第五十六話 その後の海賊
優人達より一足先に水聖殿の湧水道を使って地上に出たツェツィーリエ達は、湧水道の出口が森の中であることに驚いた。
「まさか海底が森に繋がってるとはねぇ。まずは、ここはどこかだな。おい、一番近い街を探してきな。裏の酒場で売れるもんがある。あと、アラルド商会に連絡を取ってくれ」
「あいあいさー!」
部下の一人が走ってその場を去っていく。
「お頭、体は大丈夫ですか?」
「ああ、お前達が気にすることじゃない」
よもや、あそこまで追いつめられるとは思ってもいなかった。あの白いイルカのお陰で一命は取り留めたものの、受けた傷は深く、体は万全ではない。
そして少なからぬ部下たちが、命を落としてしまった。受けたダメージはあまりにも大きい。
しかし、それを補って余りあるものを得たのも確かだ。
まずは、あの海底の城で手に入れた宝だ。
それから、面白い情報もたくさん得ることができた。
勇者の遺物と、それを探している奴らがいるということだ。おそらく、そいつらはただの人間ではない。
勇者の遺物などという酔狂なものを狙っているのは、せいぜい、あの気の狂った商会の奴らぐらいだと思っていたのだが……。それは、自分達にとって最大のお得意さまであり、同時に最も恐れを抱いている狂気の集団――。
「さて、これからどうなるのかね、ユート」
ツェツィーリエはおそらく、またあの坊やと会うことになるだろうと確信めいたものを感じながら、木の下へ腰かけ、束の間の休息を取った。
捨てられ勇者2巻について活動報告に載せています。ご興味のある方はご一読ください