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第十三話 神のひとりごと

嘘ついてごめんなさい!これが今月最後の投稿です!


11月26日 リリアの混乱のところに加筆しました。

「あなたは、勇者ではありません」


そういった私に、ヨーイチ様は優しく微笑まれました。


「そうだよ。僕は勇者じゃない。だけど、どうかこのことは秘密にしていて。これは、本物の、君の勇者のためなんだ」


確信をもてなかった私に肯定を返し、あなたは私の背をおしてくださいましたね。


「勇者は君の対となる存在。今はまだ君の力が安定していないからはっきりとはわからないかもしれない。だけど、きっと君は彼と会える。君たちは片割れ同士だから」



はい。はい。必ずみつけてみせます。私の役目は勇者様を守ること。それが魂に刻まれた……







「ん……夢?」


私は身を起こそうと力を込めたところで、足に激痛がはしりました。


「っ!」


その痛みで完全に目がさめると、周囲の光景が一気に入ってきます。


「っ!ユートさん!」


倒れ伏したユートさんと、その近くにはやきとりさんと猫ちゃんが同じく気を失っていました。


「風の前の(ともしび)に命の息吹を吹き込まん。リタブリスメン」


私は祈るように手を組み、治癒魔法をとなえ続けました。















リリアは、ものすごい速さで城の中を歩いていた。


「リリア様!どちらへ行かれるのですか!」

「決まっているでしょう!わたくしの部屋よ!」

「まだそちらは危険でございます!」


追いすがる侍女を引き離し、リリアは自分の部屋のドアを開けた。すると、目の前には城の庭と、青い空がみえる。

屋根と庭側の壁が吹き飛んだ惨状だった。残された部分の部屋は小さな瓦礫が散らばり、高級な調度品は傷つき、壊れ、残された壁には魔力で文字が書かれていた。


“次あらばこんなものじゃすまさない”


「……」

「リリア様……」

「生贄を用意しなさい。十分な補償もね」

「はい、かしこまりました」


侍女が頭を下げて立ち去ると、リリアは新たに用意された自分の部屋へむかった。部屋の前で待っていたロイドがリリアの姿をみて頭を下げる。


「リリア様、よくぞあの場を治められました」


聖獣である神鳥から炎を受け飛び去ったあと、リリアは綺麗な笑みを作り観客達にむかっていった。


『神の使いたる神鳥から聖なる炎をうけ、また神の使いから我が頬に祝福をいただきました。神は我らを祝福してくださっています!勇者様は必ずや、諸悪の根源、宿敵魔王を葬り去ってくださるでしょう!』


神鳥の姿は、絵としてすべての教会に飾られている。その神鳥から攻撃を受けたとなれば、代々勇者の後見役として存在してきたエネルレイア皇家の面目丸潰れであった。それをリリアは攻撃ではなく祝福とすることで、面目を保ったのだ。


「今はわたくしを1人にしなさい。去れ」


リリアはそういうと、部屋へ入りドアを閉めた。


「どう……して……」


震える体を必死に抑えるが、とまらない。

日がさんさんと降り注ぐ窓すら鬱陶しく、体から魔力が漏れ出る。すると一斉にカーテンがひとりでに閉じられ、部屋は真っ暗になった。


「どう……して……(あんた)ばっかり!私はなれないのに!」


喉の奥から迸るのは恨みの籠った言葉。思い浮かべるのは2人の人間。


「あの()が、どうして、しかも、なにも変わってなかった。聖獣まで従えて、(あいつ)も乗っていて、私をコケにして、なにも、なにも変わってなくて……黒い髪も()の目もおおおぉぉぉぉ」


リリアは髪をかきむしり、ベッドの上のクッションを苛立ち任せに投げ飛ばした。


「また奪うのか!おまえがっ。また私から奪うのかぁ!」


黒髪と(みどり)の目をもつ女の映像が頭に流れ込み、混乱はおさまらず、リリアは鏡を椅子で叩き割った。そのまま頭を抱えて叫ぶ。


「ああああああああああああああああああああああっっっ!」


「リリア様!リリア様!大丈夫ですか?!」


ロイドがドンドンとドアを叩くが、リリアはただ叫ぶばかりで返事をしない。


「僕が行くから」


第三者の声がきこえると、ドアがすっと開く。中に入ったのは、洋一だった。

洋一は暴れまわるリリアの手を押さえつけ、首に手刀を叩き込む。


「うっ……」


リリアはそのまま崩れ落ちて、洋一は彼女を受け止めた。

彼女の首筋には、うっすらと円形の印が刻まれている。


「どうして君がこれをもってるのかな……」


洋一はその印をそっと触る。すると、そこから漏れ出していた黒い靄が消えた。


「これは、優人君、早く帰る方法をみつけないと」




じゃないと……僕の時間稼ぎじゃもたないかもよ。










僕は、優人君が怪我をしながらも生きて地上にたどり着いた様子をみていた。


ここは、白い白い世界。上もなく、下もなく、右も左もない。強いていえば僕が立ち上がった時頭があったほうが上で、足があったほうが下だ。


ここにはなにもない。椅子もないけど、僕は足を組んで座っている格好だった。


「とりあえず、よかった」


僕は優人君達から目を離すと、今度はエネルレイア皇国全体を見下ろす。この国は勇者のための箱庭。異世界からくる勇者たちが、この世界に馴染んでもらうための場所。


だからこそこの国の周辺に力を送り続け、世界に蔓延している浸食を防いでいた。この浸食に気付く者はものすごく少ない。


「だけど、優人君がこの国を出たなら、もういいよね」


僕はエネルレイア皇国周辺にまわしていた分の力をとめる。これで、この国は他の国と条件は同じになった。やがてこの国の周りの魔物も今よりかなり強くなり、気性も荒くなる。


今ほど恵まれた平和な国ではなくなる。


「よかったね、リリア。これで、この国が狙われていた理由の一つが解消されるよ」


この呟きは、誰にもきこえないけれども。


僕は、透けてみえる自分の手をみた。エネルレイアにまわしていた力を回収できたとはいっても、まだまだ力が足りない。


優人君に神と名乗った僕でさえ、この世界を保つ歯車の一つに過ぎず、このまま力の循環が滞るなら、いずれこの世界とともに消えゆく。


そのまえに、なんとしてでも……。


「洋一君、君のやっていることは、正しい」


僕も頑張るから。


「……独り言が多いのは、寂しいからだっていってたのは、何代目の勇者だったかな?」







その白い世界は、なにも変わらなかった。












副題 神様も、シリアスできるんです!


前回に引き続き、伏線張りまくり回です。これにて、勇者の箱庭編終了でございます。

仕返しはここで一旦終了。休戦のあとまた再開するかも?リリアの様子をみるとそうなりそうです。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

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