第八話 電波と黒猫兼精霊兼大魔獣
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「これがギルドカードねぇ」
俺はソエルの森を歩きながら、それをみつめた。どうみてもタブレット、手のひらサイズだからスマホにしかみえない。ちなみにタッチパネルなんで操作法はスマホと同じだ。
『もともとは本当に魔法陣を刻んだ紙だったんだけど、それを開発した冒険者がいてね、今のギルドカードはそういうのになったんだよ』
「いや、この世界に来てこういう機械類をみたことなかったから驚いたんだよ」
『あー、確かにね。こっちには三種の神器の冷蔵庫、テレビ、洗濯機とかもないもんね』
「情報が古い!」
いつの時代の話だ。
『3Cのほうがよかった?』
…それも古い。
そんなことはさておき、俺は慣れた足取りでクランティアル洞窟にむかっていた。
職を一応得たが、住み込みで働いているわけじゃないんで未だにあの天然テントで生活している。だからこそ、この森のことを知っておこうと、バイト以外の時間は森を探検した。既にこの森は俺の家であり、庭だ。
『…なんでだろう。涙がでてくるんだけど』
うるさい。
スキル《索敵》を習得したことで、半径1㎞以内なら、敵を感知できるし、その範囲も1㎞以内なら指定できる。便利なスキルだな。魔物に遭いたくなければ回避できるし。まあ、ときどき戦ったりもしたが。
そんなわけで、俺はあっさりとクランティアル洞窟に着いた。
「この洞窟、入ったことはねぇんだよなー」
ぽっかりと崖の下にあいた洞窟。それがこのクランティアル洞窟だ。
『ヒカリゴケダケは、光っているキノコの上に光る苔が生えてるやつだよ。たぶんみればすぐわかると思う。それと、この洞窟、いくなら気を付けて』
「…なにかあるのか?」
『わからないけど…。そうだね。たまには僕も君の役に立ちたいからね』
するとピロリンと俺のステータスが表示された。
《隠しステータス》
緒方優人 オガタユウト
HP 28/29 → 220/220
MP 9200/9200
TA 180/180
LV 12
EXP 155
NEXT 20
金 0
途中略
【剣技】 《纏》
【魔法】 覚えていません。
【魔法属性】 地水火風光闇 以降増可
【称号】 異世界の旅人・〔本当の〕勇者・捨てられた勇者・神に加護されし者・乞食になった勇者・勇者になった勇者
【スキル】
直感 LV5 逃げ足 LV3 索敵 LV7
【職業】
《勇者》
なんとなく体が軽くなったと思ったら、体力が増えていた。
『洞窟の中にいるときだけのドーピングね。これで少しは楽になるでしょ。それと、僕の出血大サービス』
今度は目の前でぽんっと音がしたかと思うと、光の珠が浮いていた。
『洞窟の中は暗いからね。普通の冒険者なら松明とか買うんだけど、今の優人君にはそれは無理だし、魔法もまだ使えない君に、その光源を貸してあげる。それも洞窟から出たら消えるからね』
「わかった。サンキューな」
たまにはこの神も役に立つ。
俺はその光の珠と拾った木の棒をもって、洞窟に入った。神がいってたとおり、中は一切の光源がない暗闇だ。足元は岩がでこぼこしていて歩きにくいし、しかも相当奥は深そうだ。何回か分かれ道に遭遇しつつ、歩き始めてから30分ほどするが、まだヒカリゴケダケはみつからない。
『おかしいなぁ、すぐにみつかると踏んでたんだけど』
「誰かが先に採集しつくしたのかもな」
と俺がそういった瞬間、手に持っていた光源が急に光を失い、なぜか体が重くなった。
「な、なんだよこれ」
急に真っ暗闇になり、俺は慌てて壁を探す。
「キーッキーッ」
頭上で魔物だか動物だかのコウモリの声がした。
『ごめん、この洞窟のせいで君に僕の加護が届かなくなっちゃったみたい』
「…電波か!」
そんなトンネルに入った時の携帯じゃねぇんだからさ!
ウィンドウ画面だけはなぜかみえる。だけど、不思議なことにこのウィンドウ画面は光っているわけじゃないらしい。それはみえるのに、周りはなにもみえない。不思議な感覚だった。
つか加護が携帯電波並みってどういうことだ。先が思いやられる。
『ああああ、怒らないで呆れないで!ステータスはみえるから、もし君に敵意をもつものがでてきたらすぐにわかるよ』
そう。ステータス表示は、俺に対して敵意をもっている場合は自動で開く。それ以外は俺が意識すれば開く仕様になっている。
「わかった。あんたに頼りきりで何も他の光源をもってなかったのは、俺の落ち度だしな」
『優人君……』
「次からはあんたになにも期待しない」
『怒りでも呆れでもなくあきらめっ?!ごめんって見捨てないで……』
それを無視して一歩踏み出したそのとき、足になにかが引っかかってブチっとなにかが切れる音がした。そのあと、暗闇の奥に二つの光が浮いているのに俺は気づいた。
「なんだ?」
《ステータス》
セレネ
HP 4900/4900
MP 18760/18760
TA 580/580
LV 72
EXP 39867
NEXT 69074
途中略
【魔法属性】 地闇
【称号】 黒猫・使い魔・精霊・大魔獣・闇を統べるもの 以下略
【スキル】
逃げ足 LV76 索敵 LV52 直観 LV66 影縛り LV88
【職業】
《黒猫》《使い魔》《闇の精霊》《大魔獣》 以下略
ステータスが自動で開いた。こいつは、敵だ。しかも強い!
