クリスチャンではありません。
「ここが、ある意味総元締めの教会本部か・・・。」
ギルドで聞いた話によると、俺が治療した件を密告した奴が居たらしい。
内容として纏めるとこうなる。
:新参者の冒険者が怪我人の治療に見た事も無い様なポーションを使っていた。
:併せて使用した回復魔法に関しても著しい効果が出ていた。
:結果として、死んでもおかしく無い様な重症だった奴が怪我の痕跡すら残さず回復していた。
:治療費に関しては法外な金額を請求していた様子だった。
と言う事らしい。
上の二つに関しては確かに間違ってはいないがした二つに関してはかなり尾ひれが付いているようだ。
今回の件で関わった人物、宿屋の女将に関しては場所の提供のみと言う善意の第三者扱い。
当の怪我人とその仲間の二人に関しては違法薬物(今回の場合は貴重な薬品の無断使用)の可能性があり
報告義務を怠ったという事で現在教会にて取調べ中との事だった。
そして、俺に関してだが正体不明の冒険者と言うのが一番の問題で他国からのスパイという線が濃厚らしい。
治療の対価としてこの街の情報を集めていると言う噂すらされているようだ。
なんとも身勝手極まりない無いようだ。
俺の持ち物を自由に使えない理由は何処にもない。そして対価を要求?した件についてもだ
相場が解らない以上安易に値段をつけれる様な状況でも無かった為ツケにしただけで特に本人達も納得している為法外でも何でも無いはずだ。
所詮は権力者の戯言で、大した力も無いのに血縁やら金の力で成り上がった連中のやりそうな事には違いなかった。
乗り込む準備は万端の為そろそろ殴り込みに行くとする。
「おい、そこの者!神聖な教会に何用だ!?」
「え~と、先日の事件?の事で情報を提供すると報酬が頂けると聞いて来たんですが・・・。」
「ふむ・・・。その情報とやらを申してみろ!」
「いやぁ、手柄を横取りされると思う訳じゃないのですが、重要な人物に関しての情報ですので
しかるべき人物にしかお話できませんね・・・。」
「愚民風情が調子に乗るなよ!!我々、教会騎士団では相手として不足だと申すのか!!!」
「あぁ、そういう態度で来られるのですね?解りました・・・。
では、移動の手間はかかるでしょうが他所の国に買って頂く事にしますよ・・・。」
そう言い、踵を返し来た道を戻り始める。
騎士団連中もまさかの返答に固まって居たのだが、そこは訓練を受けた練兵。すぐに行動に移す。
「おやおや、これはどう言った用件で?」
「キサマ!神聖な教会騎士団に無礼を働いてタダで帰れると思うのか!!」
「ほう。無礼ですか?
貴重な情報をタダで寄越せと言われてハイソウデスカと言う者が何処にいるのでしょうか?」
「先程から黙って聞いておれば抜け抜けと・・・。」
んむ。全く黙って無いのは気のせいだろうかと思いつつ抜刀された剣を見るも、
街で見かける粗悪品に毛が生えた程度の代物だった・・・。
あんなもんじゃ俺の毛すら傷つける事は適わないだろう。
「お前らの動きはノロ過ぎるんだよ!!」
そう言い、一番偉そうな騎士の後ろに立ち剣を握る腕をひねり上げる。
「いだだだだだ・・・。う、腕が・・・。」
メキメキッ
ボキンッ
あ、やりすぎちゃった・・・・。
「ぐあぁぁぁぁ・・・。」
「ふむ。騎士団と言っても所詮はこの程度か?
これならオーガの方が万倍は強いぞ?」
「キ、キサマ!騎士団に暴行を働いてこのまま逃げられると思ってるのか?」
「逃げる?人聞きが悪いなぁ。誰が逃げると言った?
そもそも、この状況でお前ら騎士団共は自分の命が保障されてるとでも思っているのか?」
何故か俺が逃げると言う選択肢を選んだと言う方向で話が進んでいる。
そもそも、へし折れはしたが腕自体は俺が捻り上げたままである・・・。
「「「な!?」」」
「お前ら、この場で俺に殺されないと高をくくってないか?
お前ら程度、素手でも10秒もかからず全滅させる事は可能だぞ?
それとも何か?俺がコレの背後に移動したのが目視できた奴が居るのか?
あれですら全力では無く、ゆっくりと歩いただけなのに誰も反応すら出来なかったよな?」
ここまで説明してやってやっと状況が理解出来たらしい。
総じて、連中の顔は驚愕に染まる。
「ま、まて金が目的なのだろう?
