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第十五話 そこになにかいる

短くてごめんなさい!次の次はがんばるから!


1月27日 文加筆

俺達が案内されたのは、礼拝堂と繋がった宿舎だった。廊下を挟んでずらりと並ぶ部屋の一室に男性を運び、ベッドにうつ伏せに横たわらせる。


「すぐに魔法水をもってきます」


怪我人をみてすぐに俺達を教会の中に入れてくれた女性は、修道服っぽいものを着ていた。だがところどころ自分の知っているものとは違うみたいだ。シスターなんだろうか。

彼女が魔法水を取りに行っている間に俺達は意識のない男性の服を脱がす。止血していた包帯をとると、背中の傷が現れた。


「傷、開いていますね。感染症になっているかもしれません」

「ああ」


エレノアは慣れているのか手早く傷口を酒で消毒している。


「これ、魔法水です」


戻ってきたシスターが魔法水の入ったビンを手渡す。さっとそれを受け取った俺は傷口に魔法水をかけた。


「それ、飲ませてください。感染症にも効果があります」


俺はエレノアの指示どおり男性に魔法水を飲ませた。シスターが予想していたのか、吸い飲みを用意してくれていた。

改めて包帯を巻き直し止血したあと、俺達はふぅ、と息をついた。今の俺達にできるのはこれくらいだ。


「まだ油断はできませんが、これで一応大丈夫でしょう。ところで、あなた方のお話をきかせていただけませんか?なぜ回帰の霧の溜まり場へ?」

「回帰の霧の溜まり場?」

「ここの霧の迷宮のことです。ここに来るまでに、霧に行く先を阻まれませんでしたか?」

「ああ、確かに霧がでてたな」

「ここらあたりの霧は自然発生した魔力から派生したものなのです。この霧の中に入ると約一か月外にでることができません」

「「一か月?!」」


俺とエレノアの声が重なった。


「月に一度の周期で霧が晴れますので、その隙にこの霧の迷宮を抜けるのです。ですがなにも知らずこの霧に入ると、一か月間彷徨いますので普通の人間は死んでしまいます。そこで、この教会が建てられたのです」


あ、やっぱりここは教会であってんだな。


「この霧の特性として、台風の目のように霧の中央部は晴れています。霧に入って彷徨うと大抵この場所に辿り着くのです。この教会はその目の部分に建てられ、迷い込んだ方達が霧が晴れるまでの間宿泊する場所として機能しているのです」

