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第十四話 親衛隊=山賊

「もういいから」

「でも……」

「もう充分回復した」

 俺は未だに魔法をかけ続けるエレノアの手をとめた。

「月夜も、悪かったな。下敷きにして」

「にゃー」

 月夜は気にするな、と鳴く。猫はどんな高さから落ちても無事でいられるというが、月夜は地上につく直前、巨大化して俺とエレノアの下敷きになり俺達を庇った。

「猫ちゃん、ありがとう。私の魔法で回復してあげられればよかったんですが……」

 魔獣は己の魔力によってのみと自然回復しか回復できないという。例外は、契約を結んだ場合。主の魔力によって魔獣は回復することができる。だからこそ、魔獣は主従の契約を結ぶ。Give and take.の関係なんだそうだ。

だが月夜は今制限を受けているため回復できず、俺もまだ回復できる魔法を習得していない。

「コ、コケー」

「あー、もうわかった。落ち込むなよ。どうせ俺と契約したから能力を制限されて、巨大化した状態を保てなかったんだろ」

「コケ」

 落ち込むやきとりは頷いた。もう展開は読めてんだよ。

「……治癒の光よ集え、ゲリール」

 俺は月夜の体に手をかざす。エレノアの見様見真似でやってみた。すると、手のひらの先が光り、傷ついた月夜の体が癒える。

「……できた」

「にゃー!」

 月夜は立ち上がった。

「よかった!」

 エレノアはほっとしたように肩の力を抜いた。そしてエレノアは痛む足に力を入れて立とうとする。

「……ほれ、あんたも」

「え?」

「俺達にばっかり魔法かけて、もう魔力底をついてんだろ。まったく、自分の怪我には魔法かけずになにしてんだよ」

「あ、すみません」

 俺はエレノアの足に治癒魔法をかける。初級魔法なら、みただけで使えるみたいだ。

「動けるか?」

「……。はい、動けます」

 何度か足を動かし確認すると、エレノアはふらつきながら立ち上がった。

「あの、ありがとうございます」

「ああ」

 エレノアは戸惑ったように視線を迷わせた。そのあとぐっとなにかを飲みこみ、周囲を見回す。

「ここはどこなんでしょう?」

「さあ?俺も飛ばされたときは位置を確認する暇なかったからな」

 俺も周りを確認すると、森の中のようだ。だが、ソエルの森ではない。ソエルの森なら一発で現在地がわかる。

 仕込み刀も調子をみてみたが、全く問題なかった。けっこう丈夫みたいだな。

「とりあえず、歩くか」

「はい」

 俺達はとりあえず森の中を歩いた。さっきから心の中で神に話しかけるが、(こた)えはない。

「巻き込んで、悪かったな」

「え?」

 彼女はきょとんと首を傾げる。

「俺が、やきとりに乗せたりなんかしなければ、あんたはこんなとこに飛ばされることもなかったのに」

「……」

 エレノアはぽかんと俺をみる。

「なんだよ?」

「いえ、巻き込んだのは私のほうなのに、と思って。城から逃げ出した私があなたを巻き込んだのです。すみませんでした」

「いや、それは……」

 そこで俺は口をつぐんだ。

 城に侵入してた俺の自業自得ともいえるしな。だが、侵入したと堂々ということもできない。

「にゃー」

 なぜか月夜はエレノアに頭を下げた。

 おまえ、なにかしたのか?

