二限目 勉強会の授業
その後颯達は勉強会を開くべく2時間ほど電車に乗って葵の家の前にまで来ていた。
「俺いつも思うんだけどさー、、」
颯が少し苦笑いで何か言いたげに呟く。
「葵の家って、無駄に広くね??」
そう。葵の家はどこかの金持ち芸能人レベルで広く領地には池、プール、軽い運動のできる広場がある。
「そう?普通じゃない??」
さらりとした顔ですごいことを仰る。もはや葵は庶民感覚が明らかズレていた。
颯と達也は何気なく目配せしながら家のドアを開け葵の家の中に入った。
「久々に来たなー。やっぱ広いだろ。なぁ達也?」
「そうだ、、な。」
達也がこんな反応をするのは無理もない。達也の家はお母さんがお父さんと離婚し今ではお母さんとの2人で生活している。お金も少ししかなく、今はアパートの一階を借りて住んでいる。
親が子供を養える環境が揃っている家を見て、思わず肩を竦めてしまう。
「さてと。勉強会始めますか!葵、教えて欲しいとこ開いといてー。」
「大丈夫だよ!もうすでに教科書開いてるよ!ついでにラインマーカーももれなく準備してるよ!」
別に教科書だけでもいいのだがまあ、その意志は認めてやろう。というよりもそれだけ勉強準備できて、集中する気満まんなのになんでいつも点数が悪いんだこいつは。
そう思いながら颯は机の上に開かれた教科書の内容を見てみる。
「えっとー、、天体?」
「うん!今天体で教えて欲しいことがあって!」
天体はどちらかというと達也よりも颯の得意分野だ。颯はどれどれと細かく内容を見てみた。すると隣から葵が教科書にピッと指を指した。
「えっと!これこれ!!そう、相対性理論ってやつ!!」
ちょっと待て。相対性理論ってアインシュタインが唱えたといわれるあの相対性理論だろ?有名どころの中の有名どころじゃねーか。
颯にとっては相対性理論が理解できないのが理解できない。
「えっとね、ちょっと長くなるけどいい??」
葵がコクッと小さく頷いたので少し呆れ顔になりながらも説明を始める。
「まず、相対性理論というのはアインシュタインが唱えた理論で移動する速度によって時間の進み方が変わるのと似たようなもので、光速に近づけば近づくほど
時間の進み方がゆっくりになっていくという理論で。確か童話の浦島太郎に似てるからウラシマ効果とも言われていたような気がするな。」
サッと颯が葵の方へと視線を向ける。完全に魂が抜けてただの抜け殻になっている。あ、しまった。葵がついてきていない。颯はそんなに難しいことを言ったつもりはなかった。
「は、颯くん?何言ってんの??だ、大丈夫?頭??」
このショタ好き生徒会長に心配されるほど俺の頭はおかしくない。
すると颯はふと視界をぐるりと動かした。
「というよりも達也。お前も寝てないで勉強したらどうだ??」
そこには完全にだらけている達也の姿があった。葵の部屋に置いてある漫画を漁っては読み倒している。
「えー。だって俺やってもやらなくても点数取れちゃうしやる意味ないからさ。颯、お前とは頭の出来が違うんだよ馬鹿野郎。」
達也は本当にノー勉でテストをしても必ず学年のトップに君臨していた。ノー勉が普通、なのにいつでも学年トップ。なんか尊敬するよほんと。
「達也くんすごーい!私も勉強してなかったら、、」
「余計点が落ちるからやめろ。」
達也は見事な秀才タイプで葵はただのショタ好きだ。
それはそれで頭の出来に天と地の差がある。どんぐりの背比べにもならない。
すると達也がゆっくりと二人の方へ身体の向きを変えた。
「はぁ、、疲れたな。おい颯。そろそろ休憩しないか?」
「お前がそのセリフ言っちゃうのか!?ずっと漫画読んでゴロゴロしてただけなのに!?まだ始めて10分も経ってないのに休憩するのか!?」
ったく。勘弁してくれよ。
颯はやってられるか、と頭を掻く。すると葵が何かを思いついたように両手をパンッと合わせた。
「あ!じゃあ下にお菓子あるからおやつにしよっか」
あーもう。葵は無駄に達也に甘いんだから困ったものだ。いつからこうなったのだろうか。
「とりにいってくるね!」
どたどたと足音を立てながら下まで降りていくと隣から達也が質問してきた。
「颯さ、あいつのことどう思ってる?」
意外な質問だった。こんな質問をしてきたことはおそらく今までにないだろう。驚きの表情が抑えられない。少し深呼吸をすると若干考え込んでこう答えた。
