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第五十話 海底の古戦場 エンリケ

『海底の古戦場 エンリケ』



 なるほど、一応目的地には辿り着いたわけか。だが、この水流だと左の道には進めない。



「とりあえず、右の道に行ってみるか」

「そうですね」



 俺達はとりあえず右の道に進んでみた。すると、再び左右のに道が分かれている。覚えやすいようにさらに右に進むと今度は三つの道に分かれていた。



「ここは、もしかししなくても迷路になってるのか」

「そうみたいですね。このままだと入口に戻って来るのも大変そうです」

「そうだな」



 今のところ罠のようなものに遭遇していないが、これが人工的に作られた迷路なのは確かだろう。ところどころ出現している水流も故意に生み出したものに違いない。となると、ここは抜けるかどこかに辿り着くための正しい道筋が存在しているはずだ。ゲームとかのダンジョンならどこかに正解のヒントとかありそうだが、今のところそれらしきものはない。

 侵入者を阻むためのものならそもそもヒントとかも残したりはしないか。となると、時間はかかるが一つずつ潰していくしかないな。



「時間はかかるだろうが、一つずつ道を潰していこう。どの道を通ったかわからなくなって抜け出せなくなるのはマズイ。手間だが地図を作るか」

「おお!」



 なにかメモをする紙がなかったか(かばん)を漁ると、ぱっと出てきたのは教会で手に入れた地図だった。さすがにこれはメモには使えないかと思いつつも広げてみると、俺は首を傾げる。そしてエレノアを見上げた。



「なあ、これって今いる場所じゃないか?」

「え?」

「こけ?」

「んにゃ?」

「きゅー」



 全員が俺の手の地図を覗き込む。

 その地図には最初教会の周辺一部だけが記入されていたはずなのに、今はこの迷路の一部だけが書き込まれている。しかも、以前は土地全体の地図だったのに、今はこの迷路に絞って表示されているようだ。更にこの地図上にある三角、俺達の現在地を示してるんじゃないか?まるで、ゲームのマッピングのようだ。



 ……マッピング、か。



「まあ、確認してみるか」



 俺はちょいちょいとエレノア達に合図して、地図を広げたままさっきは選ばなかった道を進んでみた。すると、通った道が浮かび上がって記入されていく。そして三角も移動している。



「これ、私達の動きに合わせて動いてる?」

「みたいだな。メモする手間が省けそうだ」



 これも勇者の遺物だ。なるほど、今までの勇者が次に召喚される勇者のために残した物ってのは確からしい。こういう冒険に役立つアイテムを作ってくれたということだ。それにしては、この俺について回る魔導書は俺を呪ったりしてるし便利アイテムとは言えないかもしれないが……いや、俺の使う魔法の補助もしてくれるし異世界知識の補完もしてくれていると考えるとやはり便利と思っていいのかもしれない。となるとますますこの獣人になる呪いが意味がわからないんだが。



「とりあえずこの地図がどれだけ正確かも確認が取れてないわけだし、念のため選んだ道に印をつけながらあるいてみるか」

「あ、なるほど。印をつければ帰り道がわかりますね!」



 俺は足元に落ちていた貝殻を拾い、それを選んだ道の壁に擦りつけて白い印をつけながら歩いた。それと同時に記入範囲の増える地図も確認しながら歩いたが、やはり自分達が歩いた道を表示するもののようだ。



 その地図のおかげで道を一つ一つ潰して歩いていると、一気に広い空間に出た。



「ユートさん!海の中に噴水がありますよ!」



 エレノアが目を輝かせて声を上げた。その言葉通り、拾い部屋の中心に、ここは海の中のはずなのに噴水があって光る水が吹き上がっている。そしてまた落ちた水は幾筋もある水路を通り、部屋の壁を突き抜けて別の場所に流れているようだ。水の中に水が流れている水路があるというのはなんだか不思議な光景だ。



「ここは、なんのための場所なんでしょう?」



 確かに、ここが人口の建造物である以上、この部屋にはなにか意味があるはずだ。ここが古代の街の遺跡とかであれば普通の水道技術だったり生活水路のあとだったりとかしたかもしれないが、この場所はそんなものではないはずだ。ここが迷路であるというなら、その迷路の維持に必要な物か?いや、別に飲み水の供給とかそんなものではないだろう。だとしたら、ここが迷路だというなら迷路を攻略するヒント……とか。



「うーにゃー!」



 部屋の奥まで行っていた月夜がとある壁の前で声を上げた。その場所にいってみると、壁に文字が書いてある。



「『囚われしものを解き放ち正しき順番に進め。この場を最も知る者の導きを探れ。黒は最後の導き手』だと?」



 壁にそう書かれていて、更にその下に『赤、緑、青、紫、黄色、橙、白黒』と色の名が並んでいる。



「ユートさんすごいですね!聖語が読めるなんて!」

「は?」



 せい……ご?



