やっとの思いで帰宅。やっぱり我が家でも人?騒動。
日も落ちかけ、薄暗くなった夕暮れ時ジンタは泉の側にある城へと目前まで迫っていた。
「あれだけ離れていたのにもう目の前まで来たな。
こうして、近くまで来るとどう見ても俺の家だよな・・・。」
これまで見てきたこの世界の建物とは似ても似つかぬ外観。
石造りの城壁に囲まれた途轍もなく巨大な城。
小さな村で在れば二つ三つは入りそうな大きさだ。
それもその筈、ジンタはゲーム時代のプレイヤーハウスでも最大の大きさの物を所持していた。
ジンタ一人ではなく、ギルドメンバー達との共同のギルドショップも営んでおり城壁部分までは
一般のプレイヤー達も入る事が出来るように設定されており、思い思いの商品をそれぞれ
商品販売用のNPCを並べ販売していた。
全盛期の頃は、商品を補充しても補充が間に合わない位の大盛況具合。
それもその筈、ジンタ達の様なプレイヤーからすればゴミの様な装備でも、中堅クラスの冒険者であれば最終装備までの繋ぎには十分するぎる性能の装備から、装備の改造修復まで行える。
その上、生産活動を行う者達にとっても情報交換の場であったり不足している物を過剰分の素材と
物々交換したりと絶えず人が出入りしていた物だ。
「しかし、ゲーム時代に見ていた頃よりなんか大きく感じるなぁコレ・・・。」
リアル感が増した性か、10数メートルあろう城壁はかなりのものだった。
木製であるもののその両開きの城門も人の力では到底開きそうにないような佇まいだった。
城門に触れようとした所で、突然見慣れたポップアップメニューが開く。
『状態:接収勧告 家屋の強制撤去まで*****』
『プレイヤー名:ジンタ 所有権を確認しました。接収勧告状態解除します。』
「え!?はっ!?マジで!!!!」
メニューを見た瞬間ジンタの表情は驚愕に染まる。
それもその筈、接収勧告とは長期間のプレイヤーの訪問暦が無いか
アカウントの料金未払いの状態が続くと家屋が運家により接収→撤去となる。
驚き固まったままのジンタの目の前にあった我が家が一瞬にして光に包まれる。
しかし、その光もすぐに収まり元の城に戻る。
元に戻ると言うのは少し語弊がある。
城壁に絡みついた蔦類、所々欠けていたり汚れていた城壁などが汚れる以前の状態に戻ったのだ。
「う~ん。へんな所でゲームのシステムが生きてるなぁ。
現実なのかゲームなのか本当にわからなくなってきたなぁ。」
怪我をすれば当然痛みもある、腹も減る。匂いも味も本物のように感じる。
現実なのに、ゲームの様な仕様もある。正にファンタジーと言ったところであろうか。
などと考えて居ると、突如首筋にチリチリとした感覚を覚える。
「防御障壁多重展開!!」
咄嗟に無詠唱により簡易防御魔法を多重に展開するも次の瞬間から障壁の破壊が始まる。
「氷壁!石壁!風障壁!」
次々に防御魔法を展開し続ける。属性持ちに関しては軽減率は高いもののディレイが長い為
各属性+無属性を織り交ぜ展開する。
マジックスクロール含めての高速展開。通常の魔道師であれば一枚目のシールドすら詠唱の半分も行かない短時間の間に恐ろしい数の魔法による壁が出来る。
だがコレでも、ボスクラスの攻撃だった場合は余裕で貫通される。
次にジンタの取った行動は魔道師タイプにはあるまじき行動だ。
おもむろに背後に手を伸ばすと障壁を破壊し続けるソレをおもむろに掴んで放り投げるのであった。
その瞬間情け無い声が聞こえる。
「にゃにゃにゃにゃぁぁぁぁぁぁ~~。」
弧を描き飛んでいくソレは、重力に負け落ちる寸前くるりと回り、その後空を蹴り戻って来た。
「にゃん!ゴシュジンなのにゃーーーーー!」
「ほう、この駄猫は主人の顔を忘れて攻撃してきたのか・・・・。」
「ちっちがうにゃ!にゃーのゴシュジンならあれしきの攻撃防げて当然なのにゃ!」
「にしてはかなりの威力だった気がするのは気のせいか?あれだけ出した障壁も残り一枚だぞ?」
「ゴシュジン様が居なくなってから、にゃーも頑張って修行したのにゃ!」
どうやら真面目に修行したから褒めてくれと全力で攻撃してきたらしい。
腹を向け撫でてくれと言わんばかりのにゃーに怒る気もなくなり、
仕方無しに撫でていると背後から突然声をかけられる。
「主どの、今回は長旅でございましたな・・・。」
「あぁ、セバスか。お前はいつも気配を消して背後に立つがどうにかならないのか?」
「いえいえ、我が主ともあろう者がこの程度の事で気が付かないとは思えませぬなぁ。」
「そう思うなら、何故にゃーを止めないんだ?」
「ソレはあれでございます。以前より主殿が仰っていたではありませんか。
『あたらなければどうという事は無い』まさにソレですよ。」
カラカラと笑うセバスにさらに毒気を抜かれてしまう。
「それはそうと、黒棺は元気か?」
「はい、今慌てて身支度を整えております。」
「そ、そうか・・・。」
「そう言えば、ゴシュジンちっちゃくなったかにゃ?」
「小さくなったというか、なんと言うか・・・。」
「そうですねぇ、強さに関しては以前より底が見えなくなったのは間違いないのですが
記憶しているお姿より若干若返っているようなきがします。」
「やっぱりセバスもそう思うか・・・・。」
ここまで普通に喋ってきたが、セバスやにゃーはここまで流暢に会話が成り立つ相手ではなかった。
なにか話しかけても「ハイ」「ワカリマセン」など単調な答えが返ってくるのみ。
表情なんてNPCどころかプレイヤーにも無く、喜怒哀楽はもっぱら絵文字で表現していたものだ。
「セバスとにゃーは以前の事を覚えているか?」
「にゃーはよくわかんにゃい!」
「以前と言われるとどの辺りまでかはわかりませぬが、主殿と行動を共にするようになった頃からの事であればほぼ記憶しております。」
「ん、そうか。ありがとう。」
「さぁ、主殿晩餐の用意も済んでおりますので中へどうぞ。」
「晩餐?突然帰ってきたのに、みんなの分は大丈夫なのか?」
「えぇ、すこし事情がありましてお客様がいらっしゃっているのですよ。」
少し困った様な表情を見せるセバスにこれ以上の詮索は無用と感じ、促されるまま城の中へと向かう。
先日の活動報告で初めて応援コメントをいただけました!
嬉しさで二度見三度見は当たり前、四捨五入で40歳のおっさんが無駄にニヤケていました。
今後ともよろしくお願いします!