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第百十三話 水精霊の御座

イネスはそう言って頭をかいた。

「精霊の愛娘?」

「精霊に特に愛された人間のことだよ。まあ対象者は人間に限らなかったとは思うが……。ほら、お嬢ちゃんの周りにこれでもかってくらい、微精霊がまとわりついてるだろ。……といってもみえないか。そうだよな、確か感応力が高くないと見えないんだったか」

 微精霊ってなに、と顔に書いてあるテルマを見て、イネスは苦笑する。

「まあ見えないとしても、精霊に好かれる人間は大抵特殊な能力を持っていたりする。火属性の精霊に好かれた人間は鍛冶の才能がある……とか。まあある意味才能ギフトみたいなもんだな」

「じゃあ、私のこの能力も、精霊のおかげってこと?」

 テルマはペンデュラムを目の前にかかげる。

「それがどんな能力かはわからないし、俺も精霊について詳しいわけじゃないから確実なことは言えないが……俺の見る限りそこまで好かれてたらなにかしらの能力はもらってるだろうな。それがその人にとって[いい能力]とは限らないが。なにせ人間とは価値観の違う精霊のすることだからな」

 イネスからみると、テルマは微精霊にまとわりつかれすぎて、ぺかーっと光るもこもこに埋もれているように見える。

 ちょっと眩しくて、イネスは目を細めた。

 精霊の中でも微精霊はいたずら好きな傾向が強い。才能ギフトに関してもそれは彼らなりの好意の表れだが、それが人間にとって都合がいいものとは限らないのが悩みどころ。特に精霊の愛娘ともなれば、全方位あらゆる精霊に好かれた存在ということで、本人のあずかり知らぬところで大きく彼女は影響を受けているだろう。

 そこまで説明する気は、イネスはなかったけれど。

「そかそか。私には見えないけど、微精霊ちゃんがたくさんいるんだね。見えないのが残念。ところで、キエルとお兄さんはお知り合いー?弟がお世話になってます」

 イゼキエルと共に現れたということは、なにかしら関係人物であるとテルマは推察する。

「あー、そうそう。名乗ってなかったな。俺はイネス。彼とは、会うのはまだ二回目なんだが、いろいろこっちの事情で協力してもらったのよ。だから世話になったのは俺のほう。とはいえ、まさかここで会うとは思ってなかったがな」

 イゼキエルとしては、あの遺跡を今後どうするつもりなのかをイネスに尋ねたかったわけだが、まさかまたこんな場所に呑み込まれるとは思っていなかった。

 吞み込まれた先で目的の人物と遭遇できたのは幸いだったが。

「あ、そうそう!ここってどこなんですか?なんだかとっても綺麗な場所ですけど、こんな場所ルインの近くにありましたっけ」

「精霊の杜」

「精霊のもり?」

 テルマの問いに、イゼキエルがぽつりとこぼす。だがイネスは首を横に振った。

「半分当たりで半分はずれ。ここは【水精霊の御座(みくら) ネスト】。とはいえ実は、ネストは水の大精霊が棲む空間で移動する森なんだよ。今は水の大精霊がシルフに会いに来てて、イゼキエルくんが前回来た精霊の杜にくっついている状態。同じ精霊が過ごしている場所だけあって、独特の雰囲気は似てるよな」

言われてみれば、精霊の杜とは色が違った。精霊の杜は緑が多く、ネストは青の配色が多い。だが、どちらとも森は静謐で、澄んでいて、美しいが、その美しさは自然の中の秩序がしっかりと機能し、それによりもたらされていると感じる。秩序を乱さなければ守られているという安心感が、ここにはある。どこにその秩序を感じるかときかれれば、今はまだ答えられないけど、水と風が互いの違いを含めて譲り合っているそのルールこそが秩序の一端ではないかと思えた。

「そうそう。水の大精霊と風の大精霊は仲がいいんだ。だから水の大精霊のお膝元でも、風の魔力が多く混ざってて、それでも調和している」




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