「あいつって葵のことか?んー。面倒見はいい方だしいいと思うけどショタ好きだからなぁ、、性格の問題だな。」
「そっかー。」
「そういう達也はどうなんだよ?」
「俺は別にいいと思うけど。あいつ面白いし見てて落ち着くんだよ。」
達也からの返答には正直焦った。あの達也が頰を赤らめて返答してきたのだ。
「顔、赤いぞ?大丈夫か??」
「え!?あぁ、大丈夫だ。問題ない。」
なんなんだ?今の驚き方??するとお菓子を持って葵がドタドタと足音をたてながら帰ってきた。
「よし!みんなでおやつ休憩ー!!」
はぁ、この調子で本当に大丈夫なのか?何故か葵がいつも点数を取れない理由がなんとなくわかってきた気がする。
だがダメとは言わずに颯はお菓子に群がる。
「ちゃんと食べたら勉強しろよー。」
「わかってるよ。あ、飲み物持ってくる!!」
どうやら相当面倒見がなってきているらしい。まあ、スナック菓子などを飲み物なしで食べろと言われると少し厳しいものがある。
バタッ!
「忙しいやつだなぁ。、、?」
少し独り言をこぼした時、颯の手に何かが触れた。
思わずしばらくゴソゴソと触ってしまう。その光景に達也がツッコむ。
「どうした颯?なんかあったのか??」
「なんか手に当たって、、、、。」
そこで颯が見つけた、いや。見つけてしまったのは
葵の完全オリジナルのショタ子ブロマイドコレクションとコミケ限定商品の薄い本の山だった。
まだブロマイドコレクションはかろうじて理解してやったのにコミケで売られている薄い本にまで手をだしはじめたかあのバカは。どこまで人間として末期になれば気が済むのだほうか。
颯がゴミでも見るかのような目で薄い本を手にした時に葵がまた帰ってきた。
もう、、帰ってこないでくれ。正直に心の底からそう思えてしまった。
「飲み物持ってきたよぉぉ!!、、、。颯くん?なにしてるの?」
そしてタイミング悪っ!俺が本を手に取った瞬間に帰ってくるとかタイミング悪っ!!
目が泳ぎながらも必死にこの状況を柔らかくしようとしてみる。
「え!?いや!うわぁ、、薄い本がたくさんあるぅ。
なんだろうこの本?俺よくわっかんねぇなぁ、、。」
なんて見苦しい言い訳をしていた颯の前で葵の顔が緩み唐突にテンションが一気に上がる。
「そっかぁ!颯くんもBL好きだったんだぁ!!これからたくさん話できるね!!どうせなら!実践してくれてもいいんだよ!?身体と身体がピタリと合わさったあの瞬間!!あぁ!!あれはもう天国!!!」
そうか。なら死んでこい。二回死んでこい。もう天国でいいから。地獄にわざわざ行かなくていいから。もうとりあえず二回死んできてくれ。
そんなこんなでお菓子を食べあさりジュースも飲み終えようやく本題に入り始めた。
なぜここから本格的に勉強することができたのかなど気にしては負けである。
苦手だと言い張っていた教科以外もズタズタだったので達也の手を借りて一時間半近く勉強しかしていなかった。俺たちは流石にやりすぎだと言って休憩をとった。夕方の空は徐々に明るみを隠してもう外は真っ暗だ。
「もう暗いなぁ。そういえばさ、明日って土曜日だっけ?」
颯は疑問そうに葵の目を見る。すると不思議に思いながらも葵は答えた。
「そうだけど?颯くん何かあるの??」
「いや。このまま泊まって朝帰るのもいいなと
思ってさ。」
俺は別に悪気があって言ったわけではない。仲もいいし勉強会なのだから大丈夫なのではないかと思っただけだったのだが、バカのせいで一気にこのリズムが転調する。
「え?まさか颯くん!!そんなっ!!私はそんなつもりで部屋に呼んだんじゃないからね!!」
「顔真っ赤にして言うな!!そんなつもりで来てるとおもってんのかバカ!!」
少し颯も顔を赤らめながら葵とギャンギャン揉めている。隣で達也は爆笑しすぎてヒーヒーと言いながらお腹を抱えて倒れ込んでいる。
「まあいい。、、このまま泊まって勉強合宿するか」
そんなこんなで三人は葵の家に泊まり夜中も勉強することになった。つまりは徹夜ということだ。
泊まり込みになったということで俺たちがまず考えていたのは夜ご飯のことだった。
「さぁ腹減ったけど、どうする?」
と達也が言うと葵が自信ありげに手を上げる。
「あ!私作ってくるね!!」
「さすがにそこを葵に頼むわけには、、迷惑かけるだろうしさ。」
申し訳なさそうに颯が抗議すると「あ、俺なんでもいいよ」と達也が乗り気になっていた。
おいそこぉぉ!!迷惑かけるだろうからやめろと言ったばかりだろうが!!