うなり声が聞こえる。
俺は木の棒を構えた。だが周りがみえない以上、迂闊に振り回すこともできないし、逃げるのも難しい。だんだん二つの黄色く丸い光が近づく。俺が両手に力を込めたそのとき、神が寄越した光の球が復活する。
「くぅ」
まぶしさから目が慣れてそれをみると、しなやか体躯をした真っ黒の豹のような生き物がいた。
そしてあの二つの黄色い光は、そいつの目だったとわかる。
なんだ、こいつ。
『ああ、この子の力だったんだね。僕の加護を阻害していたのは』
「え…」
俺が驚くと、その黒豹は俺をしばらくじっとみつめる。俺もそれをみつめ返すと、そいつの体は縮み、黒猫の姿になった。黒猫は俺に駆け寄る。
「え、ちょっ!」
噛まれると思いきや、俺の足もとにじゃれるようにまとわりついてきた。
「にゃー、にゃー」
警戒しながらごろごろと喉をならす黒猫を撫でると、黒猫は嬉しそうに俺の手にすり寄ってくる。
『この子、闇の魔獣だね。今の僕とはいえ、神の力を阻害するなんて相当力を持ってるよ』
「ステータスでみた。使い魔、闇の精霊、大魔獣ってあったぞ」
『おやすごい。じゃあこの子変種だね』
「変種?」
「にゃー」
黒猫は返事をするように鳴く。
『魔獣でありながら精霊でもあるってのはとても珍しいんだよ。ちなみに魔物と魔獣の違いは、言葉を理解できるかできないか。魔獣は人の言葉を解す』
「おまえ、俺の言葉がわかるのか?」
「にゃー」
黒猫は目を細めて頷く。なんとなくその目に知性の色がある気がした。
ん、なんだこれ?
黒猫の近くにワイヤーのような切れた紐がおちていた。俺が引っかかったのはこいつだな。
『それ、この子の封印だね。優人君が解いちゃったんだ』
「は?」
「にゃー?」
黒猫は不思議そうに俺をみあげる。そうか、こいつもステータスウィンドウはみえないんだな。
「あんた、封じられてたのか?」
「にゃー」
『そうだ、っていってるみたいだね』
「そうか」
そのとき、俺の《索敵》に引っかかる気配があった。
「キーっキーっ」
《ステータス》
アカマダラキュウケツコウモリ1(好みは美女の血)
HP 120/120
MP 65/65
LV 10
アカマダラキュウケツコウモリ2(好みは熟女の血)
HP 120/123
MP 44/44
LV 10
アカマダラキュウケツコウモリ3(好みは美少年の血)
HP 99/99
MP 52/52
LV 9
頭上をみると、3匹の魔物が牙をむき出しにしていた。
「毎回思うんだが、魔物のいらない情報を載せすぎじゃないか?!バツ8とか、血の好みとか、さ!」
一匹飛んできたコウモリを棒ではたき落とし、もう一匹飛んできた奴をよける。
『そんなこといわれても、なんかこういう仕様になっちゃってるから、もうどうしようもないんだよねぇ。ついでにいうと、優人君てあのコウモリ達の好みにあてはまってないのに、襲われてるってなんていうか…さ、不幸だよね』
うっさい!
『…優人君、危ない!』
「あっ」
コウモリ3が魔力を使い、風を起こした。魔力によって生み出されたらしい風の刃が俺にせまる。
「ちっ」
とっさに棒で防御するが、俺にはなんとなくそれが耐え切れないとわかっていた。だがその風の刃があたる瞬間、黒い影が滑り込んで風の刃をかみ砕いた。守るように俺の前に立つそいつは、再び黒豹となったあの黒猫だ。
「…風ってかみ砕けるものだっけ?」
『普通は無理だねぇ』
のほほんというな。
俺と神が呆然としている間に、黒豹はしなやかな動きでコウモリを捕えると、あっという間に倒してしまった。
「がうっ…にゃー」
再びしゅんっと黒猫に戻ると、黒猫は誇らしげに尻尾を揺らして俺をみあげる。
「えっと、とりあえず…ありがとうな」
「にゃ!」
またすりすりと黒猫はすり寄る。ちょっとくすぐったいな。
『あのー、優人君。この子、君との契約を望んでいるみたいだよ』
「は?」
「にゃー!にゃー!にゃ、にゃー」
うっ、そんな訴えるような眼差しでみられても…。
契約ってなんだよ。
『魔物、魔獣、精霊と結ぶ従属の契約のことだよ。まあわかりやすくいうと、使い魔になるってことだね。正式には従魔という』
「なんで俺?」
俺はこの黒猫のステータスをみた。俺みたいな雑魚と契約を結ぶってのは理解しがたい。
「にゃー、にゃー」
『…なんかね、君のにおいが気に入ったみたいだよ』
そんなことでか!
