表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
とある薬師の受難  作者: 散歩道
22/43

~~閑話~~食事の時間です。

透き通る様な白さの大きな大きな長方形のテーブルが幾つも並び

窓がないのに真昼のような明るさを作り出す数々の照明。


テーブルには庶民では見た事の無い様な様々な料理が並び

何処かの王家の晩餐会の準備でもするかの様に十数名のメイド達が休む事無く

洗練された動きで食事や飲み物などを並べている。


3メートルは優に超える大きな木製の両開きの扉がゆっくりと開いてゆく。


開いた扉の先に居た者達は、その場には本来居るはずの無い

着の身着のまま、湯浴みこそ済ませてはいるもののボロと言っても過言ではない格好の者達


そして、格好こそまともなのだが何故か一人だけにゃーに襟首を掴まれて引きずられてきている者が約一名。


セバスに先導され入ってきた。


「さぁ、特に場所の指定はありませんからお好きな席へどうぞ。」


セバスに促されるも、村人達は椅子に座ろうとせずにテーブルの前の床に座り始める。

さすがのセバスもポーカーフェイスが崩れ、額に青筋が浮かぶ。


「貴方達の耳は飾りなのですか?席に座りなさいと言ったはずですよ?」


声のトーンが下がり若干の殺気が混じる。


「も、申し訳ありません!ただちに・・・!!」


村長の男が上座から一番遠い席に座るとその周囲に村人達が固まって座る。


上座の手前の席にはにゃーが座りその横に引きずってきた男を半ば無理やり座らせる。


「貴方達は馬鹿なのですか?今座ってる場所の何処に食事があると言うのですか?」


そう、食事は上座側にしか用意されておらず、下座側には真新しい器やらナイフにフォークなど

食器類が並べられているのみであった。


「これでは埒があきませんね。メイド達村人達を席に案内しなさい。」


セバスがそう言い放つと、何処からとも無く増員のメイドが現れ村人達を上座側に座りなおさせる。


それぞれの前に暖かな食事が運ばれ、水瓶に酒瓶などが並べられていく。


「貴方達、いいですか?如何に招いたのが私だとは言え、此処は我が主の自宅。

言わば、貴方達は我が主のお客様なのです。

そんな貴方達に失礼があれば、主が戻った際に我々は主に見せる面がありません。」


厳しくも優しさの篭った声。

セバスにとっては、近くの村人と言うだけの話なのだが

招いてしまった以上は来賓として扱うようだ。


「先に言っておきますが、この食事は貴方達の為に用意された物です。

遠慮して食べなければ処分するだけですので、ご注意下さい。」


豪華な食事に圧倒され手を付ける素振りを見せない村人達にセバスは釘を刺す。


その言葉に村長は何か言いかけた口を閉じる。


「それでは、みなさん冷めないうちにお召し上がり下さい。

足りないものはメイドに声をかければ用意させます。」


言葉短くセバスがそう言うと、恐る恐るだが、村人達は食事を始める。

大人達は緊張のあまりナイフやフォークを落とし、それを拾おうとしてメイドに代わりを差し出され

右往左往などして居るものの、子供達は手づかみで思い思いに食べている様は見ていて微笑ましい物だとセバスは思う。


「さて、貴女には聞かねばならない事があるのは解っていますね?」


そう言うセバスの向かいには当然にゃーが居た。


「にゃ?にゃんのことかにゃ?」


目を泳がせながら落ち着かない表情のにゃーではあるが心当たりがある為

セバスとは視線を合わせようとはしない。


「ふむ。今更とぼけるというのですか?

聞かなければいけない事とはソレの事ですよ。」


そう言うセバスの目線の先にはにゃーに引きずられて入ってきた一人の男が居た。


「こ、これには訳があるのにゃ!」


「だから、その訳を聞かせなさいと言っているのです。」


「うにゃぁぁぁ。」


「貴女も、本当に往生際が悪いですねぇ。」


「うぅぅ。セバス怒らにゃぃ?」


「正直に話せば怒りません。」


「ほんとにゃ?」


「本当です。」


「ほんとうに、本当にゃ?」


セバスの額に青筋が浮かぶ。


「クドイですよ?それとも先にオシオキ必要なのですか?」


「嫌にゃ!話すにゃ!喋るニャ!」


「最初から、正直に話せば良いんです。」


「んとにゃ、少し前の事にゃ。

散歩でぶらぶらしてたらにゃ、お腹がすいたのにゃ。


そんで、近くの街で御飯を食べる事にしたのにゃ。


そんでにゃ、御飯を食べて街をふらふら~としていたら

御主人の匂いがしたのニャ!