「コケ~」

「あー、おまえはもう泣くな!」

 しばらく歩いていると、森の中に小道があった。とりあえずそれに沿って歩いていると、後ろの繁みがガサガサと揺れた。

「なんだ?」

「コケッ」

「う、うう……」

  現れたのは1人の赤毛の男性だった。その人は体を折って俺達の前に倒れる。

「大丈夫ですか?!」

 慌てて駆け寄ると、ところどころに切り傷と擦り傷があり、背中に大きな刀傷のようなものがあった。

俺はすぐにゲリールを唱えるが、初級魔法ごときで塞がる傷ではない。

「うう、僕のことはいいから。早く逃げて……」

「逃げる?」

 男性はそれだけ振り絞っていうと、気を失ってしまった。その時、一斉に後方でステータスが表示される。



《ステータス》



アイドル親衛隊所属な山賊1


HP  360/380


MP  32/40


LV 27



アイドル親衛隊所属な山賊2


HP  520/520


MP  26/26


LV 12



アイドル親衛隊所属な山賊3


HP  545/550


MP  55/66


LV 27



アイドル親衛隊所属な山賊4


HP  234/234


MP  33/33


LV 23






 山賊かよ!しかも全員アイドル親衛隊。

 現れたのは髭を生やしたいかにも、というおっさんの山賊たちだった。

「おっ、べっぴんさんもいるじゃねぇか」

「今日はついてますね、兄貴」

 ニヤニヤと湾曲刀をもったおっさんたちは舐めるようにエレノアをみる。

「ちっ」

 俺はエレノアを背に庇って仕込み刀を抜く。月夜ややきとりも臨戦態勢た。

「さて、そっちの坊やは持ってるもんとそのべっぴん置いて去りな。今なら見逃してやるよ」

 あのニヤけ顔に苛立ちながら俺が傘を振り回そうとしたそのとき、俺の目の前にブロンドの髪が舞った。

「なっ!」

「はっ」

 エレノアは片手半剣を駆けながらすらりと抜き、一瞬で相手の懐に入って柄の部分で顎を下から突き上げ、そのままもう一人の山賊の湾曲刀を叩き折って急所を蹴り上げる。

あとの2人が後ろから刀を振りかかるが、彼女はそのまま刀を弾き、裏拳で一人の顔を潰したあと、もう1人は肘鉄砲で隙を作り、刃をたてず平たい部分で相手の頭を叩きのめした。

 あっさりと気絶する4人をみて、俺は呆然とする。それくらい早業だった。

「ふぅ。大丈夫でした?」

 エレノアは剣をしまうと、にこやかにきいてくる。

 大丈夫どころか、俺は一歩も動いていないんだから、怪我をするはずがない。

「大丈夫だ」

「そうですか。よかった」

 俺は寝転がしたままの男性をみる。どうやら山賊に襲われて追われてたんだろうな。








「……あの、代わりましょうか?」

 俺は男性を背負いながら歩いていた。あのまま放っておくわけにもいかなかったしな。エレノアは魔力を使い果たしているから魔法は使えない。今は男性に最低限できる手当を施し、かけないよりはマシかと俺がゲリールとやらをときどきかけている。

「いや、大丈夫だ。俺はまだいける」

「でも、足を引き摺ってますし……」

「……」

 男性は背が高かった。おかげで俺が背負うとどうしても、地に足を擦ってしまう。だが、女に背負わせるってのもなんか気分悪い。

「にゃー」

「コケッ」

 ああ、そうだよ。ちっぽけなプライドだよ。

おまえらがいうとおり、確かに怪我人を引き摺って運ぶのも問題だしな。

「悪い、頼む」

「はい」

 エレノアは男性を受け取ると、軽々と背負いあげて歩いた。

「……」

「どうされました?」

 急に無言になった俺を振り返り、エレノアが首を傾げる。

「いや、なんでもない」

「そうですか?」

「ちなみにあんた、何cmだ?身長」

「え?168cmです」

「……」

 しばらくあてもなく歩き続けると、いつの間にか周りは霧に囲まれていた。

「視界が悪いな」

「そうですね。大丈夫でしょうか?」

 俺達は木に印をつけながら歩くが、いっこうに先はみえず、ここがどこなのかもわからない。

更に何度か魔物に遭遇しもしている。その度にやきとりや月夜が魔物を倒すが、霧の奥に進むにつれて魔物と遭遇する頻度が多くなっている気がした。

「ちっ。雨降ってきやがった」

 上からぽつぽつと降りそそぎ始めた滴。俺はフードを被り、エレノアに傘をさしかける。だがこの雨は怪我人にはよくない。一応男性の様子を確認すると、熱が出ている。ますますマズイ。

 どこか雨宿りはできないかと足を速める。

「あ、あれ教会でしょうか」

 エレノアの視線の先には、教会らしき建物があった。本格的に降り出しはじめたこともあって、そこに雨宿りすることにする。滝のような雨で周りはみえない。

 なんとか 教会の扉の前にたどり着いた。手拭いで軽く体を拭いたあと、何回かノックする。

「あのーすみません!怪我人がいるんです。今晩泊めていただくことはできないでしょうか!」

 しばらく間があった。俺達がもしかして誰もいないんじゃないかと顔を見合せた時、扉が開かれる。

「どちらさまでしょうか?」

 硬い顔をした女性が顔をのぞかせていた。

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