ギルドハウスで囲まれてみました。
情報収集しながら彼方此方ぶらつく毎日・・・。
「はぁ、もう一週間か・・・・。」
そう、これと言って目新しい情報も手に入らず一週間もたってしまった・・・。
プレイヤーハウスなんてこちらの世界には存在してないのかもしれない・・・。
これまでに手に入った情報を整理してみるとするか・・・。
:世界樹が枯れて以来一部の種族(エルフ族、精霊族)を除き魔法が使えない
(全く使えないと言う訳では無く実用的な範囲で使えるものは生活魔法と初歩の魔法)。
:中位以上のポーション類の製造方法の失伝(一部教会によって秘匿されているものもある。)
:治療師は例外なく教会の庇護下にある。
:教会の横の城(城と言っても外壁の一部が教会の影から見えるのみ)は持ち主不在。領主の持ち物と言う訳でもなく、いつからあるかも不明。近寄る事すら出来ない。
:この街は、教会が管理(冒険者ギルドと共同管理)しているが実権は教会の教祖が持っている。
:人族以外の種族の迫害がヒドイ。種族毎の差は無くハーフはさらに酷くなる(人族からのみでなく親の種族両方からも)傾向がある。
その為ハーフは生まれてすぐに森や荒野などに捨てられる事がほとんどである。
:他種族に関しては、エルフとドワーフのみ技能によっては優遇される場合もある。
:転移、もしくは転生者などが存在したと言う話は御伽噺すら残っていなかった。
:現在魔族達は脅威としては間違い無いが表立って攻め込んで来ているという訳ではない。
:ギルドとしては、冒険者ギルド、生産ギルド、商業ギルドの三つが基本となり
一部噂では闇ギルドなるものも存在していると言う話が聞けた。
以上がこの一週間で得られた情報だ。
世界樹に関しては、今すぐに元の姿になる訳ではない。
だが徐々に世界のマナは増えていくであろう事が解っている。
そして亜人種に関しては奴隷として扱われているのをこの街でも良く見かける。
正直見ていて気持ちの良い物では無いのが本音である。
「あぁ、あれこれ考えながら歩いていたらギルドハウスまで来てしまった・・・。」
ここ一週間ギルドハウスに立ち寄る用事も無かった為放置していたのだが
ギルドカードを放置してきてしまったため再度受け取らないと罰金を払わなければいけなくなる・・。
仮書の有効期限は3日だったのだが、宿屋のダンナが衛兵のだった為
ギルドで揉め事に巻き込まれてカードが受け取れて無いと説明(嘘は言って無い)した所
一週間以内と期日を延ばしてもらえたのだ。
「こんにちわー。」
こんな時は、何知らぬ顔で入るのが一番だ。
例の受付嬢がいない事を祈りながらギルドハウスの入り口を抜ける。
「あ!みなさん、そこの彼を確保してください。出口に近い人出口を封鎖して!!」
あれ?俺なんかお尋ね者になってない?
あれよあれよと言う間に周りを囲まれ出口まで塞がれたぞコレ?
「この場合、手を出しても正当防衛が成り立つかな?殺さなければ良いよね?」
ニコニコと笑いながら脅しをかけてみる。
「「「え!?」」」
一部の人間はその言動に愕き固まる。
そして、別の一部の人間は俺を見た目で判断したのだろう完全に見下した目をしている。
そして、事の発端の受付嬢はどうしているかと言うと机の下で震えてる・・・。
「5秒カウントするから、死にたくない奴は下がってね。」
鞄の中から閃光の魔法と同じ効果(下位)のポーションを取り出す。
5、4、3、ぽいっ2、1・・・・。
ドッカーン!!
このポーション音はでかいがタダの閃光だけの為実際に死人所かけが人すら出ない代物。
遊びで作ったネタアイテムである。
現在の装備には状態耐性が備えられている為、俺自身は少し眩しい程度の閃光である。
しかし、俺の言葉を信じて下がった奴を除く20人程は強烈な閃光と爆音でほぼ気絶している・・・。
あ、一人だけなんとか立ってる奴が居るな。
「あれ?一人残ったか・・・。じゃぁ、次は本物で行こうかな・・・?」
「まて!待つのじゃ!!ウチの受付の不備は詫びる!」
あ、ギルマスが降りてきた・・・。
「え?もう終わり?」
「終わりも何も・・・。お主はウチを潰す気か?」
「ほら、多勢に無勢って怖いでしょ?ちゃっちゃと数を減らせば楽になるじゃん・・・。」
「お主からすれば、ゴブリンの群れとそうは変わらぬようじゃのぉ・・・。」
「そこに立っている奴は、さしずめオーク?」
「誰が、オークだ!!あんな豚と一緒にしやがって!!てめぇ叩ききってやる!」
豚と一緒にしたら豚さんに失礼か・・・・。
オークは見た目あんなんでも肉になればかなり旨い食料になる・・・。
キンッ!!
ガキン!!
ギャリギャリ!!
