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とある薬師の受難  作者: 散歩道
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緑映える水面《みなも》に映るその姿は・・・・。

前回枯れた溜池に水が戻り里の木々も緑を取り戻した。

だが、その喜びの中に叫び声が木霊する。

今度はどんな問題が起こったと言うのか・・・。

「長老様~!!何処においでですか~!!緊急事態です!!至急!至急!」


「なんじゃい、騒々しいのぉ。」


「キースも本当に長老様なんだなぁ・・・。」


「ジンタ殿、ワシは無駄に長生きなだけですよ・・・。」


「そんな事無いもん!長老様は精霊魔法だけじゃなくて

治療魔法だって攻撃魔法だってなんだって使えるんだ!

本当に凄いんだからな!」


ふむ。ゲームの頃は精霊魔法とかいったくくりなんか無く魔法は魔法って扱いだったからなぁ。

現実世界になると適正とかで得手不得手があるんだろうなぁ・・・。


「そうだなぁ、長老は凄いよなぁ・・・。」


「ジンタ殿、何か火急の用みたいなので失礼します。」


「あぁ、そうだったな。俺も行くぞ。俺にも何か出来る事はあるはずだ。」


そう言いつつ、キースの後を追い、水の戻った溜池の方へと走っていく。

すると、そこに居たのは冒険者風のエルフの男女と長老を呼びに来たエルフの男だった。

しかし、冒険者風の男は顔色が悪く女の方に肩を借りてなんとか歩いていると状態だ・・・。


「一体どうしたんじゃ?ガーネット?それに、シモンの様子が・・・。」


女の方はガーネット、それに男はシモンと言う名前か・・・。


「シ、シモンお主腕はどうしたんじゃ!?

お主ともあろう者が一体・・・。

いや、今は少しでも早く傷を塞ぐのが先決じゃな。

無くなってしまった腕は残念じゃがこのままでは命が危ない。

治癒魔法をかけるにもこれ以上体力が落ちると、傷が塞がる前に命がつきてしまうからのぉ。」


え?失った腕が戻らない?治癒魔法かけるだけって・・・。


「おい、キースお前の言っている事の意味がわからんぞ?

治癒魔法をかけるにも、まずポーションでも飲ませて基礎体力を回復してからじゃないと本気で死ぬぞ?

それに傷を塞ぐだけって、ソイツは一生片腕で生きていくしかなくなっちまうだろ?」


「ジンタ殿・・・・。

貴方たがここに来てすぐの里の状況を思い出して頂けますかな?

世界樹所か里中の木々が枯れ、溜池の水すら干からびる今日。


長い年月が経ち、祖先からの知識も大半が魔族との争いで失われてしまったのじゃ。


若い者達が冒険者になっても村の者達が細々と生活して行くのが精一杯なのじゃよ・・・。」


「それは解るが、俺が誰だか忘れたのか?」


「ジンタ殿は最初あった頃は駆け出しの冒険者でした・・・。

その後、冒険者として成功したと報告を頂いたのは今でもしっかりと覚えております・・・。」


「そうだろ。そうだろう・・・。アレ?」


俺って、キースに錬金術師として成功したって話しなかったっけ・・・?


「キ、キースとりあえず、俺に任せろ。」


「一体何をされるのですか?」


オロオロと俺とシモンを交互に見つめるキース。

だがこのまま説明するにもシモンの傷をなおしてやらねぇと

話をしている内に命が危なくなる。


「おい、シモン俺は長老の古くからの知り合いだ。

とりあえず、コイツを飲め。」


そう言いながら、シモンの口に中級ポーションをねじ込む。

本来は上級ポーションかエリクサーが良いのかも知れないが

いきなり効果の高いものを飲ませると、逆にショック症状を引き起こしかねない・・・。


「ジ、ジンタ殿それは一体・・・。」


「あぁ、ただのポーションだ。

とりあえず、失った体力はこれで大半が戻ったはずだな。

次は傷の治療に入るぞ。」


ポーションと言う言葉にキースは目を見開いて固まっているがいちいち反応している時間が無駄な為無視する事にした。


召喚サモン水精霊ウンディーネ!!」


「ノームに続いて、ウンディーネまで・・・。」


「あの人間、ポーションなんて高価な物を出した上に

精霊召喚だと・・・。」


「本当にアイツ人間なのか?」


「俺は魔族だと言われても信じるぞ?」


村のエルフ共が好き勝手に言ってくれてるのが聞こえてくる。

特に最後の奴、俺は顔をしっかり覚えたから後で覚えてろよ・・・。


「みなのもの、静かにせんか!

ジンタ殿は誠にワシの古くからの友人、そして恩人じゃ。

悪く言うものはワシが許さんぞ!」


よし、キースもっと言ってくれても構わないんだからな。


「ウンディーネ、傷口からの出血を止めてそこの溜池の水で傷口を覆っていてくれるか?」


ウンディーネは首を縦に振り快く了承してくれる。


「そうだ、忘れていた。

里の木々が緑を取り戻したとは言え、まだまだお前達には辛いだろ?」


そう言い、ノームに渡したように魔石を三つほど取り出して渡そうとするも

ウンディーネは一つしか受け取らず残りに関しては首を振る。


「そうか、遠慮しなくて良いんだぞ?足りなくなった言ってくれ。」


ウンディーネはコクコクと頷き作業に入る。


「これで、準備に入れるな。」


アイテムバックから、錬金道具を取り出し部位欠損用のポーションを作る準備を始める。


まずは、蒸留水、白龍の鱗、林檎サイズの魔石、マンドレイクの根

そして最後の材料を取り出そうとして手が止まる。

(今これを見えるように取り出すのは絶対にマズイ気がする・・・。)

