家を探して三千里・・・。移動は一瞬。
さてはて、家のあるはずの場所に転移するもそこは大きな街の手前の街道。
時刻は昼も過ぎようとした頃だ。
このままでは野宿する羽目になる為、街への入り口である検問に並ぶジンタ。
おっさんのあしらい方には現実社会で散々もまれた為簡単にこなすも
可愛いものと子供にはめっぽう甘いようです。
「次の者入れ!」
「やっと順番か・・・。」
かれこれ二時間ほどかかっただろうか・・・。
永遠とも思える位長い行列に並びやっとの事で順番が来た。
「名前と、この街に来た目的は?」
「え~と、名前はジンタ。
目的は家に帰る途中とでもいいのかな?」
「何故疑問系になるんだ!!」
「いや~、それが迷子になりまして・・・。」
「その年で迷子って言い訳にも苦しいと思わないのか・・・?」
「すいません、餓鬼の頃にスラムを飛び出して冒険者になったんですが
スラムで生活していた家?は多分もう無いかとおもいますので・・・。」
「なるほど、それで疑問系なのだな。」
「まさに、その通りで・・・。」
「まぁいい。ジンタとか言ったな。
冒険者ならギルドカードを持っているだろう?」
「それが・・・。
旅の途中で盗賊に会いまして・・・。
着の身着のままで逃げてきましたので、この街のギルドで再発行してもらおうかと・・・。」
「そうか、しかし仮入門書の発行には銀貨1枚かかるが大丈夫か?
三日以内にギルドカードを持って来れば銅貨5枚は返金される。」
「はい、多少は路銀として身に着けていたもので問題ありません。」
「では、この水晶に手を当てるのだ。」
言われるまま水晶に手をかざすと、水晶が白く光る。
「んむ。犯罪歴はなさそうだな。
コレが仮入門書になる。紛失した場合は銀貨5枚かかるから注意しろ。」
「ありがとうございます。」
「宿なら町の真ん中にある荒れ暮れ酒場がお勧めだ。
見た目はイマイチかも知れんが飯は旨いぞ。」
「親切にありがとうございます。」
言われるまま、町を中心部に向かうと正に荒れ暮れ酒場と言う風体の宿屋らしきものを見つける。
「そこのあんた、入るならさっさとしておくれ!」
「おっとすいません。」
謝りつつも振り向くがそこには誰もいない。
「なんだいあんたアタシにケンカでも売ってるのかい?」
声が足元から聞こえてくる為下を見ると・・・。
うん・・・。幼女がそこにいた。
「あんた・・・・。今よからぬ事を考えてやしないかい?」
なんだ、最近の幼女は読心術でも使えるのか?
「いや、すいません・・・。」
幼女はいつの間にかその肩に身の丈の倍はあろうハルバードを担いでいた・・・。
「一晩、晩飯付なら銀貨三枚部屋だけなら二枚、酒と朝飯は別料金だよ。」
「あ、えと10日分晩飯付で・・・。」
「なんだい、本当に客だったのかい。
あんたアタシを知らないなんて新顔だね?」
「えぇ、今日この街に着て門の衛兵さんにおススメだと言われたもので・・・。」
宿の入り口で喋っていると後ろから聞いた事のある声が聞こえてきた。
「おー。兄ちゃん本当に来たんだな。
そこに居るのはウチのカミさんだ。
なりは小さいがドワーフだからちゃんと成人してるぞ?」
「あんた・・・。ちゃんと説明しなかったね・・・?
今夜ゆっくりとお話しようかねぇ。」
「お、俺は宿の為に飯は旨いからおススメだって言ったぞ?」
「やっぱりかい・・・。」
俺はそのやり取りに、衛兵さんと幼女を交互に見る。
これが、異世界に溢れる合法ロ○ってやつか・・・。
「あんたが、何考えてるから解らないけどコレはアタシのダンナだよ。
アタシは、ここの女将やってんだ。
とりあえず、あんたの部屋は二階の一番奥が開いてるよ。
晩御飯は特に時間は決まってないが余り遅いとかまどの火が落ちちまうからそれまでには食べにきなよ。例え食べそびれても返金はしないからね!!」
「イエス!マム!」
あの凶器を握りながら説明されると何も言い返す気力がわかない。
「言い忘れてたけど、お湯とタオルは別料金で銅貨3枚だからね。
お湯の追加は銅貨2枚。」
「あぁ、その辺は魔法が少し使えますので・・・。」
やっぱり風呂は無いのか・・・。
何処かの山に温泉が在る様な事がゲーム時代の攻略本にのってたっけな・・・。
まぁ、温泉に入るなんて事は未経験だったけどな!
「あんた、その年で魔道師かい見た目は貧相なのにやるもんねぇ・・・。」
「俺もそう思ったんだよ。
まぁ、頼りなさそうだけど悪い奴じゃなさそうだったしな。」
これは、捕まると話がながくなりそうだ。
とりあえず、ギルドに向かうかな。
「自分はギルドに用があるのでこれで失礼します。」
話を適当に切り上げギルドに向かう。
露天などを見るも、薬草などの素材はそこそこあるものの、
装備に関しては精精鉄の鎧やら剣どまり。
片手剣、バスタードソード、ハルバードなど種類はそこそこ多い物の
品質自体は良くて普通大半が粗悪品に近いような代物だ。
駆け出しが使う分には良いかも知れないがあれでは命がいくつあっても足りないな・・・。
あれこれ見ているうちにギルドハウスに到着する。
「ふぅ、ここがギルドハウスだな・・・。」
いかにもと言う見た目の建物の前に来ると、ネット小説やらで読んだ話が目に浮かぶようだ・・・。
「まず新人はイカツイおっさんに絡まれて試練をうけるんだったな・・・。」
豆腐メンタルな俺は心構えからしっかりしないといつぞやみたいに
冒険者家業に嫌気がさして生産街道まっしぐらなんて事になり兼ねない。
「しつれいしまーす。」
ばきっ!