「…悪いが、世話をする覚悟がないならペットは飼うなってのが俺の家のルールでな。契約は無理だ。それに、俺はヒカリゴケダケを早くみつけなきゃいけない」
正直いって、契約なんぞしている暇がない。
「にゃー」
『ヒカリゴケダケの生えている場所なら知ってるわ。契約を結んでくれたら場所を教える。ついでに私はそこそこ強い魔獣だから、契約しておくとお得よ。…だってさ』
今の短い鳴き声でどんだけの意味が込められてんだよ!
つか、脅迫?!
「…なんでそんなに俺と契約したいんだ?」
「にゃ~」
黒猫はただ、俺の足にすりすりとすり寄るだけだった。
「…はぁ。わかった。契約を結ぶ」
「にゃ!」
で、契約を結ぶにはどうしたらいいんだ?
『この子に新たな名前をつけてあげるんだよ』
「名前?」
「にゃ~」
黒猫の名前…ね。
俺はじっと黒猫を観察する。まったく汚れた様子のない綺麗な黒毛と、満ち欠けをする瞳。
「…月夜」
「にゃ?」
「あんたの名前は月夜だ」
「…にゃ!」
「おっと」
『気に入ったみたいだね』
飛び込んできた月夜を受け止める。
「…ま、気に入らないわけじゃなさそうだな」
「はい、確かにヒカリゴケタケですね。では本登録に移らせていただきます」
ギルドの受付嬢はにこやかに俺から仮ギルドカードを受け取る。
「これが正式なギルドカードになります」
仮ギルドカードよりも新品のそれを渡され受け取った。
「それはあなたが冒険者であり、ギルドの一員であることを示すものです。毎日ギルド日報という情報が届きます。さらに、そのギルドカードから特許申請ができます。もし、ユート様が新たな魔法道具、魔法などの新たな技術を開発した場合、それらを他に利用されたくないとき、もしくは制限をされたいときは、特許申請をしてください。申請した時点でその技術を行使する権限は製作者がもつこととなります」
ほう。
「依頼をお受けになりたいときは、そこの掲示板からお選びになり、受付にご報告ください。依頼にはそれぞれランクがあり、また冒険者にもランクが存在します。ユート様はFランクです。依頼はご自分のランクと同じか、一つ上の依頼のみ受けられます」
ギルドカードには俺の名前と性別、ランクが書かれていた。
「また、全国にあるギルド支部、および本部は冒険者方のお金をお預かりするサービスを展開しております。もし持ちきれないなどのお困りの際はお近くの冒険者ギルドにお預けください。預けたお金の金額情報は全ギルドが共有しておりますので、必要な時にお引出しいただけます。また、お預かりしている金額も、お手持ちのギルドカードからご確認できます。説明は以上です。なにかご質問はありますか?」
「いえ、ありません」
「では、これで登録を終了させていただきます。お疲れ様でした」
受付嬢は綺麗に頭を下げた。
俺がギルドを出ると、外で待っていた黒猫が駆け寄ってくる。
《ステータス》
月夜 ツクヨ
HP 2600/2600
MP 8000/8000
TA 320/320
LV 36 (72)
EXP 39867
NEXT 69074
途中略
【魔法属性】 地闇
【称号】 黒猫・使い魔・精霊・大魔獣・闇を統べるもの 以下略
【スキル】
逃げ足 LV76 索敵 LV52 直観 LV66 影縛り LV88
【職業】
《黒猫》《使い魔》《闇の精霊》《大魔獣》 以下略
俺と契約したことで、月夜はステータスに制限を受けることになった。俺に従属するということは、主の能力の制限をうけるらしい。つまり、俺が強くならなきゃ月夜は本来の力を出せない。
なんで制限を受けてまで俺と契約したんだか。
まあ、なにはともあれ、ギルドカードは手に入った。
『これで失業しなくて済むね!』
ああ。
「まだ、時間はあるな。今からでも、仕事するか」
俺は急ぎ足でパン屋にむかう。
「おっさん、まだ仕事ある…」
『げっ』
「お、なんだユート、用事は終わったのか?あ、これ食うか?」
店の奥に入った瞬間刺激臭がする。そして椅子に座って少し早めの夕食を食べているおっさんの前には、ドロドロに溶けた焼き魚がおいてあった。
魚を焼いただけなのになぜ溶けるのか…。
「おっさん…。俺もう料理はするなっていったよな!」
「いや、でも夕飯が…」
「夕飯ならもう作っておいただろうが!ちょっとそこに正座しろぉぉぉ!」
『やれやれ優人君、お疲れ様』
腕が痛かった、という言い訳を盾にして、最後の部分が駆け足になったことをお詫びします。
副題書くのを忘れておりました。
副題 スマホなのに通話機能なし
>それ、iP○d touchやぁ〜www
>LINEかSkypeいれたら通話機能なくても大丈夫!
感想をくださった方が副題につっこんでくれました。さらにつっこみにつっこんでいただきました。ありがとうございました。