バックの中で小袋に入れ中身が解らない様にして取り出す。


「ジンタ殿それは一体何に使われるのですか・・・?」


「ん?あぁ、見てれば解るさ。」


生産職に無い者達は材料を見ても検討もつかないだろうが

欠損部位を回復させるポーションは中級クラスの錬金術師なら誰でも作れるような難易度の物だ。

まぁ、作れるとは言うものの材料を集めるとなると特に白龍の鱗なんかは上級クラスの冒険者でもパーティーを組まないと返り討ちに会うレベルだがな。


「危ないかもしれないから少し離れててくれよ?」


調合自体はそんなに難易度が高い訳ではないのだが

どれだけ錬金術を極めても調合成功率は99.9%までしか上がらない。

簡単に言えば0.01%の確立で失敗するのだ。


失敗するだけなら材料のロストで済むのだが、失敗した際に1割の確立で

爆発が起こる。


爆発すれば調合難易度に応じて近くに居る者に対してダメージがあるのだ。

俺は、問題無いレベルだがただの村人であるキース達に関しては死にかねないダメージとなる為離れているのが一番の得策なのである。


「    調合開始スタート!   」


開始の合図と共に素材、錬金道具が光り始めやがて光が収まると

そこには二本のガラス瓶入りのポーションと錬金道具が残る。


「ぉ?今回は大成功かな?品質に関しては普通だが一個分の材料で

余分に出来たな。」


「こ、これは・・・・。

ジンタ殿は冒険者でありながら錬金術師になられたのですか?」


「あぁ、それは後で説明するよ。」


キースに適当に返事をしながら、ウンディーネが傷を覆ってくれている水球に近づきその水球にポーションを混ぜる。


「少しグロイかもしれないから子供達は見ないほうが良いかもしれないぞ?

後、シモン少し痛いかもしれないが我慢しろよ?」


切れた腕があれば痛みも少ないのだが、生やすとなるとそれ相応の痛みを伴う。


「ぐあぁぁぁぁっぁあああああぁぁぁ。」


「ぉお。始まった始まった。

何度見ても気持ちの良い光景じゃないが、隻腕になるよりましだろう。」


水球の中の傷口から肉が盛り上がり始め徐々に腕の形になっていく。

腕が戻るにつれ水球も徐々に小さくなる。

そして腕が元に戻った頃には水球もなくなり、痛みで肩口をい押さえてうずくまるシモンがのこされるだけであった。


「よし、ウンディーネお前のお陰で無事に終わったよ。ありがとうな。」


そう言うと、ウンディーネは嬉しそうに微笑み消えていった。


「う、腕が生えてきた・・・。」


「なんだあの人間。」


「おい、白龍の鱗なんてアレだけでも村の一年分の生活がまかなえるぞ・・・。」


「アイツ魔族だ。俺は絶対にそう思う。」


あれ?白龍の鱗なんて生産職以外じゃ見向きもしないゴミじゃなかったか?

だって、その上の千年龍やら古代龍の鱗の方が武器や防具にした際のエンチャントや強さも段違いに変わってくるしなぁ・・・。

それに、最後のアイツまた俺の事魔族って言ったぞ?

どんだけ魔族好きなんだ・・・。



「ジ、ジンタ殿。シモンの傷を治して頂いただけでなく

欠損してしまった腕の再生までしていただいて誠に申し上げにくいのですが・・・。」


「ん?どうしたキース?」


「その・・・。我が里にはジンタ殿に支払える対価が無いのです・・・。」


「対価?何故だ?」


「何故と言われましても、今や欠損部位を治す様なポーションなぞ作り出せるものは皆無でして、ダンジョンから稀に手に入るものは王族の為に

保管されるもの。

そんな高価な物に対価が必要なのは当たり前の事では?」


「ふむ。だがなキース?

材料は俺の手持ちから出した。そして、作ったのは俺だ。」


「えぇ、それはもちろん。」


「そして、ここにはそのポーションが一つあるぞ?」


「えぇ、ですから先程二個出来たと・・・。」


「俺はそんな事言った記憶は無いが?

材料一個分で、一個の欠損部位回復用のポーションが出来た。

他に何か説明が必要か・・・?」


「「「「「え!?」」」」」


「ジ、ジンタ殿それは・・・。」


「おいおい、キース。年を取りすぎてボケたか?」


「我らエルフの里の者末代までこのご恩忘れる事は無いと神に誓います。

良いか、皆の者決して忘れる出ないぞ!!」


「ジ、ジンタ・・・。」


「ぉ?坊主やっと名前を呼んでくれたか?」


「父ちゃんを助けてくれてありがとう!

俺が大人になったらジンタの嫁さんになってやっても良いぞ!」


「へ?嫁?お前何言ってんだ・・・?」


「こら!アヤメ!!ジンタ殿に失礼じゃろうが!」


「ええええぇぇぇぇぇ!」


「どうかなさいましたかな?」


「なんだよ!俺が女じゃおかしいって言いたいのか!」


「わ、悪い・・・・。本気で坊主だと思って・・・・。」


ドカッバキッ!!!


「ぐぇぇ・・・。」


思いっきり蹴りを食らった・・・。

こればかりは俺の自業自得だな・・・。


しかし、欠損部位回復用のポーションですらこの状況か。

アレに関しては夜中にこっそりやってそのまま里を出るとするか・・・。


さぁ、坊主坊主と言っていた相手が実は女の子でしたと・・・。

今回もやらかしたジンタですがまだまだ自重知らずの行動は止まらない模様。

今度は何をすることやら・・・・。


次回を楽しみにしていただければと・・・。

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