第一、葵が何を作ることができるのかもわからないのに!万が一紫のグツグツ闇鍋状態で出てきたらどうするんだよ!!
「わかった!とりあえずなんか作ってくるね!!」
と笑顔で立ち上がり台所へと向かった。
俺にはあいつの笑顔の不自然さに気付いた。その笑顔は達也に向けられたもの。なんだか今日の葵は、何か変だ。なんて考え込んでいる颯に達也が話しかける。
「なぁなぁ。あいつが何作ってくるか当ててみないか?」
「なんだろうな、ハンバーグとか?」
「もしかしたら肉じゃがかもなー」
ありきたり過ぎる。完璧に漫画の見過ぎだ。
確かに女子が好きな男子に対して作る料理として肉じゃがは必須項目に入っている。しかし、葵が達也のことを好きなわけが、。好きな、、わけ、が、、。
「ま、まあ肉じゃがも上手いしいいよなぁ。」
少し達也から目線をそらしてしまったが向こうは気づいていなかった。
ーそして数分後ー
「ただいま!作ってきたよ!!」
葵が自信満々な顔で持ってきたのは肉じゃがだった。
こ、この雰囲気は!葵が肉じゃがを達也に食べさせることにより「おいしいね」なんて言葉が葵の恋心に深く刺さり恋愛へと発展していき2人が過ごすことになる夜はとても長い時間となり挙句の果てにはぁ!!!
などと妄想を連想している颯を無視して二人でテーブルの上を片付けていた。
「よし、そんじゃ。いただきます!」
妄想の終わった颯を加えて夜ご飯。
達也は箸でじゃがいもに手を付けて一口。無駄に口が動いているのは気にしないでおこう。
「どう?おいしい、かな??」
葵は緊張気味に達也に尋ねる。
「おう。上手いと思う。」
さらりと良い返事だ。これを聞いた葵はなにやら嬉しそうだった。
まさか、、これ本当に。
夜ご飯も食べ終わり勉強もある程度済んだので次は就寝だ。
「達也くんと颯くんはあっちの部屋で寝てね。」
いや、さすがに女子と隣で寝る男友達がどこにいるんだよ。そんなこと目当てで家に泊まる奴とか怖すぎるだろ。
2人が隣の部屋に移動して就寝につこうとしていた時に達也は申し訳なさそうな顔をして荷物を持っていた。
「ごめん。俺用事あるから帰らせてもらうわ。」
と一言言い残し達也は先に帰っていった。
「大変だな。あいつは」
などと一人でぼやいているとドアから葵が顔をだした。部屋をキョロキョロと見渡したが達也の姿が見えないのだ。
「あれ?達也くんは??」
「あいつなら用事で帰ったよ。」
「そっか、、。颯くん。、、ちょっといいかな?」
葵は顔を赤くして颯に問う。特に問題もなさそうなので部屋の中で話を聞くことにした。ん?どうしたんだろうか??という疑問を心の中に持っていたのだが。
部屋に入り葵の口からでた一言に衝撃を受けてしまった。
「あのね、、私、達也くんのこと好きなんだ。」
だが颯は正直その言葉を聞いても大きな反応はしなかった。衝撃は受けたが頑張って心の内に秘めたのだ。
「え?なんで無反応!?颯くんなら相談に乗ってくれると思ったのに!!」
「いや、相談にはちゃんと乗るよ。友達が頼んでくるんだからな。」
「どうすればさ、、達也くん、私のこと好きになってくれるかな?」