『この世界にはね、自然発生した魔力から派生した迷宮、優人君に馴染のある言い方でいうと、ダンジョンとかラビリントスとかが複数存在しているんだよ』


急に現れたウィンドウ画面に俺は面食らう。


おい、いきなり出てくんなよ。


『そんなこといって、僕がいなくて寂しかったでしょ?』


10デシリットルくらいな。


『少な!しかもデシリットルって……。僕もちょっといろいろあってね。応えてあげられなくてごめんね』


「私達は、森で迷ってここに辿り着いたんです」

「森……霧を注意する看板はありませんでしたか?一応複数設置しているのですが」

「えっと、みませんでしたよね?」

「ああ」


そんな看板はみていない。


「そうですか。また霧が増えたのですね」

「霧が増えた?」

「最近、この霧が漂う範囲が広がっているのです。そのため看板を設置してもすぐ霧の中に入ってしまって……。それで、この方の怪我はどうされたんですか?」


俺は彼女に、この男性と出会ったいきさつを話した。


「そうでしたか。それでこんな怪我を。一応傷の治療はできるくらいの準備はあります。霧が晴れる日まで約10日の間はどうぞ、この教会でお過ごしください」

「ありがとうございます」

「あ、名乗り遅れて申し訳ありません。私はこのブルイヤール教会の司祭、アウローラと申します」

「あ、私はエレノア・フェレーナ・えね……」


俺は反射的にすぱーんとエレノアの頭をはたいた。


『キレーにはたいたねぇ。なんかスリッパがみえた気がするよ』


迂闊に皇女の名前を名乗ってんじゃねぇよ。


「あ!えと、エレノア・フェレーナです。お世話になります」


俺の視線の意味を悟ったエレノアは素直に頭を下げる。


「俺はユート・オガタだ」

「はい。よろしくお願いします」


アウローラさんはにっこりと笑った。







このブルイヤール教会に辿り着いてから2日経った。

今ではすっかり雨もあがって、日がさしている。にもかかわらず、相変わらずあの霧はこの教会を囲むようにずっとそこにあった。まあ、この教会を中心に半径2㎞くらいの範囲は霧が漂わない。その限られた土地にはところどころに木や畑や、井戸、様々な建物があった。

おかげで食糧には困ることはないだろうな。


俺とエレノアはそれぞれ一室もらって過ごしている。あの怪我をしている男性は未だ目覚めず、エレノア、アウローラさん、ときどき俺というローテーションで常に誰か付き添うという状態だった。


だが、この教会のことでいくつか気になることがある。


一つ、ざっと教会内を案内してもらったんだが、どう考えてもこの教会はアウローラさん1人で管理できるほどの規模の施設ではないように思えたこと。


二つ、俺が借りている一室は宿舎の1階の部屋なんだが、なぜか2階でドタドタと足音がしたこと。


アウローラさん曰く、この教会にはアウローラさんだけしかいないらしい。2階の足音がアウローラさんの足音だといわれればそれだけだが、どう考えても複数人の足音のような気がする。


三つ、昨夜のことだ。俺が部屋のベッドで寝ていると、部屋の外から声がきこえた。


「さあ、トイレは静かにいくのですよ」

「はーい!」

「しーっ!」


片方はアウローラさんの声だったが、もう1人はいったい誰だったのか。俺はなにも音をたてないよう寝たふりをしていたが、少しいびきをかいてみた。

するとあからさまにドアのむこうで誰かが緊張を解いたのが伝わったので、俺は深くつっこまないことにした。


四つ、俺が教会内でうろうろしているとき、いくつかの小さな生き物が動く気配を感じること。そして時折泣き声がきこえること。


ことここに至ると、アウローラさんがなにを隠しているのかは予測がついてしまった。

その理由はわからんが、ステータスが表示されないから俺達に敵意はないんだろう。月夜もやきとりもみてみぬ振りをしていることだし、俺もなにもいわないことにした。


そしてこの教会滞在三日目にして、俺はこの教会の秘密を知ってしまうことになる。


この日俺は普通に寝てたんだが、夜中に喉が渇いたので食堂にむかった。このとき俺はなにも気配を感じていなかった。


そして食堂で明かりをつけた瞬間、俺は目の前の光景に目を見開いた。


食堂はそこそこの広さがある。中央には長机がおいてあるんだが、その机にずらりとならんだ食事と、それを食べている大勢の子供達がいた。


だがおかしいのは、その子供達には全員、耳がついていたこと。


『いや優人君、その言い方じゃ誤解を招くよ』


ああ、そうだな。正確にいえば、獣の耳がついていたこと。獣の尻尾がついていたこと。角が生えていたこと。


「ど、どうかお見逃しください!さもなくば、私は、私は!」


いやいや、なんでアウローラさんは包丁をこちらにむけているんだ。


「いや、とりあえず説明を求めます」




俺は両手をあげてそういうしかなかった。











みなさん!お待ちかねの獣耳、獣人達の登場ですよ!


本当は神の『寂しかったでしょ』のセリフのあとに、

『だってひどいと思わない?前回僕の出番一個もなかったんだよ?!今まで僕が出演しなかった話なんて幕間と第一話しなかないのに!しかもそれがタイトルになってるし。優人君くらい寂しかったっていってくれてもいいじゃない!』

「おい、メタ発言やめろ!」


というセリフを入れようか迷いましたが、やめました。


副題 勇者なのに、降伏のポーズ

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