予期せぬ来訪者。
前回の続き、見慣れぬ人影、セバスも特に触れぬまま晩餐は進むが
この後も波乱が巻き起こるのであった。
続きをお楽しみください。
セバスに促され、地下にある食堂(ゲーム時代は会議&雑談用のスペースとして使用していた。)
そこには、様々な年齢の人々がいた。老人から子供そしてその親であろう大人達。
セバスに言われるまま入って来たものの、それらの人々からの視線が俺に集中する。
食事中だったのが一気に静まり返り、みな食事の手をとめてしまった・・・。
あれ?俺マジでKYじゃね?なんて思いつつも一番奥の席に目をやるとそこには満面の笑みを称えた
黒棺が座っていた。
あぁ、あそこの横に座れというわけか・・・。
「み・・・」
みなさん食事を続けてくれと言おうとした所でセバスに止められる。
そのまま黙って席に座れと促されて黙って座る。
あれ?俺こいつらのゴシュジンだよね?
なんか、俺の立場弱くない?
なんか泣きそうになる。
小さくなりながら椅子に座っていると、俺の横にセバスが立ち座っていた黒棺も同じく立ち上がる。
そして、俺も席を立とうとすると背後に居たにゃーがソレを止める。
他の人々の視線が一気に集まる。
そこでセバスの口が開く。
「この城の主、我々の主人であるジンタ様が先程長い長い旅より無事に帰還なされた!」
「魔物の軍団はゴシュジンがけちらしたにゃー!」
「汚れ一つ無く怪我一つ無く、国すら滅ぼされる脅威より」
「「「無事に帰還なされた!!」」」
ナニコレ!顔から火が出そう、おうちかえりたい・・・( ノД`)
人々達が一斉に立ち上がり叫び声と割れんばかりの拍手が巻き起こる。
そこでセバスから小声で立って挨拶する様に言われる。
なに?挨拶なんて何も考えないんだが?
なんて拷問なのコレ?
「あー、長い事留守にして申し訳ない。」
声を出すと、皆一斉に俺を見る。
ふと気が付くと、みんなの顔は銀髪、金髪、赤毛など黒髪が一人も居ない。
目も青だったり緑だったり様々だが黒目は見える範囲には居ない。
あれ?人種違うの?なんて思うと余計に恥ずかしさがこみ上げる。
「事情は良くわからないが、今夜は存分に食べてゆっくり休んでくれて構わない。」
そこまで言い終えるとセバスが一礼をし皆を席に座るように促す。
意味のわからない事だらけだが、後で、セバスに説明させれば良いかと思い
空腹に負け、食事を始める。
横に黒棺、左右にはセバスとにゃーが座る。
俺のところには色々な人々が酒を注ぎに来る。
俺、何したの?って位良くわからない状況になるもみんなが喜んでるから深くは詮索しない方が良いのかとも思う。
でも、部屋の隅っこに立ってる人は誰かな?
食事をする訳でも無く、給仕をする訳でもない。
まぁ、セバスも触れないから特に問題は無いのかと思いながら晩餐は遅くまで続いた。
晩餐も終わり、自室に戻ると、セバスから今回の事の顛末を聞き、あの大勢の人々が近くの開拓村の住人である事が解った。
セバスからすれば俺の不在の間に勝手に領民を作りあまつさえ主不在の城へと人々を入れた事を
咎められると思っていたのだろう。
ふと気が付くと、セバスの背後に又先程の食堂に居た知らない人影があった。
セバスに無言で促すも解らない様だ。
「魔法解除!!」
「!?」
先程まで居た人影が一回りどころか二回りほど小さくなり、そこには少女というより幼女が愕いた顔で立っていた。
「さて、認識阻害まで使って何をしようとしていたのか話してもらおうか?」
そう幼女に声をかけると、逃げようとする幼女。
セバスはと言うと、人化を解き本来の姿に戻り幼女の前に立つ。
幼女自身、セバスの戦闘能力を見誤っていたようだ。
人化の術。人型になれる稀有な魔法であるものの本来の種族的な能力含め
持ちうる能力が制限され本来の2割ほどにまで落ちるのであった。
例え二割程度でも、セバス達の能力を考えれば余程の相手でなければ十分対処できるはずなのだが
そのセバスが気が付かないと言う事は相応の力を持った相手だという事だ。
「くっ、わらわに触るでない!48代魔王なるぞ!
低俗な魔族や人間風情が簡単に触れて良い存在ではないのじゃ!」
「ほー!これはこれは、魔王様がコソ泥の真似事ですかな?」
セバス、かなり悪者よりの発言!
「くっ!我は家臣の盗まれた大切なものを取り返しに来ただけじゃ!」
「しかし、魔王って言う割にはちんまりしてるなぁ。」
「キッキサマ!わらわに向かって小さいっていうなや!
そう言うお前だって小さいではないか!
わらわだって好き好んでこの姿をしているわけではないわ!」
「ほほ~。確かに人化の状態のセバスを上回る時点でかなりの強者だってのは解るが
ソレを加味しても今のセバスの足元にも及ばない相手が魔王様だとはなぁ・・・。」
「くっ、わらわだって死者の杖、闇の衣、狂者の鎧さえあれば本来の姿が保てるのじゃ!」
「なら装備すればいいじゃん。いくらでも待ってやるぞ?」
「装備さえあれば、そうびさえ・・・・。」
「なんだ?なくしたのか?貸してやろうか?」
「馬鹿な事を!魔王の究極の装備がそこらにころがってる訳がないじゃろう!」
ゴトリと音を立てて、俺の足元に髑髏を鷲掴みにした杖、ローブと言うより闇と言う方がしっくり来るローブ。最後に耳を近づけると断末魔が絶えず聞こえて来る鎧が転がる。
「な、何故キサマがソレを持っておる!」
装備に飛びつこうとした所でセバスに首筋をつかまれ宙吊りになる。
「なんじゃ!はなせ!はなすのじゃ!」
「先に言っておくが、貨してやるだけだぞ?」
「何を言うか、ソレは元々我々魔王の装備のはずじゃ!」
「知ってるさ。倒して手に入れたんだからなぁ。」
「き、キサマ如きが我に勝てるわけが無かろう!」
「コレをみてまだそのセリフが言えるかな?」
俺は装備を変更していく。
死王の腕、常闇のローブ、凶者の鎧、そして、顔にはイベントで手に入れた初代魔王(ベータテスト時)のデスマスク。
魔王装備を魔改造した対魔王様の装備だ。
闇属性を吸収、デバフ反射などなど魔王の攻撃を悉く無効化するある意味魔王が泣いて逃げ出す装備だ。
「なぜじゃーーーー!
たかが人間如きが初代様のーーー!
ありえぬ!ありえぬ!ありえぬのじゃーーーー!」
48代目が発狂せんばかりの金切り声を上げあれこれ喚き散らしている。
すると、どうした事か初代のデスマスクを付けた途端頭の中にしわがれた声が響く。
『人の子よ・・・・。人の子よ・・・。ワシの声が聞こえるか?』
頭に響くその声に聞き覚えは無く、俺の意識はそこで一旦途切れるのであった・・・。
予期せぬ来訪者はなんとも現在の魔王様らしいです。
しかし、事情があり本来の力が出せないとの事。
ここでもジンタのいぢわる発動です。
次回お楽しみ下さい。