「今は失われて聖書の原典や古文書でしか残っていない文字なのに、覚えておられるなんてすごいです!貴族は教養として勉強するので私も読めますが、なかなか覚えられなくて苦労しました」

「そうなのか」



 ……と言われても、俺はなんとなく読めてしまうのでどう答えたらいいのかわからない。だが、エレノアのこの口ぶりからすると聖語が読めるのは一般的ではないのか。それはあんまり目立ちたくない俺としては注意しないといけないんじゃないのか?



 俺は改めて壁の文字を見るが眉根を寄せる。



 まずい、普通の字と聖語とやらの見分けがまったくつかない。



「まあそれはともかく、たぶんここは迷路を抜けるための仕掛けを解いたりヒントをもらったりする部屋なんだろうな。先に進むにはちょっとここを調べたほうがいいかもしれない」

「なるほど。えっと、具体的にどういうものを探したらいいのでしょうか?」

「それは今の段階だと何とも言えねーな。とりあえず見つけたもの、変わったところ、気になるところは全部教えてくれ」

「わかりました!」



 エレノアと月夜達はそれぞれ散らばって調べに行く。俺自身もこの部屋を端から見ていくことにした。



 端っこから全体をみてみると、この空間の不思議さが把握できる。まず水の中に噴水と水路があり、それを光る水が普通の水と混じることなく流れているということ。次に、水路は壁を突き抜けるだけではなく壁自体にも走っていて、天井を突き抜けているものもあってしかもちゃんと光る水は流れているということ。そして天井の中央にくっつくように半球状の光る水の塊があること。



「うーん。不思議ということしかわからん」



 再び水路に近づくと、エレノアが水路をじいっと眺めていた。



「ユートさん、これなんでしょう?たくさんある水路の中で何本かだけそばにさんごだったりイソギンチャクだったり海藻の株だったりがくっついているみたいなんですが」

「確かに、ちょっとわざとっぽいな、こういう配置」

「こけっこけー」



 この部屋には水路のそば以外にサンゴやイソギンチャクや海藻などはない。その上に全ての水路にそういうものがあるわけではない。特定の水路だけというのは不思議だ。



「んにゃー!んにゃー!」

「どうした月夜」



 声を上げた月夜に近づくと、月夜は天井を見上げている。俺も視線を上げればさっき見えた半分の水球の真下だった。



「あれになにかあるのか?」

「んにゃっ!」



 何故そんなに目を輝かせている。そして何故そんなに跳びはねている。



 水球をよくよく見ると、何かの影がみえた。あれは、魚か!



「おい、よだれでてるぞ」

「んにゃっ?!」



 月夜は前足で口元を拭いた。



『乙女にあるまじき失態……って言ってるね』

「乙女て……」




俺の呟きに気づかずエレノアも水球を見上げる。



「あのお魚達は、あそこから出てきませんね」

「そうだな」

「さっきの壁の言葉ってなんでしたっけ?」

「確か、『囚われしものを解き放ち正しき順番に進め。この場を最も知る者の導きを探れ。黒は最後の導き手』だったか?そうか、囚われしものって、あの魚か?」

「そうかもしれませんね!」



 となれば、あの水球から魚を出さないといけないのか。



「やきとり!」

「こけっ!」

「きゅー」



 白イルカがやきとりを乗せ、水球に近づく。そしてやきとりがその水球をくちばしでつついた。やきとりのつつく攻撃。すると水球は簡単にばちんっという音をたてて割れた。



「お、うまくいったな!って月夜、お前食うなよ!」

「にゃ~」

「そんな残念そうな顔してもダメだからな」

「ユートさん、後ろ!」

「は?!」



 エレノアの叫びで振り返れば、ぴろりんという音と共にステータス画面が現れ、そして剣で切りつけられる。



「んーにゃ!」



 月夜の影がそれを弾き、俺はその場を離れた。



《ステータス》



 鉄仮面 (欲しい物 笑顔になれたあの日々)



LV 41


HP 0/0


MP 5563/5563


以下略




 鉄仮面のくせにとんでもないもの取り戻したがってるぞ!てか鉄仮面のくせに笑顔になれたことがあんのかよ!



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