あー、どうだろうな。達也は今まで好きな奴とかいなかったし、恋愛にはあまり興味はなさそうなんだよなぁ、、。
まだ大した付き合いではないので友達のことはよくわかっちゃいない。
「とにかくアタックだ!!」
「在り来たりな返答だね?」
いやだってそれしか思いつかないし。とでも言いたげな顔を向ける。仕方ないなぁ、という顔で颯は葵に視線を戻す。
「だったらあいつの好きなタイプを一つだけ教えてやる。これはお前が持っているものだ。」
「どんなタイプなの?」
「お母さんみたいな人なんだよ。」
訳わかってないような顔をしている。
「達也くんはマザコンなの?」
「ちがう!やめてやれ!!」達也はな、、お母さんが病気をわずらっていて今ずっとあいつ1人で看病しているんだ。余命ももう短いと言われて、あいつは悩んでるんだよ」
真剣な颯の顔を葵はじっと見つめる。
「もしもお母さんが死んだら、、自分は1人になる。お父さんとは昔離婚してでていったんだ。だからあいつは1人になる。そうしたらあいつの縋るべきものがなくなってしまう。あいつは、自分が1人になるのを怖がっているんだ。たとえそれが仕方のないことだとしてもな。お母さんは昔から病気持ちで達也はお母さんを支える人だったんだ。だからこそ、あいつは誰にも支えられず1人でお母さんを支え続けた。あいつは本当のお母さんの温もりを知らない。だから、、、」
話している最中に颯は涙を流した。
「だから、もしそうなったら。葵。お前が達也の家族になって欲しい。決して結婚とかの話ではない。家族としてあいつを迎えてくれないか。
あいつのタイプは温もりを持った家族みたいな人なんだよ。あいつの孤独なら俺が分かっている。お前にはその温もりがあるんだよ。」
「な、なら!颯くんが、、、!!」
葵がそう言いかけた時
「俺は家族になれない。もう、、誰とも家族には、、、。」
と颯が葵に対して声を弱めた。
「わかったよ。達也くんは、、私が支える。私が家族になる!!」
その言葉に安心した颯は一言。「頼んだよ。葵。」と言い残し部屋をでた。
颯は葵がいなくなりポツリ一人になった部屋で一言呟いた。
「家族なんか、、二度とごめんだ。」
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今日は海明学園高校2年生での初めての中間テスト。
範囲は実力テストに比べれば大した量ではないしテスト範囲は全てわかっている。お前に初めてのテストなので簡単目になっていると思う。
きっと葵は、、また。
俺が教室に入るといつものように達也が机で寝ながら待っている。これは一年生の時からの日課のようなものだ。
「お、おはよー。颯」
「おう。おはよう。お母さん、具合どうだった?」
正直この質問をするのは少し気が引けた。
しかし達也からの返事は明るく
「まあ、今は点滴うってるから心配はないよ。いつも通り咳はあったけど今までどうりだ。」
そっか。と返事を返すと達也は昨日のことについて聞いてきた。
「あのさ、俺が帰った後何してたの?まさか2人だけの夜を、、。」
過ごさねぇよ!!二人だけとか誤解招くだろうが!!
