結構まともなんだな。」


「おいおい、詠唱も無しに火球の魔法を使うような魔道師にケンカを売るほど馬鹿じゃねぇぞ?

俺は、この街を拠点にしているクライムって言うんだ。

また縁があったらよろしくな・・・。」


「あぁ、俺はジンタだ。」


そう言うと、クラインのおっさんは振り向くことなく手を振って手下共と共に去っていった。


「お兄ちゃんありがとう!」


「兄ちゃんのお陰で全部売れたよ!」


「おう!」


そう言うと兄弟は街へと走っていった。

大きな街に入るには、冒険者や住人以外は門に並ぶようです。

次回は門番に捕まらない事を祈りつつ読んで頂ければと思います。

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