それで、匂いのする布を掴んで持って帰ってきたら

コレが居たんだにゃ。


不思議だにゃ~。」


「貴女は本当に頭の中まで筋肉が詰まっているんじゃ無いんですか?


それより、この男から御主人の匂いがしたとはどういう事ですか?」


「この男は知らないにゃ。

にゃーは御主人の匂いのする布を持って帰ってきただけなのにゃ。」


流石は猫獣人というか、自分の興味のあるもの以外の記憶はすっぱりと忘れているようです。

街であった騒動やら、この男を助けたと言う行為すら

主人の匂いのする布を盗まれると勘違いでもしたのかもしれません。


「ふむ。相変わらずと言うか御主人様以外では会話が成り立ちませんねぇ。」


悩むセバスは、視線を男に向ける。男は目線を逸らす。


「何故こちらをみないのですか?」


「いえ、そんな事は・・・。」


男は恐怖の余り気を失いそうな勢いである。


「なにも、取って食おうと言うわけではありません。


どうやら貴方の所持していた何かに我々の主の匂いが付いていたらしいのです。


情報次第では、貴方の望むだけの物を用意しましょう。」


「突然情報と言われましても、布と言えば身に着けていたローブが見当たらなかった事位です。」


「ふむ、ローブですか・・・。

ここ数日の間に我らの主人が貴方と接触した可能性が高いですね。

情報を聞く前に、報酬の話をしましょうか?

貴方は何を望みますか?


ここには貨幣がありませんので品物でお支払いになると思いますが、

魔石や、竜、その他魔獣の素材などでしたらご用意できますよ?


お好きなものを言ってみて下さい。」


男はその言葉を聞いて、このセバスと言われた者が心の底から恐ろしくなった。

竜と言えば、そのクラスにもよるが弱くても国家総出で撃退できれば御の字。

下手をすれば壊滅してもおかしくない代物である。


そんな魔物の素材で対価を払うと言うのだ。

金品は無くともどれだけ価値のあるものなのか解っているのだろうか?

疑問が後から後から沸いてきてします。


「報酬は、私の命の保障をしていただきたい。」


「ふむ。なんとも欲のない話ですねぇ。

良いでしょう、何かあればいつでも言って下さい。

しかし、最優先は主の命になりますがね。」


「つい先日まで私は街の教会本部の重役をしておりました。

そこに、正体不明の錬金術師が現れたとの情報がありました。


そこで、教会としては野放しには出来ないとの事で仲間に引き込むか始末するかの

二択となり、教会へ出頭するようにギルドを通じて通達したのです。」


「そうですか、でどちらになったのですか?」


「結果は、年端もいかぬ少年相手に教会の全戦力で包囲するも返り討ちにあいました。」


「ふむ。どうやら我が主で間違いなさそうですね。」


「あの少年は何者なのですか?もしや人間では無く魔族か獣人族なので?」


「我々は人のソレではありませんが、主は人間のハズですよ?

我々も最初はそう疑いましたがね。」


カラカラと笑うセバスに男は首をかしげる。


「そう、この私が人間如きに負けるはずが無いとね。

しかし、主と行動を共にすると自分の力の無さ鍛え方の足りない事

様々な事が見えてきましたよ。


あれから数百年時間の許す限り鍛錬は続けていますが過去に見た主だとしても

勝てる気はしませんねぇ。」


数百年の鍛錬で足りぬ相手とはどんな化け物か。

自分が先日見た少年からは全く持って想像すら付かない。


しかし、目の前に居るセバスに関しては力の底すら見えぬ恐ろしさを感じる。

自分が国家の王だとしても戦う前に降伏の二文字しか思い浮かばないであろう。


「そうですか、主が帰ってきたのですか・・・・。

これで退屈な毎日から開放されますね・・・。」


辛うじてにゃーが聴き取れる位の小さな囁きだったがセバスの表情は満面の笑みである。

この者達の主がアレで着いて来ている者達も似たような者。

何より戦う事が好きなのであろう。


前回より一週間。

なかなか更新できず申し訳ございません。

次回から物語が動き出す予定になっております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