大暴れしたその後には・・・。
「さてと、粗方素材の回収も済んだことだし目的地に行くとするか。」
素材と言っても下位の魔物の素材は粗方消し飛び魔石に関しても砕けている。
しかし、劣化龍やオーガクラスの魔物になればそれなりに使える物もある。
目的地のプレイヤーハウスと思われる城へと向かおうとした所でふと目に付いたモノがあった・・・。
「あれ?まだ生きてるヤツが居るじゃないか。」
見た目は人型ではあるものの、その額には一対の山羊の様な捻れたツノがあり肌の色も浅黒くあからさまにヒト族とは思えない。
「生きているからって、今更トドメを刺すのもどうかなぁ・・・。
まぁ、そこそこいい素材になりそうな角だけでも頂いていくか。」
そう言いながら、おもむろに剝ぎ取り用のナイフで角を切り取ろうとすると
甲高い音とともに弾かれる。
「やっぱり、魔族の象徴だけに、無駄に硬いな。
切れ味が良すぎて鞘なしになっちまったアレが役に立つな。」
そう言いつつ、バックから剥き身の短剣を取り出し角に刃を当てると今度は抵抗も無く、角が落ちる。
角を切り終えた後で回復薬を振りかけるとその場を後にするジンタであった。
「このナイフ切れ味は良いんだけど、他はサッパリなのが玉に傷なんだよなぁ。
命中補正はマイナスの最大値。
ダメージ幅は1~100を基本値とする為安定性はゼロ。
装備品としての耐久度は一時間も使えば再起不能になる位の脆さ。
切れ味のみを追求したがために剥ぎ取りナイフ位しか使い道が無く、鞘を作ろうにも
鞘に収めた瞬間から鞘と短剣両方の耐久度が減少し始め勝手に自壊を始める始末。
なんでこうなったかなぁ・・・。」
自重を知らない行動を取っている事に全く持って気付かないジンタではあるが
それが数々のチートクラスの装備品を作り出すのであった。
万の失敗をしようと最終的に目的の物が出来ればよしと言う楽天家な性格もそソレに拍車をかけるのであった。
必要な素材があれば買い漁り、それでも足りなければ寝食を削りひたすら狩り続ける。
仕事すら辞めて没頭しそうにもなったのだが生活の為には無職になる事が出来ず
仕事以外の削れる時間は全て削りゲームに当てていたのだった。
暴走して作り出した物の中には、恐ろしい威力の攻撃を繰り出す事の出来る剣だが
その代わりに使ったが最後振り下ろした腕もろとも敵を葬り去る諸刃の剣。
(欠損部位に関しては時間的なペナルティはあるものの回復可能だった為
ある意味ネタ的なアイテムとしては使う事が出来た。
しかしながら、素材の希少度等を考慮するとレアドロップでもない限り間違いなく赤字になる
ネタ武器ではあった。)
魔力消費はピカイチ、効果範囲は視線の通る範囲全て、しかしとてつもない音と光を発するだけの花火を打ち出すプレイヤーにしか効果の無い様な魔法しか使えなくなる。
デメリットはそれだけに収まらず握っている間はどれだけブーストしようと魔力の回復しなくなる杖。
ネタにしかならないが、見た事がある生物ならどんな種族でも変身が出来る指輪。
しかし、変わるのは見た目のみで翼があっても空は飛べず、水生生物であれば泳ぎが上手くなるなんて効果はモチロン無い。
どんな攻撃でも通さないものの、重すぎて運ぶ事すら困難な盾などetc・・・。
上げれば切が無いほどの失敗作を乗り越え伝説とまで言われた数々の装備品が生まれたのも
諦める事の知らない彼だからであろう。
普通の装備品を作るだけなら最上級の装備品が作れるであろう腕前。
彼の名言は、「普通の装備で面白いの?それじゃ、生産なんてスキル必要ないじゃん。」だった。
通常の装備でよければ店買い。レアはドロップオンリー。ソレの何処が面白いのかと言うのが彼の口癖だった。
例え、確率がほとんどゼロに近くてもゼロでなければいつかは成功する。
数値が高ければ高いほど成功率や失敗時の素材のロストの確率は跳ね上がるものの、確率がいくら下がったとしても、成功率は0にならなかったのは運営のミスなのか悪意なのかは今となっては誰もわからない。
しかし、自重知らずの彼であっても素材が二度と手に入らないようなものの場合のみはギリギリの成功率の見極めと妥協でアーティファクトクラスの装備品に留めるのであった。
(しかし、100%成功の範囲は当然論外。全プレイヤー参加型イベントの商品でサーバーに一つしかない素材を入手後5分でロストさせたのは完全にネタにしかならない。)
「おっと、素材の回収に集中してたらもう、夕暮れじゃないか。
急がないと日が暮れて野宿になるなこりゃ。」
そう、目的の城が自分のプレイヤーハウスなら問題ないのだが、見ず知らずの人々の生活する
城だった場合、夜遅くに言っても取り合っては貰えず近くには村も無い為当然野宿となる。
そうならない為にも日が暮れて暗くなる前に急ぐ必要があった。
「そういえば、アレがあるのを忘れてたな。」
ごそごそとポケットの中を漁り始めると、その手には一つのフィギュアが握られていた。
おもむろに、そのフィギュアを握ると次の瞬間宙に放り投げた。
当然の様にフィギュアは宙を舞い、地面に落ちるのかと思った瞬間、
一瞬明るく輝くと次の瞬間には栗毛の馬に変わっていた。
「なんで、こんなに便利な物を忘れてたかなー。
最初から思い出してれば馬車なんて探さずにここまで来れたんじゃん。」
栗毛の馬と言っても見た目は馬だがコレは生物ではなく、プレイヤーの移動用の道具である。
その種類は、馬、トカゲ、ダチョウの様な鳥、などなど色々な種類があるものの
乗り物としてしか機能せず戦闘などには使用出来ないが制限も特に無く
便利アイテムの一つであった。
颯爽と乗ると目的の城まで駆け始めるジンタ。日は大分傾いてはいるものの夕暮れまでには十分間に合う速度だ。
血生臭い戦場を後にするのであった・・・。
前回より少し時間が空いてしまい申し訳ありませんでした。
時間がとれ次第次回作も上げていきますので、気長にお待ち頂ければありがたいと思います。
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今後ともよろしくおねがいします。