うん。このローブ状態異常耐性だけでなく、物理耐性もしっかりつけてある為
ローブから紙一枚の所で剣の刃が見えない何かに阻まれ火花を散らしている。
「おい、マスター。さすがにコイツは殺って良いよな?」
と、答えを聞く前に腰にぶら下げたナイフで切りかかって来た冒険者を迎え撃つ。
「そんなナマクラで俺が殺せるもんか!」
刃が全く届いて無いのに威勢だけは1人前の冒険者らしい。
ナイフに魔力を込めるとナイフの刃が青白く光り始める。
このナイフにはアイスランスの魔法が秘められているだけのゴミドロップアイテムだった。
たまたま回収した戦利品の中に埋まっていて気が付かないままアイテムバックの肥やしになっていた物を昨日見つけて手ぶらより良いかなって程度でぶら下げていた物だ・・・。
「よっと!」
なんとも締まらない掛け声だが、余りやり過ぎると芯まで凍って氷像が出来てしまう為
少しキツメの凍傷程度に加減する・・・。
「な!?魔剣だt・・・。」
魔剣ってナイフなんだけど・・・。
「もう、その位で勘弁してくれないじゃろうか・・・。」
「ん?意味も解らず出口を塞がれ尚且つ山のような冒険者に囲まれたんだけど?」
「その件は、追って謝罪する。しかし急ぎの用もあるのじゃよ・・・。」
なんだかキナ臭い話の予感がしてきたな・・・。
「で、急ぎの用ってなんだよ?」
「まずは、コレがお主の忘れて入ったギルドカードじゃ・・・。」
「別にこんなもの必要ないんだけど?」
「こちらで追加で記録した名前と年齢以外は何故か測定不可と出ておるんじゃ・・・。」
「それは、俺の責任じゃないだろ?」
「それは今回の事とは無関係なのじゃ。お主ギルドハウスから帰った後に何かせんかったか?」
「何かと言われてもなぁ・・・・。」
「ほれ、ギルドハウスから宿に戻った後じゃ・・・。」
「あぁ、夜中に腹が減って宿の女将さんに夜食を食わせてもらった・・・。」
「えぇい!まどろっこしい奴じゃ!重症の冒険者の治療をせんかったかと聞いておるんじゃ!」
「なんだ、知ってるんじゃん。」
本当にこの狸爺は、本音で話さないからメンドクサイことこの上ない。
「お主気づいておったのに、とぼけて誤魔化そうとしたんじゃな?」
「けが人が目の前に居て自分には治療する手段がある。
それをするかしないかは、当人の自由だろ?」
「他人の奴隷や持ち物をどうこうした訳でもあるまいし・・・。」
「行為云々の話では無いのじゃよ・・・。
お主、治療の際にポーションを使ったであろう・・・。」
「あぁ、手持ちがあったからなぁ・・・。」
「それじゃよ・・・。傷跡もほぼ残らぬ様な上位ポーションの作り方なんぞ教会にすら無く
稀にダンジョンから手に入る物は残らず教会が買い上げ効能や材料を調べようと躍起になっておるんじゃぞ?」
「そりゃぁ大変だなぁ・・・。」
「お主・・・。何処でその噂を聞きつけたか解らんがたかだがCランクの冒険者に使うとは何事だと教会がカンカンなんじゃよ・・・。」
「で?」
「で?じゃないわい!」
「今、教会の連中は血眼になってお主の事を探し回っておるんじゃぞ?」
「あー、それでか・・・。」
「なにか心辺りでもあるのか?」
「時々つけられてたから・・・。」
「から?」
「全部巻いた!」
ここは胸を張って言うべきだなと思い、胸を突き出し自信満々に答える。
するとどうだろう・・・。
ギルマスは額に手を当てて俯いてしまった・・・。
「やはりか・・・。」
「ん?なんかマズイ事になったのか?」
「教会から、追っ手をだしても出しても全て巻かれてしまい、そんな冒険者が無名のハズが無いと
今朝方ギルドに情報を開示せよと怒鳴り込んできたんじゃ・・・。」
「で?」
「で?じゃないわい!
お主のギルドカードを見せるわけにもいか無いじゃろうに!
ウチには情報も何も無いと言っても信じて貰える筈も無く
挙句、他国からの侵入者だと言う始末。
教会の僧兵が今武装を固め街中しらみつぶしに探す気で準備をしておるんじゃよ!!」
「おぉ~。そりゃ大変だ・・・。」
「お主、完全に他人事として考えておらんか?」
「え、俺関係ねぇもん」
「全部お主の蒔いた種じゃわい!」
「あれ?やっぱりそうなる?」
「・・・・・。」
「ったく・・・。しょうがないなぁ・・・。
メンドクサイけど、ちょっと教会まで行って来るわ・・・。」
「くれぐれも、破壊するでないぞ・・・?」
「どこぞの破壊神みたいに言うのはやめてくれない?」
「神の仕業だったらどれだけマシな事か・・・・。」
あーあ、爺さん完全に諦めモードだよ・・・。
「あ、教会に行くと俺の貴重な時間が減るんだわ。」
「自分のせいじゃろ。」
「だから、この辺にかなりデカイ砦もしくは城があったはずなんだが
知らないか?知らなかったら情報を集めておいてくれ。」
「何故ワシが?」
「ほら、一応ギルマスだろ?」
「一応じゃないわい!」
「調べてくれないなら、さっきの分キッチリ請求するからな?」
「よし!ワシに任せておけ!」
おおう。変わり身早いな。まぁ請求しないとは誰も言って無いけどな。
そう言いつつ、ギルドハウスを後に教会へと歩いていくのであった。
次回、教会で見たものは・・・。