でも、ある意味2人だけの夜だったんだろうなぁ。あれは。達也に知られてはならない、貴重な夜だったのかもしれない。
「いや、あの後すぐに寝ちゃってさー。土日はとにかくあいつのための勉強会だったよ。」
「あのさ、、」と達也が何か言いかけた時タイミング悪くチャイムが鳴った。
「お前らー。席につけー。テスト始めんぞー。」
「うわ。先生来るの早っ。達也、さっきの聞こえなかったんだけどもっかい言って?」
すると達也は少し気の引いた顔で
「いや、他愛もない話だ。気にするな。」と答えた。
そうして注意事項を受けて解答用紙も配られいよいよテスト開始の時間がやってきた。
「んじゃあ今から45分間だ。よーし、始めろ。」
その瞬間から静かな教室にペンと消しゴムの音が鳴り響き始めた。
ー前半テスト終了後ー
「ふぁぁ。颯ー。解けたかー?」
「あぁ、まあな。ちょっと数学の計算でミスったっぽいけど。」
達也はいいよな。いつも点数取れて。しかも勉強なしで。なんで勉強しなくてここまで点数をとることができるのかわからない。
「英語は?」
「英作文さえミスがなけりゃ大丈夫!」
俺は絶対的な取り柄があった。それが英語のテストの結果だ。中学を含め今まで100点以下を取ったことがない。つまりは完全パーフェクト。達也でさえ敵わないのだ。
そして達也は嫌味な面で颯を見やる。
「いいよな。いつも満点で。毎回英作が!英作が!とか言ってるくせに絶対満点取ってくんだもんな。」
勉強せずに点数取れてるほうが羨ましいわボケ。颯は心からそう思った。
「そういや達也。お前買い弁だろ?一緒に行こうぜ。」
「今日は焼きそばパンだな。」
いつも達也は食べるものを気分だけで選ぶ。この前なんか気分でラーメン頼んだくせにしょうゆ味じゃなくてとんこつ味だの文句を言う様だった。
2人で食堂に向かっていると
「「あ、、。」」
そこで出会ったのは氷帝の野郎(凛香)だった。
すると凛香は引いた顔をする。後ずさりもして徐々に後ろへと下がっていった。
「颯兄さん。校内デート?」
「いや、達也に付き添ってるだけだからね?なんでこいつと付き合ってなきゃならないんだ?」
すると後ろから葵が珍しく現れる。
「颯くん、、。そういうのがやっぱり好きなんだ、」
ああ!このクソ会長!!お前は出てくるな!!ややこしくなるだろうがよ!!マジでそっちか、、。なんて思われたらどうすんだよ!!
ただでさえこいつが居るだけで迷惑なのに煽られると余計迷惑だ。
「いや、俺決してそういうのじゃねーから?てか早くしないと昼終わるぞ?」などと口述しその場を去る。
「ほら達也!さっさとパン買ってこい!!」
そして軽いうぃーす。との返事。
「えっと焼きそばパン3つで。」
注文内容が何故か直接的に聞こえくる。
あ、結構食べるんだな。飽きないのかな?メロンパン5つ食べた時よりかはましだろうけど結構なボリュームあったし絶対飽きるだろ。食べ終わった後に唇テッカテカなるだろ。
会計は450円に対し達也は財布から
「すみません。今でかいのしかなくて。」と出したのは一万円札。さらに発した言葉は
「釣りはいいんで。」
ちょっと君ぃぃぃ!!!と店員がつっこんできた。
そりゃな。お釣りめっちゃあるのに釣りはいいんで。とか言われたらつっこむわな。分かるよ、その気持ち。
そうして唇がテッカテカとなった達也たちは午後の後半テストに身を投じた。
颯と達也はいつも通り問題を時間終えたが一人、そうはいかない奴が。そう。葵だ。
理科のテスト中に頭がパンクしてしまいひたすら絵を描き続けていた。もう私はダメだ。などと言いながら
少女漫画のような絵を描いていたらしい。
こうして中間テストも終わり後日に結果を返されたので葵に確認しに行った。
するとそこにはやたらと笑顔で喜んでいる姿が。
颯はおそるおそる「葵ー。結果どうだったんだよー?」と聞くと今までにない笑顔で「え?聞きたいの??ねぇねぇ聞きたいの?」としつこく聞いてきた。
こいつ、歳聞いたら何歳に見える?って言ってくる
女並みにうぜぇ。仕方なく結果は聞いておこうと思う
「見てみて!この前な理科全体最下位だったのに下から2位になったよ!!進歩だと思わない!?やっぱり私って天才なんだわ!!」
「お、おう。そうか。おめでとう。」
どうしよう。教えたほうがいいのだろうか。
今回最下位だった奴。
中間テスト休んでたぞ。
そんなこんなでテストも終わりいつものふんわりした雰囲気へ戻った。
すると颯はふと思い出したように自分の席から外にそびえ立つ山の頂上を見た。
そういえば、凛香のこと。あいつがもし俺の知っている幼なじみの彼女なら名字はたしか、、。
学校が終わり放課後になると颯は走って凛香を屋上へと連れ出そうとした。