ドカッ!
どっかーん!!
バキバキバキッ!!
「うぉぉ!」
扉をくぐった途端何かが飛んできて、今くぐったばかりの扉を破壊してゆく・・・。
「おぉう。みねぇ顔だな。あんちゃん大丈夫か?」
年の頃は30半ばと言った感じだろうか、頭は輝かしいまでのスキンヘッド。
特に武器は持っていなさそうだが、その両手は血に濡れている。
「は、はい!と、特に怪我とかはありませんでございます。」
「こらーーーーーー!!また、あんた達だね!
受付件酒場だから飲むなとは言わないけど、ケンカなら外でやってくれない?
それとも、アタシが直々に戦闘訓練をしましょうか?」
「あ、姉さん!す、すまねぇ!つ、つい出来心で・・・。」
「あんた達・・・。つい昨日もそんな事言ってたね・・・。
次は無いよ?ツギハ・・・。」
「「「「へい!」」」」 「は、はいぃっ!」
しまった、つい勢いで返事をしてしまった・・・。
「おや?新人かい?」
「あ、えーと、その・・・。多分そうです・・・。」
「多分ってなんだい!多分って!」
「ス、スミマセン!!!」
やばいやばい、このタイプの人に逆らうとロクナ目に遭いそうも無い・・・。
逆らっちゃダメだな・・・。
「じゃぁ、登録からだね。登録料に銀貨5枚必要だけど、手持ちはあるのかい?
なければ期限付きにはなるけど、無利子で借りる事も出来るよ?
まぁ、期限内に返金出来なければ相応の罰則が待ってるけどね。」
「あ、手持ちは多少あるので大丈夫です・・・・。」
「じゃぁ、ちゃっちゃとここにきなさい。」
そういいつつ、人差し指でカウンターをトントンと叩く・・・。
やべぇ、マジで怖い・・・。
これなら、モンスターの群れに囲まれた方が万倍マシだ・・・。
「アタシも遊んでるほど暇じゃないんだけど?」
その言葉を聴いた途端、自分でも愕く程の速度でカウンターへと到達する。
「ふむ。あんたレンジャーやシーフとかの斥候が向いているかも知れないねぇ・・・。」
「いえ・・・。自分は錬金術師ですので・・・。」
「あんた、なんて才能の無駄遣いをする気だい?
錬金術なんて金をドブに捨てるようなもんだよ?
安定して売り物になるようなポーションを作れるようになるだけでも
最低で10年は修行しなきゃならないし、あんたはどう見ても15歳ってところだろう。
金持ちの貴族様って感じでも無いし・・・。
まぁ、あくまでも希望は希望だね。
とりあえず、簡単にステータスの確認の為にカードを作るから
そこに血を一滴垂らしてくれる?」
そう言うと、受付のお姉さんは銀色のカードを取り出す。
言われるままにナイフで指先に傷を付け血をカードに垂らす。
すると、カードが一瞬光るもすぐに光が消える。
「はい。登録完了ね。」
お姉さんはカードを何か機会の様な物に差込質問を続ける。
「ボク、名前と年齢に職業をもう一度いいかしら?」
年齢はどうするか・・・。
30歳と言っても、嘘つき呼ばわりされるだろうし・・・。
「名前はジンタ、年は18歳、職業は錬金術師です。」
「あら、本当に18歳?好みのタイプは年上?それとも年下?」
「年は18です。後の質問はノーコメントでお願いします。」
「あらら、ユーモアにかけるわねぇ・・・。」
「仕事をしてください・・・。」
などと押し問答をしていると受付の置くの階段からエルフの女性が降りてくる。
「ミオ、遊んでないでさっさと登録を済ませなさい。
此方も暇ではないのですよ?」
「す、スミマセン・・・。と、登録は完了です。」
あれ?お姉さんの雰囲気が一瞬で変わりさっきまでの覇気が消えてしまう。
「あら、登録は終わったのね?
細かい説明は上でしますので、ジンタさん?と言ったかしら・・・?
私について来て貰ってよろしいですか?」
「あのっ・・・・。自分はこの後・・・。」
嫌な予感がして断ろうとすると、エルフのお姉さんのメガネが鈍く光った気がする。
「よろしいですね?」
「・・・・はい。」
やばいやばい・・・・。
このギルドは何か嫌な気配しかしないぞ・・・?
逃げたい気持ちに狩られるジンタであるも逃げ出す一歩手前で逃げ道を塞がれずるずると闇の中に引きずり込まれる。
現実世界では女性との接点は家族や親類以外にはほぼ無く
NOと言えない典型的な日本人であったのが大きな原因だろう。
命の危険を感じつつもいざとなれば転移で逃げれば良いと言う安易な考えがどこまで通用するものかと・・・・。
皆さんは、怖いお姉さんに絡まれた時はどうしますか?
豆腐メンタルな作者は、とりあえず逃げるを選択するも
まともな結果になった記憶はありません。
すこし、話が逸れましたが次回も楽しみにお待ち頂ければと思います。