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とある薬師の受難  作者: 散歩道
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そして、あっと言う間に時は流れる。

「ほらほら、後ろがお留守ですよ?」


「ひぃぃぃーーーー!!!」


薄暗い森の中懸命に走る人影。声はすれど見える影は一つ。


時折キラリと何かが光る。


「余所見をしてるとすぐに死にますよ?」


「余所見も何も真っ暗でほとんど見えないじゃないですかーー!」


「貴方は頭の後ろにも目が付いているのですか?目で見えるものだけが全てではありませんよ?」


「目で見なければ何で見るんですかー!無理無理無理!しぬーーーー。」


「おやおや、無理と言う割にはお喋りをする元気がまだまだあるじゃないですか。


とりあえず、後1昼夜は行けそうですね。血反吐を吐いても頑張りましょうね。

何せ期限は三ヶ月しか無いのですから。」


「三ヶ月ってまだ二週間しか経ってないじゃないですかー。」


「えぇ、だから残り二ヵ月半はココで生活するんですよ?俗世に漬かり過ぎて鈍った貴方を鍛えて差し上げます。」


「ひぃぃぃぃ!!無理です!無理です!

ギルドマスターはもう退任するので家に帰らせてくださいーーー!!」


「この場から逃げるのは簡単ですが、このまま帰れば、我が主に殺されますよ?」


「どちらにせよ地獄じゃないですか!?」


「えぇ、生きるも地獄戻っても地獄どちらも地獄ならもう少し頑張りましょうね?」


「ひぃぃぃーーーー!」


悲鳴の木霊する森の中。しばらくの間冒険者や商人達からは森で姿の見えない魔物だとか死んだ冒険者の魂だとか色々な噂が経つのであった。



場所は変わって街の中。


「貴方達はこの程度の計算すらまともに出来ないとはウチの子達を見習って欲しいものですね?」


そこには、ギルドハウスの酒場で机を囲むおっさん達と子供達。


次々に子供達が問題を解く中おっさん連中は誰一人席を立つどころか頭に手を置き全く進んでいない。


進んでいないどころか解き終わった子供達に勉強を見てもらう始末。


「貴方達は良くソレで冒険者が務まりましたね。日々の生活費の計算から、ギルドのクエスト報酬。

必要経費の計算から仲間への分配など今までどうしていたかと頭が痛くなるくらい切実な問題ですね。」


「そして、ギルドの職員の方々も深刻ですよ?

簡単な計算は出来ても少し複雑になるだけでどうしてそんなに時間がかかるのですか?

そんな計算ばかりしているからギルドの受付に毎度長蛇の列が出来るのですよ?」


メイドにこってり絞られ、目の前では10歳満たない子供達がどんどん難しい問題を解く中

大人達は子供達の数倍の時間がかかっても半分も終わっていない。


「子供達以外は全て最初からやり直しですからね?


今渡している教材は最終試験に合格しない場合すべて買い取って頂く事になりますのでご注意下さい。


まぁ、金額にして金貨50枚程の破格のお値段ですからお気になさらずに・・・。」


メイドがさらりと言う金額についてだがジンタの城のメイド達については金銭感覚は既に崩壊済み。

それに伴い子供達も一部年齢が上の者達は城にある物の目録作りのバイトで週に金貨二枚という報酬を得ている為準崩壊済みといったところであろう。


子供の給料は基本的に月に銅貨10枚程度。週で金貨2枚と聞けば大人ですら飛びつく高待遇。


尚且つ就業時間は朝10時から夕方4時までの6時間(昼食休憩1h含む。)そして週休二日制。


この世界で通常の雇用形態は日が昇ってから日が落ちるまで、基本休みなどは無いのが普通である。


しかしながら城の待遇については家族にすら緘口令が敷かれている。


単純に他に情報を漏らす事の無いようにとの配慮だが、話してもまずは信じて貰えないだろう。


そして、その金額を聞いたギルド職員、冒険者共が総じて今まで以上に必死に勉強を始めたのは言うまでも無い。


職員ですら月の給料は金貨10枚程度。冒険者に関してはまともなクエストに行かない限り基本的に無収入のいわゆるニートが基本である。


それがいきなり金貨50枚の借金を背負わされれば運が良くて奴隷落ち。最悪犯罪奴隷からの鉱山送りとなるだろう。

犯罪と言うのも、支払い能力が無いのに借金を作ったとある意味詐欺的な扱いだ。


ギルドでのお勉強のお話はココまでで一旦城の方へと目を向ける事とする。



「兄ちゃん、この並び方に何か意味があんのかよ?」


「むしろ、どんな意味があるか自分で考えてみろ。」


と言っても至極単純。前衛二人に中衛一人と後衛一人に遊撃一人だの。5人組みで普通に並べているだけなのだが子供達にはイマイチ理解できていない様子である。


そこで登場したのが、ジンタが暇つぶしに作った将棋モドキだ。


「いいか、お前とお前の役割は簡単に言えば壁役だ。

後ろの二人が魔法などで補助をする時間を稼ぎつつ敵の戦力を削るのが目的だ。」


「領主の兄ちゃん?俺は一人少し離れてるけど休憩してれば良いのか?」


「馬鹿だな本当に・・・。お前が一番の要なんだよ。少し離れているからこそ全体が見えるだろ?


全体が見えるって事は戦況が見えるって事だ。

敵の数が多すぎて前衛の二人が抑え切れそうに無ければ適当に敵を間引いたりふたりから引き剥がして時間を稼ぐのがお前の役目だ。


さすがの若さと言うべきか、数度説明するだけでスポンジが水を吸うかの様に知識を吸い込んでいく子供達。


手ごたえを感じるジンタは三ヶ月あれば十分な仕上げが出来る事を確信するが子供達には基本説教するばかり。褒めて伸ばす気はサラサラ無いらしい。


口で叱り、それでも出来なければ実践し真似をさせる。ひたすら同じ行動を反復練習させる。


本人達はどんな効果があるのかも知らされる事無く朝から晩まで永延と同じ動作。

終わったと思えば違う型を永延繰り返す又その繰り返しであった。


時折ジンタは城から出て来ない日もあるが子供達には前日と同じ事をさせるようにメイドを監視役に置いたりと、目を離す事はなかった。


三者三様それぞれが同じ期日へ向かい行動する中平穏を破る気配もまた色濃くなってくるのであった・・・。



それぞれの修行風景を書かせて頂きましたが次回より波乱が起きそうな予感がします。


次話も時間が出来次第上げていきますのでお待ち頂ければ幸いです。

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