好きな額を言ってみろ、この私が教皇様に掛け合ってやろう・・・。」
腕を折られた奴が脂汗を滲ませながら声をかけてくる。
未だに自分の立場がわかっていない様子で上から目線に腹が立つ。
ドカッ!
バキッ!
腕を捻る上げたまま蹴り飛ばす。
「ぐぇぇ・・・。や、ヤメロ・・・・。
いや・・・、やめてくだs・・・・。」
あ、痛みのあまり気絶しやがった・・・。
どうする?このまま引きずって教皇とやらの目の前に放り投げるか?
などと考えていると、先程まで居た教会の扉が開き中年の男が出てくる。
「ウチの者が無礼を働いた様で、誠に申し訳ございません・・・。」
「じょ、助祭様・・・・!
お、お助け下さい!!!暴漢に襲われ、このままでは騎士団長が殺されてしまいます!」
「貴方達は馬鹿なのですか?貴方達の命で済むなら安いものですよ?」
おっと、この助祭とやら頭のネジが2~3本ぶっ飛んでるらしい。
「貴方がジンタ様ですね?」
後ろを振り向き、さも自分では無い様な振りをする。
「先においで頂いた三名からお話は伺っていますよ。
貴方がどれだけ危険な人物かという事もです・・・。」
何ソレ?ヤダ怖い。
人の噂ってどうしてこうも尾ひれが付いて大きくなるのだろう?
確かにゲームとしての感覚が抜け切らないままなので
死ななければいくらでも治せる(痛みが無い訳ではない)とは思ってるけど
そうそう簡単に殺しはしないぞ?
まぁ、盗賊やら横暴な貴族連中は人としてカウントしてはやらないが・・・。
「それに、貴方達にもキチンと伝えて居た筈ですよ?
魔道師風の若者が尋ねて来たら丁重に出迎えをして私の所まで連れてきなさいと。
貴方達聞いて居なかったとでも言うのですか?」
声色は確かに穏やかではあるが、逆に感情が篭っていなさすぎてある意味殺気すら覚える威圧感がある。
「いえ、めっ滅相もございません!?
で、ですが人違いの可能性もあり尋問しようとした所抵抗に遭いまして・・・。」
「偽者かどうかは私が判断する事です・・・。貴方達の処分は追って伝えます。
知らせがあるまで自室にて待機していなさい。
あと、そこに転がっている騎士団長も忘れないように・・・。」
「はっ!!」
言葉短く他の騎士連中は騎士団長を抱えて全力でその場を離れていった。
「さて、邪魔者は居なくなりましたのでこちらへどうぞ。」
そう言いながら教会の門へと歩き始めるおっさん・・・。
まぁ、言うとおりにするのも面白く無いため、俺は来た道を戻り始める。
「おや?教会に用事があって来たのでは?」
「ん?用件は済んだから帰るんだけど?」
「お仲間が心配では無いのですか?」
「あぁ、例の三人組か?
そもそも、勘違いしているようだから言っておくがあいつらはこの街で始めてあっただけの連中だ。
治療に関してもタダの気まぐれで特に裏があるとか考えての行動じゃねぇぞ?
トドメに言わせて貰うが、仲間じゃないから好きにして良いぞ?」
そこまで言い終わると背中を見せたまま街へと戻ろうとする。
すると、背中に殺気を感じる為無詠唱で簡易結界を張る。
するとどうだろう背後から10本近くの光の矢が俺に向かって飛び結界に阻まれる。
「おい、コレはどう言う意味だ?」
声のトーンを落とし殺気を混ぜながら質問を投げかける。
「どう言う事もなにも、このまま帰しては私が教皇様に殺されてしまうので
此処であなたに殺されるのが早いかの違いですよ。」
「そうか、勝手に殺されたらいいさ。」
「助けてはいただけないのですか?」
「そんな義理はないが?」
「そうですか・・・。ですが私もタダでは死にませんよ?
この街の水源近くに猛毒の入った瓶が沈めてあります。
後半刻もすれば私の任務が失敗したとみなされ街に流れる水路は毒の川となるでしょう。」
「たまたま通りがかっただけの街だ。そうなれば他所の街にいくだけだ。」
「降参です。貴方を連れて行くことは叶わないようですね。
三人に関しては無事にお返しいたします。
最後にお願いなのですが、教会を潰すのはご容赦願えますか?」
ぉ、なんか諦めた。まぁ面倒が無くて助かるな。
「そんなもの約束出来ないぞ?」
「えぇ、強制出来るとは思っていませんよ。
正直貴方の殺気を受けて未だに正気を保っていられるのが奇跡に近い状況でこれ以上は無理と言うものですよ。」
そう言いながらおっさんは去って言った。
よし、ゴタゴタも済んだしギルドに帰ろうかなっと。